動画に話しかけることでユーザーがストーリー展開を変えるAdventrのボイスコントロール技術

誰にも経験がある。ホラー映画を見ていて、主人公がその不気味な家に入ってはいけないことを、あなたは知っている。画面に向かってどれだけ叫んでも、あなたは彼の運命を変えられない。でも、もしも画面の男に、その家に近づくなと言って、彼がそれを聞き入れたらどうなるだろう?

エンターテインメント系の起業家であるDev Harris(デブ・ハリス)氏の最新のベンチャーなら、それが可能かもしれない。彼はグラミー賞を獲得し、Kanye West(カニエ・ウェスト)やJohn Legend(ジョン・レジェンド)のようなアーティストと長年のビジネス仲間だ。

2020年8月にベータでローンチしたAdventrは、ユーザーフレンドリーなインターフェースで、誰もが画面上の要素をドラッグ&ドロップしながらインタラクティブな動画を作ることができる。すでに何千ものユーザーがインタラクティブなエクスペリエンスを作っており、その中には、宇宙をテーマとする子ども向けの教育モジュールや、Marc JacobsやLVMHのようなラグジュアリーファッションのプロモーションビデオもある。

20のスタートアップが競うTechCrunch Disrupt, Startup Battlefieldでは、創業者でCEOのハリス氏は、Adventrのきわめつけの機能を披露した。それは、ユーザーがビデオの進む方向を命令できる音声コントロールの特許機能だ。

具体的には、音声認識を利用して、ビデオの途中でコースを変更する技術に関する特許だ。また、他のデータベースやアプリケーションと連携して、リアルタイムに答えを調べたり、質問に答えたりすることができる。

「これは『音量を上げろ』といった簡単な命令ではなく、『その部屋に入るな』といったものです。テレビと話せるなら、携帯電話と話せるなら、なぜビデオと話せないのでしょうか?私たちの技術により、これらのビデオは視聴者のマイクを使って、その視聴者が望んでいることを理解し、リアルタイムに対応することができます。インターネットの大部分はビデオであるため、私たちはビデオが他のスマートデバイスのように機能することを可能にしています」とハリス氏はいう。

画像クレジット:Adventr

彼のチームは現在わずか5名だが、クリエイティブを重視するだけでなく、eコマースのエキサイティングなアプリケーションもありえると考えている。彼は、2002年の映画「Minority Report(マイノリティ・リポート)」を指して、主役の Tom Cruise(トム・クルーズ)がGAPの店頭でホログラムに遭遇し、パーソナライズされたショッピング体験について質問されるシーンを、例として挙げる。

Adventrのデモビデオでは音声コントロール技術が登場し、買い物客がTargetでパジャマを買う。そのとき視聴者は「グリーンのものを着てみて」とか「Lサイズを見つけなさい」などと声で命令し、買うべき品物を決める。そしてどのパジャマを買うか決めたらTargetのウェブサイトへ移り実際に購入するが、ハリス氏は、いずれその経験過程のすべてがAdventrネイティブで行われると期待している。

現在、Adventrのツールはサブスクリプションで利用できるが、月額29ドル(約3200円)のプロプランや99ドル(約1万900円)のビジネスプランに決める前に、フリープランで試してもいい。Adventrの用途はeコマースや教育やエンターテインメントに限定されているわけではないため、今後企業やアーティストからまざまなアプリケーションが生まれるだろう。

「Adventrは、TwilioとVimeoを組み合わせたような、ビデオベースのAPIだと考えてください。基本的に、ユーザーはフレーズやキーワードを入力することで、特定のビデオクリップを再生することができます」とハリス氏はいう。

Adventrは、100万ドル(約1億1000万円)のシードラウンドでスタートしましたが、さらなる資金調達についてはまだ発表していない。しかし、このスタートアップは、すでに自社製品を加入者に販売しており、早い段階で収入源を確保している。ハリス氏は具体的な財務状況を明らかにしなかったが、顧客獲得に費用をかけずに、Adventrの収益は2021年初頭から現在まで80倍に増加しているという。

画像クレジット:Adventr

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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