出産前後の悩みを産婦人科医にスマホで相談できる「産婦人科オンライン」が11月1日よりサービス開始

国立成育医療研究センターなどのチームは9月、2015年から2016年に102人の女性が妊娠中から産後にかけて自殺しており、妊産婦死亡の原因の中で最も多いと発表した。妊産婦死亡の全国規模の調査はこれが初めてだ。共同通信などによる報道によると、子育てへの不安やストレスにより起きる“産後うつ”が原因の一つと考えられ、同チームは「身体だけでなく心の問題も気軽に周囲の医師や保健所などの行政機関に相談してほしい」と呼びかけている。

そんな中、「産科医療の過疎地域を含む全ての地域で、妊娠期〜産後という心身の不安が大きい時期に適切な医療サポートを受け、安心して出産を迎え、育児ができる社会を目指す」という新たなミッションを掲げ、小児科に特化した遠隔医療相談サービス「小児科オンライン」を提供するKids Publicは10月15日、産婦人科領域に特化した「産婦人科オンライン」を11月1日より開始すると発表した。Kids Publicは2016年に開催された「TechCrunch Tokyoスタートアップバトル」の優勝者だ。

同社は「医療リソースの地域格差が広がる中、地方における産科医師数の不足は深刻だ」と説明。政府は「一億総活躍社会」のなかで、産後うつの発症リスクを重要課題として挙げているが、Kids PublicはそれをICTのちからで解決しようとしている。

具体的には、月・水・金曜日の18時から22時の間、10分間の予約制で産婦人科医・助産師に相談できる環境をつくり、妊婦が抱える不安やストレスを解消する。

「妊娠中の食事や服薬について教えて欲しい。ネットで調べてもいろんな情報があって分からない」、「産後2か月になるけれど気分の落ち込みがひどく、泣き止まない子どもに無力感がある」など、妊娠・出産前後の幅広い質問に専門家が一対一で対応する。対応担当には医師が5名、そして助産師が4名。LINEを使ったチャット、音声通話、ビデオ通話の3つを使って相談できる。

産婦人科オンラインは社会サービスとして「全ての利用者に無料で届ける」ことを目標としているため、B向けサービスとして法人に導入し、法人が費用を支払うことで利用者(自治体の住民や企業の社員)は無料で利用できるというスキームでサービスを提供する。

重見大介氏

本サービスの代表を務める重見大介氏は現在も都内や千葉県内の総合病院や産科病院で臨床に従事しながら、東京大学大学院博士課程に進学・在籍中だ。同氏は産婦人科オンラインに関して「あくまで遠隔医療健康相談なので医療行為・診療行為ではない」と説明している。同氏が言うとおり、産婦人科オンラインはあくまで“相談サービス“であり、その場で病気を治療したり、健康状態を改善できるサービスではない。だが、同サービスは簡単には医療機関に行けない利用者が「本当に受診する必要があるか」などを相談できるといったメリットがあることは確かだ。

また、産婦人科オンラインは小児科オンラインとデータを連携することで、よりシームレスに利用者をサポートする。たとえば小児科オンラインを使う利用者に対し、産婦人科オンラインではどのような指導をしていたかを把握し社内で連携した上でアドバイスをすることができるようになるという。

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TechCrunch Japan

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