国際送金のヒドさに憤慨して起業―、英FintechユニコーンTransferWise CEOがTC Tokyoに登壇

11月16日、17日の2日間にわたって渋谷・ヒカリエで開催予定のテック・イベント「TechCrunch Tokyo 2017」で、Fintechシティーと化したロンドンから、国際送金サービス「TransferWise」の共同創業者・CEOのTaveet Hinrikus(ターバット・ヒンリッコシュ)氏が来日して登壇することになったのでお知らせしたい。

TransferWise共同創業者・CEOのTaveet Hinrikus氏(TechCrunch Disrupt London 2015登壇時)

TrasferWiseの発想はすごい。

エストニア出身でSkypeの第一号社員だったTaveetは、あるときエストニアの首都タリンからロンドンに移住して、国際送金のイケてなさに憤慨する。TechCrunch Disrupt Londonに登壇したとき、1人の銀行利用者としてあまりに愕然としたのがTransferWise創業のきっかけだという。当時、ロンドンとタリンを行き来していて、給与をタリンで受け取っていた関係で「エストニア→ロンドン」という国際送金を使うようになっていた。

毎月銀行の窓口に並ばなければならず、そのうえ着金まで時間がかかる。何より手数料が高い。のちに共同創業者となるロンドン在住のKristo Kaarmann(クリストフ・カーメン)氏も同様に、国際送金サービスは根本的に何かが壊れているに違いないと感じていたそうだ。そこでTaveetとKristoは実験をする。

・Taveetはエストニアの自分の口座からKristoのエストニアの口座にお金を送る
・Kristoはロンドンの自分の口座からTaveetのロンドンの口座にお金を送る
・事実上2人は「エストニア←→ロンドン」の送金需要を満たしたことになる

これを多数の都市間で仕組み化したのがTransferWiseだ。

TransferWiseのアイデアは、ある意味では小学生の思い付きのようなところがある。Taveetによれば、当初の周囲の反応は「そんなのうまく行くわけないよ」とか「誰も君たちなんて信用しないよと」というものが少なくなかったそうだ。それが今やイギリスやヨーロッパ、米国をはじめ504通貨ルート、59カ国、約100万人が使うサービスに成長。月間800万ポンド(1億2000万円)ほどの国際送金額となっているという。手数料は従来の国際送金の8分の1となり、これまで送金完了まで4〜5日かかっていたものも90%が24時間以内に完了するようになった。現在は個人ユーザーが中心だが、SMB市場への進出もはじめている。

国際送金の手数料は高い。銀行は市場とは異なる「為替レート」を使って必要以上の儲けを出している。そのことを揶揄する以下のような動画キャンペーンは、TransferWiseが解決する問題を良く表しているし、なかなか痛快だ。「もしあなたの物の一部を誰かが取ったりしたら、どんな気がするだろうか? 海外送金をするときには、それが実際に起こっていることです。ただ何を取られているのかに気づくのが難しいだけ」と言っている。国際送金サービスで「手数料無料」をうたうところも、「為替レート」の中に手数料を隠し続けてきた、というのがTransferWiseの指摘だ。

TaveetはTransferWiseのことを「移民たちが創業し、移民たちが作り、移民たちが使っているサービス」と呼んでいる。このため、これをご覧の読者の方は知らない人のほうが多いかもしれないが、すでに日本でも関東財務局に登録済みで日本でも利用可能なサービスでもある。

スタートアップ企業としてみてみると、2010年に創業して、2016年5月のシリーズDラウンドまでに累計1億1600万ドル(約132億円)の資金を調達している。また今年5月には創業6年にして黒字化を達成したことを発表している。

ロンドンは2010年以降にFintechハブとして興隆した。そのエコシステムの発展に合わせる形でFintechユニコーンとして急成長したTransferWiseのTaveetの講演を、ぜひTechCrunch Tokyo 2017の会場に聞きにきて頂ければと思う。

TechCrunch Tokyo 2017は一般チケット価格4万円のところ、10月末まで(来週火曜日まで!)は前売りチケットは割引価格3万円で販売している。また、創業3年未満のスタートアップ企業の従業員であれば、引き続きチケット価格は1万5000円だ。ぜひこの機会に検討いただければと思う。

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投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。