原因不明の難病診断、研究者を支援したいとの想いから生まれたクラウド購買システム「reprua」

研究業界に特化したクラウド購買システム「reprua(リプルア)」を提供するInner Resourceは2月13日、DNX Ventures(旧 Draper Nexus Ventures)、Archetype Ventures、ANRI、リバネス、バイオインパクトから8000万円を調達したと発表した。

研究分野の購買は活動のために欠かせない要素だが、その実態はとてもアナログだ。下の写真は、ある大学が購買用につけている紙のノート。研究器具を扱う商社に電話やメールで問い合わせ、どんな機材をいくつ、誰から、いつ買ったのかを紙に記録している。ほとんどの場合、これらの購買業務は研究者自身が行うといい、本来の研究以外の業務に多くの時間が割かれてしまっているのが現状だ。

そこで、Inner ResourceはシンプルなUIで誰もが簡単に使えるクラウド型購買システム「reprua」を開発した。研究に必要なビーカーなどの器具や顕微鏡などの機材、薬品などを揃えることができ、購買業務から購買後の管理業務までを一括して提供。これにより研究者はこれまでのアナログな購買活動から開放され、支出・予算管理もよりクリアになる。

repruaは研究機材を扱う商社やメーカーにとってもメリットがあるサービスだ。これまで電話やメールで来ていた問い合わせをクラウドベースで管理できるほか、同サービスには受注者と発注者をつなぐメッセージング機能も備わっているため、Web上の営業促進ツールとして活用することもできる。

Inner Resources代表取締役の松本剛弥氏によれば、研究業界の購買市場は年間4兆円の巨大市場。VC投資の熱も高まるなか、他の業種に比べてハイリスクとされるバイオベンチャーにも資金が集まりつつあることもrepruaにとっては追い風だ。サービスのリリースは約5ヶ月前の2018年9月だが、すでに民間企業30社、80の研究機関がrepruaを導入済み。1つの研究機関あたり月間400万円ほどの発注があるほか、数千万円規模の機械受注もあるという。

Inner Resourceは研究機関に対してrepruaを無料で提供する一方、受注する商社・メーカー側から数%の手数料を受け取る。しかし、今年の3月をめどに在庫管理機能、毒劇物・危険物の管理機能などを月額数万円の料金で有料開放していく予定だという。

Inner Resourceは2017年6月の創業だ。家族の1人が難病にかかり、原因不明・解決策不明と宣告されたことから「研究者を広く支援したい」という想いを抱いた松本氏。起業以前は研究機材の専門商社で働いていたが、そこで現状の購買システムが持つ大きな課題を感じ、同社を立ち上げた。

Inner Resources2018年1月にANRIからシード資金を調達しており、今回を含む累計調達金額は約1億円となった。同社はその資金を足がかりに、これまで関東を中心としていた営業活動を日本全国に広げ、アジア各国をターゲットとした海外進出も目指していくという。

Inner Resources代表取締役の松本剛弥氏

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TechCrunch Japan

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