北極圏にデータセンターを構えて実質無料で冷却、Neu.roはゼロエミッションの機械学習モデル構築ソリューションを発表

企業が機械学習を活用してビジネスをより効率的に運営しようとする動きはますます活発になっているが、機械学習モデルの構築、テスト、稼働には膨大なエネルギーを必要とすることも事実だ。アーリーステージのスタートアップ企業でフルスタックのMLOps(エムエルオプス、機械学習運用基盤)ソリューションを手がけるNeu.ro(ニューロ)は、より環境負荷の少ないグリーンなアプローチに取り組んでいる。

同社は米国時間11月22日、フィンランドのクラウドインフラストラクチャパートナーであるatNorth(アトノース)とともに、ゼロエミッションのAIクラウドソリューションを発表した。

同社によると、atNorthはティア3に適合するISO 27001認定のデータセンターを提供し、そこでNVIDIA(エヌビディア)A100を搭載したDGXおよびHGXシステムを稼働させるという。80MWの電力容量を持つこのデータセンターは、すべて地熱と水力エネルギーで稼働している。さらに、北極圏に位置しているため、実質的に無料で冷却することができ、Neu.roのソリューションを使用して機械学習モデルを構築する顧客に、エネルギー効率の高いソリューションを提供できる。

Neu.roの共同設立者であるMax Prasolov(マックス・プラソロフ)氏によると、この問題を調査した結果、コンピューティングとテレコミュニケーションが世界の総エネルギー消費量の約9%を占めており、この数字は今後10年間で倍増する可能性があることがわかったという。プラソロフ氏らは機械学習モデルの構築がその中でも重要な役割を果たすと考え、自社の二酸化炭素排出量を削減するために、atNorthと提携することを決めた。

「当社ではすべてのオペレーションとすべての実験を、ゼロエミッションのクラウドに移行することに決めました。目標は、クレジットを購入して使用量を埋め合わせることができるカーボンニュートラルではありません。問題は、どうやってゼロエミッションを達成するかです。私たちは、顧客のために機械学習モデルをトレーニングする際に、非常に多くのエネルギーとコンピューティングパワーを費やしていることに気づきました。それこそが、間違いなく、我々が排出している最大のカーボンフットプリントであることを理解したのです」と、プラソロフ氏は述べている。

その一方で、同社はソフトウェアソリューションを通じて、より効率的な方法でモデルを構築する方法を考え出した。これによって必要なエネルギー量を削減し、さらに持続可能なソリューションを提供することが可能になる。

製品自体については、同社は柔軟性のあるクラウドネイティブなサービスを提供しており、そこでツールの一部を提供するものの、企業が自分たちにとって最適と考える方法で補う余地を十分に残している。

「当社のアプローチは、データの取り込みから、モニタリング、説明可能性、パイプラインエンジンなど、構築が必要なツールをすべて1つずつ構築するのではなく、相互運用性を重視しています。まだ構築されていないものを構築し、すでに存在するKubernetes(クバネティス)によるツールのユニバースに接続します」と、同社の共同設立者である Arthur McCallum(アーサー・マッカラム)氏は説明する。

このスタートアップ企業は現在、商用のソリューションを提供しているが、オープンソース版のスタックにも取り組んでおり、まもなく、おそらく年内にはリリースされる見込みだ。同社の目標は、Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)というビッグ3以外の小規模なクラウドベンダーに、クラウドベースのAIソリューションを提供することである。これには世界各地の地域的なベンダーも含まれるだろう。

Neu.roは2019年に創業し、2020年にソリューションの最初のバージョンを公開した。これまでにシード資金として230万ドル(約2億6500万円)を調達しているという。

画像クレジット:a-image / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。