国際送金サービスTransferWise創業者、Skype時代の経験を題材に破壊的イノベーションを語る

ロンドン発スタートアップ企業のTransferWiseの共同創業者で代表取締役のTaavet Hinrikus(ターヴェット・ヒンリクス)氏は、TechCrunch Tokyo 2017のGuest Session 「国際送金のヒドさに憤慨して起業―、英Fintechユニコーン創業ストーリー」で講演し、自ら関わった破壊的イノベーションについて語った。

TransferWiseは、移民のための国際送金サービスだ。銀行を使い国際送金をすると、手数料が高く日数がかかることに皆不満を持つ。この課題の解決に暗号通貨/仮想通貨が有効との議論があるが、現状では各国の法整備にはムラがあり普及の度合いも今ひとつ。TransferWiseは、既存の金融サービスの枠組みを使いながら国際送金に風穴を空けるサービスといえる(詳しくはこの記事参照)。

Skypeも最初は「オモチャだ」と笑われた

エストニア出身でSkypeの第一号社員だったHinrikus氏は「Skypeは電気通信のサーバをディスラプトする。TransferWiseも銀行業界を変える」と語る。

「2003年、エストニアの首都タリンにあるソビエト連邦時代の古いビルの一画でSkypeを作っていた」とHinrikus氏は振り返る。「優れた発明はオモチャと呼ばれて笑われる。Skypeはオモチャだ。AT&Tとは競争にならない、と言われていた」。これは、破壊的イノベーション理論の提唱者であるクリステンセンが語る通りの展開である。最初はオモチャに見えたイノベーションは市場で急速に洗練されていき、やがて既存のビジネスを打ち負かす力を持つようになる。

SkypeもTransferWiseも、移民であるHinrikus氏自身が必要としていたサービスだった。「高校時代にアメリカに留学した。国際電話料金が高すぎて、1カ月に1回しか電話をかけられなかった。今は毎日のようにSkypeで話をしている」。このような世の中の変化を作り出したいとHinrikus氏は語りかける。

「本当の問題を解決し、プロダクトを10倍良く、それを素早く」

Hinrikus氏は、講演のまとめとして次の3つのメッセージを伝えた。「第1に、マーケットの本当の問題を解決しよう。第2に、プロダクトを10倍良くしよう。第3に、それを素早くやろう」。

ここで強調したのは「10倍良い製品」というくだりだ。「クルマは馬車より10倍速い。『若干よい』ではなく、『数倍〜数十倍よい』を目指すべきだ。顧客はその10倍よい製品について話をし、噂で伝わっていく。TransferWiseも銀行送金より10倍安いと分かり顧客が広がってきた」。もちろん「素早くやる」ことも大事だ。「良い試みはすぐ模倣されてしまう。さらなる投資を迅速に行うことが重要となる」。

Hinrikus氏は「あなた自身がディスラプトされる可能性がある」と警告する。それを防ぐ方法は「(1) 欲深くならないこと、(2)カスタマーにフォーカスすること、(3)”What If”と問い続けること」だとHinrikus氏は続ける。収益の追求だけに気を取られると、カスタマーや自分達の動機を忘れてしまう。「もしコンピュータにマイクがあって簡単に電話できたらどうなるだろうか?」「金融危機の時、代替手段があればどうなっただろうか?」と常に問いを発することが、次のアクションにつながる。

締めくくりの言葉は「世界を変えたいと思うだろうか?」。Skypeで世界を変え、TransferWiseで国際送金ソリューションを立ち上げた経験者がスタートアップ関係者にエールを送る講演となった。

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TechCrunch Japan

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