台湾の電動スクーターと交換式バッテリーインフラ企業Gogoroが評価額2575億円のSPACを経てNASDAQへ上場

Gogoro(ゴゴロ)が上場する。電動のスマートスクーターと交換式バッテリーインフラで知られている同社は現地時間9月16日、Princeville Capital(プリンスビレキャピタル)傘下のSPAC(特別買収目的会社)Poema Global(ポエマグローバル)との合併を通じてNASDAQに上場すると発表した。この取引でのGogoroのバリュエーションは23億5000万ドル(約2575億円)で、2022年第1四半期の取引完了を目指している。合併会社の社名はGogoro Incとなり、ティッカーシンボル「GGR」で取引される。

発表によると、募集以上の申し込みがあったPIPE(上場企業の私募増資)での2億5000万ドル(約274億円)、そしてPoema Globalが信託で保有する3億4500万ドル(約378億円)を含め、Gogoroは上場の過程で5億5000万ドル(約603億円)を調達すると予想している。PIPEでの投資家には、Foxconn Technology Group(フォックスコン)や、GojekとTokopediaの合併で誕生したインドネシアのテック大企業GoToといった戦略的パートナー、Generation Investment Management、台湾の国家開発基金、Temasek、Ruentex GroupのSamuel Yin(サミュエル・イン)博士、Gogoroの創業投資家などの新規・既存投資家が含まれる。

資金はGogoroの中国、インド、東南アジアでの事業拡大と、テックエコシステムのさらなる開発に使われる。

台湾で10年前に創業されたGogoroのテクノロジーには、交換可能なスマートバッテリー、充電インフラ、車両やバッテリーの状態やパフォーマンスをモニターするクラウドソフトウェアが含まれる。Smartscooters、Eeyo電動自転車といった自前のブランドを手がけているだけでなく、Gogoroは自社のPowered by Gogoro Network(PBGN)プログラムを通じて利用できるプラットフォームを作り、パートナー企業がGogoroのバッテリーや交換ステーションを使う車両を製造できるようにしている。

SPAC取引の数カ月前に、Gogoroは中国とインドでの大きな提携を発表していた。中国ではバッテリー交換ネットワークの構築でYaeda、DCJと協業し、インドでは世界最大の二輪車メーカーの1つ、Hero MotoCorpがGogoroのテックをベースにしたスクーターを発売する。Gogoroはまた、ヤマハ、スズキ、AeonMotor、PGO、CMC eMOVINGなどのメーカーとも提携している。

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これらのパートナーシップが整ったことで「我々は現在、真に当社を次のレベルに持っていく必要があります」と創業者でCEOのHorace Luke(ホイレス・ルーク)氏はTechCrunchに語った。GogoroがSPACのルートを取った理由について、同氏は次のように説明した。「ビジネスチャンスやストラクチャー、提携とは何か、かなり掘り下げて語ることができるため、急ぎのロードショー(さまざまな機関投資家への会社説明会)よりも正しく会社を評価できます。当社の事業計画を考えると、SPAC上場は事業拡大にフォーカスする絶好の機会となります」。

GogoroがPoemaを選んだ理由の1つは「Poemaの持論が当社のものとかなり一致していたからです」とGogoroの最高財務責任者Bruce Aitken(ブルース・エイトケン)氏は述べた。「例えばPoemaは持続可能性の基金を持っていて、当社の環境と持続可能性に対する情熱はそれとうまく融合します」。

5年もしないうちに累計で売上高は10億ドル(約1097億円)に、バッテリー交換インフラの契約者は40万人超になる、とGogoroは話す。同社は2021年第4四半期に中国・杭州で試験プログラムを立ち上げ、2022年にはさらに6都市でも展開する。インドではHero MotoCorpが現在、Gogoroをベースにした初の車両を開発中で、2022年にニューデリーでバッテリー交換インフラの展開を開始する。

「想像したよりも中国での需要は大きく、これは当社にとって良いニュースです。そしてこれは上場する必要がある基本的な理由の1つでもあります。当社はこうしたマーケットに実際に大規模に貢献するのに必要な資金やリソースを調達しなければならないのです」とルーク氏は述べた。

Gogoroが東南アジアに進出するのにGoToと同様の提携を結ぶのか尋ねたところ「重要なのは東南アジアが二輪車マーケットとしては中国、インドの次に3番目に大きいことを認識することです。Gogoroはこうした大きなマーケットを追い求めるためのビジョンを常に持っています。GoToはインドネシアですばらしい成功を収めていて、GoToの当社への投資は会話のきっかけになりますが、GoToがPIPEに参加するということ以外、現時点で発表できることはありません」とルーク氏は話した。

発表資料の中で、Poema GlobalのCEOであるHomer Sun(ホーマー・サン)氏は「Gogoroが構築したワールドクラスの提携との組み合わせで開発したテクノロジーの差異化は、2つの世界最大の二輪車マーケットでかなりの成長機会をもたらすと確信しています。Gogoroの事業エリア拡大の計画とNASDAQ上場企業への移行をサポートすべく、同社の傑出した経営陣とともに取り組むことを約束します」。

画像クレジット:Gogoro

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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