営業担当者がその顧客のエキスパートになるための洞察を提供するDatabookが約57億円を調達

Databookの共同設立者でCEOのアナンド・シャー氏(画像クレジット:Databook)

2021年4月にシリーズAで1600万ドル(約18億円)を獲得した、AIを活用したコンサルティング型セールスインテリジェンス企業であるDatabook(データブック)が、今度はシリーズBで5000万ドル(約57億円)を獲得した。

パンデミック3年目でリモートワークが続く中、営業担当者の88%が「現在の経済状況では顧客のニーズを予測することが重要」と感じているとSalesforce(セールスフォース)は指摘する。しかし、営業担当者は、経営幹部へのセールスに必要な戦略的洞察、関連するビジネスユースケース、パーソナライズされたコンテンツが不足していることが多い。

そこでDatabookの出番だ。同社は、営業担当者が顧客の専門家になれるようなツールを、ボタンをクリックするだけという形で提供している。Databookの顧客基盤は現在、毎年3000億ドル(約34兆円)超の売上高を生み出しており、Salesforce、Microsoft(マイクロソフト)、Databricks(データブリックス)などのエンタープライズ企業がこの技術を利用して顧客の購買体験を向上させ、結果として収益獲得を増やしている。

「Databookのプラットフォームは、営業担当者のビジネスセンスを高め、アカウントの優先順位付けを支援し、営業活動全体を解決しようとするビジネス上の問題に正面から取り組むためのものにする強制機能です」と、Salesforceのエンタープライズセールス担当AVP、Frank Perkins(フランク・パーキンス)氏は文書で述べた。「Databookは、アカウントプランニングの方法と、担当者がアカウントに売り込むための準備に革命をもたらします。そして、これらすべてを一般的な営業担当者が完全にアクセスできる方法で行います。ゲームチェンジャーです」。

MicrosoftのベンチャーファンドM12はシリーズAをリードし、Bessemer Venture Partnersが主導する今回の応募者多数のシリーズBラウンドにも参加した。さらに、DFJ Growth、既存投資家であるThreshold Ventures、Salesforce Ventures、Haystackが参加している。

Databookの共同設立者でCEOのAnand Shah(アナンド・シャー)氏は、こんなに早く追加資金を調達するつもりはなかった、と電子メールを通じて語った。実際、同社は過去4年間で3倍の売上成長を見せており、その多くはマーケティング費用をほとんどかけずに得た需要だ。

「当社の財務内容は健全で、当社の規模とステージとしてはユニークで強固なものですが、イノベーションと新規顧客開拓のスピードを支えるべく採用を加速させるために、今すぐ追加資金を調達することにしました」とシャー氏は付け加えた。

同ラウンドの主導権を争う投資家が多数いたにもかかわらず、Databookが以前から知っているBessemerを選んだ理由について「優れた実績を持つナンバーワンのクラウドSaaS投資家」であり「当社の今後をかなり支援できる広範な投資およびポートフォリオ運用チームを抱えています」とシャー氏は述べた。

同氏は、今回の資金を3つの方法で活用する意向だ。1つ目は、製品、エンジニアリング、営業、マーケティング、カスタマーサクセスなど、事業の全部門での雇用だ。2つ目は、銀行、生命科学、小売、消費財などの新しい業界への進出だ。これらの業界はすべてデジタル化の影響を受けており、顧客関係管理への投資を行い、営業担当者が顧客について十分な情報を持ち、効果的に販売するために十分な時間が必要だと考えていると、同氏は指摘する。

Databookの顧客は、官民4万4000社のグローバルデータセットを活用している。このため、3つ目の資金活用分野として、欧州とアジア太平洋地域への事業拡大、営業およびマーケティングチームへの投資を行う。これは元アクセンチュアのPeter Zuyderduyn(ピーター・ザイダーダイン)氏を2021年に欧州地域のゼネラルマネージャーに任命したことを補完するものだ。

今回の資金調達は、同社にさまざまな変化が起きている中で行われた。シリーズAラウンドから評価額は5.5倍になり、従業員数も2倍に増えた。さらに、同社は2021年を売上高350%増で終え、第4四半期は複数の7桁の取引成立を受けてこれまでで最も好調な四半期となった、とシャー氏は述べた。

「これは、当社のビジネスと顧客基盤の急成長を直接証明するものです」と同氏は付け加えた。「当社の従業員の38%はこれまで過小評価されてきたコミュニティ出身者で、今後も採用を続けるなかで、多様性、公平性、包括性にいて高い水準を保つことを約束します」。

従業員の増加は役員レベルにも及んでいる。元Google社員のNeil Smith(ニール・スミス)氏が最高技術責任者に、Tamar Shor(タマール・ショア)氏がTreasure Dataを経て製品担当上級副社長に、そして元SalesforceのBruno Fonzi(ブルーノ・フォンジ)氏がエンジニアリング担当副社長に就任した。

一方、Databookはコンサルティング型セールスインテリジェンスのパイオニアであり「今、企業のB2Bセールスが優先している」この新しいカテゴリーのリーダーであり続けている、とシャー氏は話す。アカウントベースのテクノロジーやセールストレーニングに莫大な投資を行っているにもかかわらず、法人向けソフトウェアは依然として非効率で、収益の平均41%が営業とマーケティングのチームに費やされている。シャー氏は、Databookを使用する営業チームは、平均して3倍のパイプラインを達成し、2倍近くの案件を生み出し、サイクルタイムを1.5倍速くしていると推定している。

「企業は将来に向けて、企業におけるデジタル販売の役割を見直す必要があります」と同氏は話した。「顧客価値と信頼を生み出すには、市場開拓チームのメンバー全員が、特定のビジネス成果を解決する完全なソリューションで買い手と売り手を調整することで、戦略的なコンサルタントとして機能する必要があります」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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