埋め込みエンジニアがハードウェア部品と簡単に繋がるためのAPIを作る「Luos」

今週TechCrunch Disruptのスタートアップ・バトルフィールドに参加しているLuos(ルオス)は、埋め込みハードウェア(embedded hardware)デベロッパーがモーター、センサーなどさまざまなハードウェア部品と簡単につながり、再利用可能な設定プロファイルを作ることで、ソフトウェア・エンジニアがマイクロサービスで得ているのと同様の柔軟性をもてるようにすることを目標にしている。

LuosのCEO・共同ファウンダー、Nicolas Rabault(ニコラ・ラボー)氏は、元埋め込みハードウェア・エンジニアとして、自分たちが歴史的に行ってきたやり方を簡易化するソリューションを作りたいと考えた。「Luosのアイデアは、埋め込みシステム・エンジニアがほかの人も簡単に再利用できるものを作れるようにして、毎回全部作り直すのではなく、既存のプロファイルを組み合わせるだけでよい方法を提供することです」とラボー氏が私に話した。

このアプローチのひらめきは、マイクロサービスの世界から得たと彼は言う。「私たちのテクノロジーはウェブ世界のマイクロサービスに基づいて作りました。マイクロサービスはウェブ・デベロッパーに、世界中の誰もがどこででも使える再利用可能なソフトウェア部品を作れるようにしているからです」と彼は言った。

「Luosはあらるゆる部品(ボタン、モーター、バッテリー、カメラ、Wi-Fiなど)の標準APIを公開することで、だれもが追加の開発をすることなくこれらのサービスを利用できるようにして、デベロッパーはポータブルで再利用可能なbehavior code(行動コード)[私たちはプロファイルと呼んでいます]を作ることができます」。つまり、バッテリー・プロファイルやモーター・プロファイルを一度作れば、どのメーカーが作ったどんなタイプのバッテリーやモーターにも適用できる。

この機能をあらゆる埋め込みハードウェア・エンジニアの元に届けるために、会社はオープンソース・ライブラリを作って、デベロッパーがさまざまなジェネリック・プロファイルを作れるようにした。初めにこのスタートアップは、モーターなどのよく使われるプロファイルをいくつか種として登録し、埋め込みデベロッパーはこのオープンソース・フレームワークをダウンロードして、いつでも自分のバージョンを作り、それをまたコミュニティーでシェアすることができる。

このフレームワークを作るために、エンジニアはボード上の各コンポーネントのためにカスタム・コードを書くのが普通で、それは時間のかかる面倒な作業だ。Luosのソリューションは、その複雑さを大部分取り除き、共通プロファイルを作ることでボード上のさまざまなパーツとつなぐ共通の方法を提供する。

プロファイルをシェアするためのマーケットプレイスや中央ライブラリはまだないが、系統的にシェアする方法ができたらそういう場を作る計画だ。現在同社は、コンサルタントやサポート役として、企業が開発ライブラリを使ったりプロファイルを開発したりするのをサブスクリプション・モデルを通じて支援することで収益を得ている。

Luosは、埋め込みエンジニアが出荷済みボード上の問題を解決するために、モーターなど特定の部品に何が起こったかをリモートで把握して修理を手配するためのSaaS(サービスとしてのソフトウェア)ツールの開発にも取り組んでいる。これが完成すれば新たな収益源が加わる。

ラボー氏は2名の共同ファウンダーと共に、2018年にスタートアップを設立したが、アイデアのルーツは14年前、ラボー氏がまだ学生だった頃に遡る。彼はキャリアのすべてを直接的間接的にこの問題に捧げてきたので、会社を始めた時には、このようなソリューションを実装するのに十分なほどテクノロジーは成熟していた、と話した。

現在従業員はファウンダー3名を含む12名で、今後はこの種の企業で重要な役割となるコミュニティ管理やユーザー体験の担当者を雇、さらには埋め込みシステムエンジニアも追加する計画だ。同氏は、多様な会社を作りたいと考えていて、現在はフランス在住の社員しかいないが、リモートワークの会社でどこに住む人でも受け入れているので、会社の発展とともに多様性を高められる可能性がある。

フランスのボルドーを拠点とするこのスタートアップ、これまでにシード資金140万ドルを調達している。この初期資金の主な目標は、ターゲットである埋め込みシステム・エンジニアの間で会社がやっていることを広めることだ。

本誌のバトルフィールドに参加することで彼らのミッションが強化されることは間違いないが、さらにファウンダーたちは、会社をユーザー、顧客、投資家たちに売り込み、米国の聴衆に自分たちを紹介するための実践的アドバイスを得た。ここ米国は、拠点であるヨーロッパよりもエンジニアがこの種の新しいツールを実験することに前向きだとラボー氏は信じている。バトルフィールドはそういう聴衆と出会う重要な場だと彼は考えている。

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画像クレジット:Luos

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(文:Ron Miller、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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