取引先開拓から入金管理まで、農家向けワンストップ・サービス「SEASONS!」がローンチ

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農家向けITサービスと聞くと、農作物を効率化に生産するために土壌の栄養や水分量を検知するIoT端末などを思い浮かべてしまう。けれども生産農家と言えども、ビジネスを行っているのであり、ビジネスには交渉や事務処理がつきものだ。プラネット・テーブルが今回新たにローンチしたサービス「SEASONS!(シーズンズ!)」は農家のそういった手間の効率化を図る。また、生産農家と購入者が直接出会えるプラットフォームという側面を併せ持ち、顧客開拓から交渉、受発注、入金確認まで行えるワンストップサービスを目指している。今回、プラネット・テーブルの代表取締役菊池紳氏に「SEASONS!」のコンセプトについて聞いた。

「SEASONS!」はプラネット・テーブルにとって3つ目のプロダクトとなる。2015年6月に食に関するQ&Aサービス「FoodQ」をリリースし、2015年8月からは生産農家が都内の飲食店や食品企業と直接取引できるプラットフォーム「SEND(センド)」を展開している。SENDではオペレーションと配送を担い、生産農家のこだわりの作物や市場にあまり出回らない食材を都内の飲食店に届けている。東京都心部でサービスを展開し、現在およそ580軒のレストランがSENDを利用しているという。2016年1月にはプラネット・テーブルは1億円の資金調達を実施し、サービス拡大を行うと発表していた。

SENDを展開する中で生産農家の抱える課題が分かってきたことが「SEASONS!」を開発するきっかけになったと菊池氏は話す。生産農家の仕事は農作物を育てるだけではない。生産農家は作付け前から取引先との交渉や受注のために動いていて、出荷時期になったら各取引先へと納品し、請求書を発行して、入金を確認する作業をこなさなくてはならない。そして、生産農家は大抵30件から50件ほど取引先を抱えているという。事務作業が多く発生し、それが生産農家の負担になっていると菊池氏は言う。

また、こういった事務処理は煩雑になりがちと菊池氏は言う。例えば、連絡には電話、ファックス、メールを使ったり、出荷スケジュールを管理するにはホワイドボード、手書きメモ、エクセルを使っていたりする。最近ではクラウドサービスが発達し、Facebook Messengerで連絡したり、決済にはそれに特化したクラウドサービスを利用している生産農家も多くなっていると菊池氏は言う。しかし、それでも各サービス間のデータ連携が簡単にできなかったり、作業が複雑で他の人に仕事を引き継いだりするのが難しいという問題があった。

プラネット・テーブルはそういった課題を解決するため、事務作業を効率化するプラットフォーム「SEASONS!」を開発した。エクセルとMessengerが使えるITリテラシーがあれば、「SEASONS!」も使うことができると菊池氏は話す。ただ、農家の後継ぎや脱サラして農業をしている人などは事務経験がある人も多く、ITリテラシーはそんなに問題にならないそうだ。feature

「SEASONS!」の特徴は、作業の効率化だけでなく「生産者と購入者の出会いの場」になることだ。生産者は、自分のプロフィールに何の食材をいつの時期に生産しているかといった情報を掲載する。それを見て購入者は発注や商談を申し込むことができる。事前に出荷スケジュールを提示していることで、作付け前から商談を行うことが可能となる。これは生産者と購入者の双方にとって利便性があると菊池氏は説明する。生産者は、作付け前から生産と出荷の計画が立てやすくなり、買い手が見つからないという心配を減らすことができる。購入者側にとっても、生産農家の出荷スケジュールをもとに複数の生産農家と取引することで、安定した仕入れが可能となる。例えば、1年を通じて安定してほうれん草を仕入れるためには、春に出荷する農家、夏に出荷する農家といった具合に時期別に生産農家と取引する必要がある。「SEASONS!」では各農家の出荷スケジュールを可視化し、生産者と購入者のマッチングを促進したい考えだ。

また、これまで生産農家にはどういった食材が市場で求められているかといった情報が入ってこなかったと菊池氏は言う。生産農家と購入者が直接つながることで、需要をヒアリングできるようになる。また、「SEASONS!」の掲示版機能では、購入者がこういった食材が欲しいというリクエストを出すことができ、生産者はそれを見て購入者に提案することもできる。このように需要が見えることで、生産農家はより需要に見合う食材を生産し、売上を伸ばすことにつなげることができるだろうと菊池氏は言う。

生産者と購入はどちらも無料で「SEASONS!」に登録でき、「SEASONS!」は取引毎に手数料を得るモデルで運営するという。本日ローンチした「SEASONS!」のα版は招待制で、関係者向けのリリースだ。7月1日から一般向けにベータ公開する予定だという。

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TechCrunch Japan

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