割り勘アプリのSplitwiseがシリーズAで約22億円を調達

米国ロードアイランド州プロビデンスを拠点とするスタートアップのSplitwise(スプリットワイズ)が米国時間4月28日、2000万ドル(約22億円)のシリーズAをクローズしたと発表した。

同社は、ユーザーが支払いを割り勘にできる消費者向けフィンテックソフトウェアを開発している。ただし、SplitwiseはVenmoやPaytmのクローンではない。同社はユーザーの友人への送金は支援しない。送金は他社に任せる。Splitwiseは、お金があらゆる種類の人間関係に与えるストレスと煩雑さを軽減したいだけだ、とCEOのJon Bittner(ジョン・ビットナー)氏はTechCrunchにインタビューで語った。

ルームメイト、パートナー、財布を別にしている夫婦、スキー旅行に行く友人同士などはみな、支払いをどう負担するかを考える必要がある。支払いを求めて友達、配偶者、ルームメイトを追いかけ回すのはまったく楽しいことではない。Splitwiseのソフトウェアを使えば、共通の支払いに関する合意と管理が容易になる。このアプリは、そうした支払いをオープンにし、誰が誰に支払うべきかを明らかにすることで支払われるべき金額を明確し、お金に関するトラブルを避けることを目指す。

その製品コンセプトは世界中から聴衆を集めた。ビットナー氏によると、同社は2011年以来、数千万人の登録ユーザーを惹きつけた。金額にして900億ドル(約9兆8000万円)が割り勘にされ、または管理されたという。同社はアクティブユーザー数の開示を拒否した。シリーズAで資金を調達したにすぎないため、より具体的なユーザー数に関する指標はアーリーステージではパスしても良いだろう。

Splitwiseはユーザー間での送金を他社に任せているため、取引手数料や消費者から預る資金で利益を得ることはない。ではどのようにキャッシュを生むのか。Proサービスでユーザーに月額3ドル(約330円)を請求する。簡単に言えば、Splitwiseはもっとパワフルな割り勘ソフトウェアを必要とするユーザーに消費者向けサブスクリプションを提供する。

Splitwiseのサブスクユーザー層の厚みがどの程度なのかを示す指標は手元にないが、ビットナー氏は、同社の無料ユーザー層が拡大したため、同社の無料から有料へのコンバージョンレートは低下していないという。ただし、Insight Partnersが同社への2000万ドル(約22億円)の投資を進んでリードしたため、有料ユーザー層は少なくともそれなりのレベルで成長しているものと推測される。

シリーズAの前に、ビットナー氏はTechCrunchに対し、同社は約900万ドル(約9億8000万円)を調達したと語った。

Splitwiseは長い間オーガニックに成長してきた。新規ユーザーの獲得に資金を投下せずに済んできたため、コストを低く抑えることができた。つまり、他の消費者向けフィンテック企業と同じ速度でベンチャーキャピタルから資金をを調達する必要がなかったわけだ。だが、資金調達を最小限に抑えてきたため、経営資源を何に割り当てるべきかについて、いくらか注意を払う必要があった。

CEOは、新しい資本により同社は製品開発のペースを上げることができると語った。

ただし、有料版でのみ使える機能の作成に資金がすべて注ぎ込まれるとは思わないで欲しい。SplitwiseはTechCrunchに対し、友達をサービスへ招待したいと思わせるのに十分な無料体験を望んでおり、過度に押し付けがましいデジタルの商業環境にユーザーを引っ張り込むリスクは冒したくないと明らかにした。

Insight PartnersのBoris Treskunov(ボリス・トレスクノフ)氏は声明で「このアプリが友人や家族の間で簡単に支払いを分割するための頼れるプラットフォームになるのを目の当たりにしてうれしく思っています」と述べた。他の投資家の考えも一致しているようだ。この種のアプリが広く使われるには、無料のエクスペリエンスが幅広く必要だ。これはつまり、同社がフリーミアム製品の無料の側面に資金を費やすことを意味する。

Splitwiseはおそらくプロビデンスで最も有名なスタートアップだが、最近Y Combinatorを卒業したPangeaも資金調達に関して同地域で名を馳せた。とにかく2社は、スタートアップの仕事に最もつながりが深い米国の数えるほどの都市の外であっても、成長するテクノロジー企業を築き上げることが可能であることの証左となった。Splitwiseが新しい資本で何ができるか、そして将来の採用の何パーセントが地元のメインハブではなくリモートになるか注目したい。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Splitwise資金調達

画像クレジット:nanmulti / Getty Image

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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