初めて直接観測された恒星間彗星「ボリソフ彗星」とは?

太陽系を新たな星間物体が訪れた。ただし宇宙人の乗り物でないことは間違いない。これは星間空間から来たこと確認できた初めての彗星であり、ハッブル宇宙望遠鏡はその驚くべき画像をキャッチした。これは素晴らしいことだ。なぜならその彗星は二度と戻ってこないから。

おそらく読者は、恒星間天体といえば数多くの見出しを飾ったオムアムアを思い出すだろう。記事のほとんどはエイリアンの宇宙船か何かだという発想だった。もちろんその仮説が報われることはかったが、それは別世界からの使者でなくても十分興味深い物体だった。

この新たな彗星、2I/Borisov(ボリソフ彗星)は、今年8月クリミアに住むアマチュア天文家のGennady Borisov(ジェナディ・ボリソフ)氏が最初に見つけた。地球近傍天体の専門家らが軌道を解析た結果、実際に星間空間から来たものであるという結論に達した。

どうしてわかるのか?例えば、その物体は時速17万7000kmで動いていた。「あまりに速いため太陽の存在を気にかけないほどだった」とボリゾフ彗星を観測するハッブルのチームを率いるUCLAのDavid Jewitt(デビッド・ジュイット)氏が語った。
【編集部注】上のGIF動画に見られる軌跡は物体の速度を表すものではなく、地球の自転によるもの。

stsci h p1953a f 1106x1106

基本的に、飛んできた角度や速度から考えて、太陽の超長軌道にすら存在せず、ただ通り過ぎた確率が高い。そして12月初旬には、太陽から200万マイル以内を通過する。幸い何かにぶつかる恐れはない。それは純粋に宇宙の偶然であり、数カ月後にはいなくなる。

しかし、この短期間の滞在は彗星の組成を研究する重要な機会であり、どうやら我々の「地元」の彗星とよく似ているらしい。ボリソフ彗星が超神秘的ならクールだったかもしれないが、地球との類似性もまた大いに興味深い。これは、太陽系以外の恒星系でも彗星の組成が異なるとは限らないことを示唆している。
trajectory

ボリソフ彗星は、黄道を極めて急角度、超高速で通過しており、これは太陽を周回しているという考えを除外するのに十分な証拠である。

一方、ボリソフ彗星はオムアムアとは大きく異なっている。オムアムアは不活性で長細い岩石のように見えた。彗星はそれ自身非常に興味深いものであり動的でもある。粉塵の雲であったり小さな核を氷が包んでいるものだったりする。絵に描いたように美しいが、しっぽはみんなが期待する方を向いているとは限らない。

実は、こうした星間物質は珍しいものではなく、太陽系のある瞬間におそらく数千は存在している。しかし、検出、研究できるほど大きくて明るいものはめったにない。

ハッブル宇宙望遠鏡は来年1月、おそらくそれ以降もボリゾフ彗星の観測を続ける。決して帰ってくることはないので、可能である間はできる限りデータを集めたい意向だ。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。