出会い系大手のMatchがソウル拠点のHyperconnectを同社最大規模の1809億円で買収

出会い系大手のMatch Group(マッチグループ)は、米国時間2月9日午後、韓国のソーシャルネットワーキング企業であるHyperconnect(ハイパーコネクト)を、現金と株式を合わせ17億3000万ドル(約1809億4000万円)で買収すると発表した。これは韓国のスタートアップエコシステムにとって大きな勝利だ。

Hyperconnectによれば、同社は2020年には2億ドル(約209億2000万円)の売上(2019年比50%増)の収益を上げると予測されている。同社が提供する2つのアプリAzar(アザール)とHakuna(ハクナ)は、言葉の壁を超えてユーザー同士が交流できるアプリだ。2つのアプリは補完関係にあり、Azarが1対1のビデオチャットに特化しているのに対して、Hakuna Liveはオンラインライブ放送市場に特化している。両社はプレスリリースの中で、Hyperconnectの売上の75%はアジアからのものだと述べている。

これは、数多くのアプリや人気のある出会い系アプリのTinder(ティンダー)とHinge(ヒンジ)も所有しているMatch Groupにとって、これまでで最大の買収となる。

この買収とHyperconnectに関わるテーマの1つはテクノロジーだ。同社は現在、成熟している標準規格であるWebRTCの「初のモバイル版」を開発したと主張している。これは、中間サーバーとして機能する別の企業に依存することなく、ユーザー間に弾力性のあるピア・ツー・ピア接続(1対1の直接接続)を提供するように設計されたものだ。

たとえば2人の参加者の間のビデオチャットは、Hyperconnectのサーバーを介して配信されるのではなく、WebRTCを使用して2人の間で直接送信される。これは遅延をなくし信頼性を向上させるために設計されているが、一方Hyperconnectにとってもサービスの帯域幅のコスト削減が可能となる。WebRTCは現在、Google(グーグル)などの企業がGoogle Meet(グーグルミート)のような製品で使用しており、オープンソースの標準として十分に確立している。

WebRTCに対する革新的な取り組みに加えて、Hyperconnectは異なる言語で話したりテキストを書いたりする2人のユーザーが、アプリ内でリアルタイム翻訳を使用して、直接対話できるようにサポートするためのインフラストラクチャを構築した。Google Cloudのマーケティング投稿によれば、Hyperconnectは同クラウドサービスが提供する音声、リアルタイム翻訳、メッセージングAPIの上得意であるという。

両社の共同声明は、双方ともに研究開発とエンジニアリングを取引の鍵だと強調している。ということで、この大規模な買収が投げかける疑問は、Match Groupが一体何を開発しようとしているのかということだ。同グループは、これまでは自身のサービスを主に出会い系に限定してきたが、Hyperconnectから技術を取得することで、生放送やその他のメディアも視野に入れることができるかもしれない。

買収は2021第2四半期で完了する見込みだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Match GroupHyperconnect買収

画像クレジット:Johannes Spahn / EyeEm / Getty Images

原文へ

(文:Danny Crichton、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。