医療用メッセンジャー開発のシェアメディカル、「医療版Uber」目指し夜間往診サービスと提携

医療用のメッセンジャーサービス「MediLine」など医療サービスの開発・提供を行っているシェアメディアカルは5月11日、夜間往診サービスを運営するFast DOCTORと戦略的提携を結び、共同でスマート往診システムを開発していくことを明らかにした。

同システムはUberのモデルを往診に用いた「医療版のUber」を目指している。スマホから医師に往診の依頼ができることはもちろん、事前に保険証やクレジットカード情報を登録しておくことで、診療後の決済までアプリを通じてスムーズに行えるのが特徴だ。

まず東京23区と千葉県の一部からスタートし、順次エリアを拡大していく予定。患者側のユーザーが使用するアプリは8月にリリースを予定している。

患者のニーズに合った受診スタイルの提供

シェアメディアカルCCOの五百川智美氏によると「診療所の多くは休日や夜間は休診しているが、その一方で乳幼児や高齢者はこうした夜間や休日に体調を崩すことが多く、休日や夜間の一次応急のニーズが強いと判断した」ことが今回のシステムを開発するにいたったきっかけだという。

近くで夜間診療をしている病院がすぐに見つかればいいが、少し距離が離れていると病院に着くまでに時間がかかるし、そもそも病院にいくことで他の病気に感染したり体調が悪化する可能性もある。そんな時に自宅まで医者が来てくれるのは大きなメリットだろう。

提携を結んだFast DOCTORは東京23区と千葉県の一部エリアを対象にした夜間往診サービスを、以前から自社で提供してきた。同社がシェアメディアカルの提供する医療の専門家が使うメッセンジャーサービス「MediLine」を基幹システムとして導入している縁もあって今回の提携につながったという。

「往診という制度自体は以前からあるものだが、若い人には馴染みが薄く浸透していないのが課題。FastDoctor様もその点で苦労しているというお話を聞き、我々のICT技術を活用することで補完関係が構築できると考えている」(五百川氏)

そこでスマートフォンやアプリを使いこなすのに長けている若い世代の人が使いやすいように、往診依頼から治療費の支払いまでがアプリ上で完結する「医療版Uber」のモデルに至ったそうだ。医師にとってもタブレット一つで診察からカルテ記載まで完結できるようになるため、重たいPCを持ち運ぶ必要はなくなる。

加えて「夜間に救急車で搬送される大多数が軽症者であるという事実、そして本来すぐに運ばねばならない重傷者の搬送先が見つからず、たらい回しにされてしまうという社会的な課題」を改善することも目指しているという。

開発中のスマート往診システムでは、往診時以外にもチャットによる医療相談などオプションサービスの提供も予定。エリア拡大のための医療機関開拓や、高齢者の見守りサービスを展開する企業などとも協業した、異常時に医師が駆けつけるサービスの共同開発なども行っていくという。

シェアメディアカルは2014年9月の設立。代表取締役を務める峯啓真氏は、医療総合メディア「QLife」など医療系のサービスを手がけるQLifeの創業メンバーの1人だ。同社は2016年11月に介護医療人材紹介会社のティスメから5000万円の資金調達を、2015年12月にスローガン・コアントから資金調達(金額非公開)を行っている。

Fast DOCTOR代表取締役の菊池亮氏(写真左)とシェアメディカル代表取締役の峯啓真氏(写真右)

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TechCrunch Japan

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