初期YouTubeも支えたオンラインビデオプラットフォームの老舗JW Playerは今もビジネスの最前線にいる

JW Playerは、オンラインビデオテクノロジー市場の草分け的存在である。YouTubeの最初のビデオプレイヤーを、Googleが同社を買収して自前のものを築き上げるより以前に支えていた会社だ。一から技術を構築することなく、またビデオやその視聴を通して生成される顧客データから利益を得る可能性のある企業に頼ることなく、ビデオを自社のオンラインエクスペリエンスに取り込みたいパブリッシャーなどに向けて、1対多のビデオストリーミングツールを提供している。このビジネスモデルを通じて、長期にわたって利益を生み出してきた。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるオンラインビデオの需要の高まりを背景に、この1年で力強い成長を遂げた同社が、このほど1億ドル(約110億円)という大規模な資金調達ラウンドを発表した。

資金はLLR Partnersという単一の投資家によるものだ。JW Playerの評価額は公開されていないが、10億ドル(約1100億円)にはまだ達していないものの、急速に近づいていることは間違いなさそうだ。同社はこの業界では比較的控えめな存在であるにもかかわらず、大幅な成長を記録しようとしている。

JW PlayerのCEOで共同創業者のDave Otten(デイブ・オッテン)氏(同社の名前は初期の技術を開発したもう1人の共同創業者Jeroen Wijering[イェルーン・ウィジェリング]氏に由来する)は、TechCrunchのインタビューに対して、同社のビデオストリーミングのトラフィックは2020年の1年間で200%近く上昇し、ライブストリーミングは400%増加したと語った。

現在、JW Playerを利用してビデオを配信しているアプリケーションやサイトは60万以上あり、そのうち約1万人がプレミアムユーザーだ。残りは無料でソフトウェアを使用している層であるとオッテン氏は説明する。

これはJW Playerが長年にわたり収益性を維持してきたバランスとして申し分ないものだと同氏は語っている。同社のツールを利用する顧客には、Sesame Street、TIME、Hearst、Insider、IMDb、Chelsea Football Clubなどが含まれる。

画像クレジット:YouTube

JWがYouTubeに力を入れていた初期の頃(上のスクリーンショット)からかなり時間が経っているが、先行企業が後になってイノベーションを起こすのは遅きに失する例が多いのとは対照的に、JWは、自社がビデオの先行企業であったという事実が今後の展開の予測に遅れをとることを意味するものではないと期待している。

JW Playerの現在の製品課題は、顧客の課題である収益化を反映するものだ。

多くの企業が自社のコンテンツにペイウォールを作り始めているが、ビデオカタログにも同様のことをしようと模索しており、JW Playerはそのパートナーになることを望んでいる。そのためのオファリングとして、サブスクリプションサービスへのさらなる投資に加えて、ビデオをパーソナライズするための、そしてビデオ利用に関する膨大なデータを蓄積し、収集を続けることで広告機会を提供するための新しいツールセットに力を注いでいる。

JW Playerは、後者のビジネスにおいて強力なカードを手にしている。JW Playerの無料バージョンを使用する人々は、ビデオがどのように見られているかについての多くのインサイトを同社が収集するのに貢献しており、同社に「対価」をもたらしている。

同社が今後一層注力していくことになるもう1つの分野は、ライブビデオとオンデマンドビデオだ。2021年5月には、これらの分野のスペシャリストで、英国に拠点を置くVualtoを買収した。VualtoはDRMソリューションの開発も手がけており、すでにJW Playerのプラットフォームに統合されている。

オンラインの全トラフィックのうち、ビデオが占める割合は実に80%に達しており、人々は概して1日2時間以上ビデオを見ていることになる。その一部は、YouTubeやFacebook、Instagram、TikTok、Snapchatなどのビッグプラットフォームに必然的に流れることになるだろうが、JWのような企業の助けを借りながら、他の企業がその中で自分たちのスペースを開拓する大きな機会は残されている。

LLR PartnersのパートナーであるDavid Reuter(デイビッド・ロイター)氏は声明の中で次のように述べている。「JW Playerは、創業者であるイェルーン・ウィジェリング氏が2008年にYouTubeのオリジナルビデオプレイヤーを作成して以来、デジタルビデオのイノベーションの最前線に位置してきました。現在では、デジタルビデオエコシステムにおいて、テクノロジー、広告、データ分析に関する最も包括的なプラットフォームを提供しています。同社はそのプラットフォームを拡張し、数々のブランドがビデオのホスティング、ストリーミング、収益化を行う方法を継続的に向上させています。私たちは、このようなJW Playerのチームと提携するのを楽しみにしています」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:JW Player動画動画配信資金調達サブスクリプション

画像クレジット:JW Player

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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