大学生向けノート共有ネットワークを提供するStuDocuがユーザー数1500万人突破

オンラインで学ぶにしても、直接授業を受ける場合でも、教えられたことを記憶し、応用するための主要な手段として講義で優れたノートを取ることの重要性をすべての生徒が十分に認識しているだろう。アムステルダムを拠点とするスタートアップのStuDocuは、学生が作成した最良の授業ノートを集めて共有するためのプラットフォームで収益性の高い大型ビジネスを構築してきたが、このほど5000万ドル(約54億6000万円)の資金調達を発表した。

シリーズBはフランスのベンチャーキャピタルPartechによるもので、StuDocuがクリティカルマスを獲得しようとする中で行われた。同スタートアップによると、同社のユーザー数は現在、60カ国2000校の大学で1500万人に達しているという。このスケールで注目すべきなのは、規模の大きさだけでなく、同社はかつてはほとんど自己資金で運営を行っており、その間に達成されたという事実だ。PitchBookCrunchbaseの報告によるこれまでの調達額は150万ドル(約1億6400万円)程度となっているが、CEOのMarnix Broer(マルニックス・ブロアー)氏によると、Piton Capital、Peak Capital、Point Nine Capitalなどの既存投資家から1000万ドル(約10億9200万円)弱の資金を密かに調達してきたという。

2020年の新型コロナウイルス感染症の影響下の生活において、EdTech分野で注目されたのは、従来の物理的環境と比較しても遜色ない(あるいはそれ以上の)学習をリモート環境で可能にする技術だった。ストリーミング体験の改善、スクリーンを介した指導アプローチの向上、体験を管理するツールなどだ。StuDocuの事業はどちらの型にも適合するが、ある意味では、学習に関連するより基本的なアプローチ、すなわち授業中に座ってノートを取るということへの回帰でもある。

それが、4人の学生が協働してStuDocuとして最初に作り上げた環境だった。

StuDocuが拠点を置くオランダでは、学部での評価の多くが期末試験の成績に基づいており、ノートの価値はさらにいっそう大きくなっているかもしれない。

CEOのマルニックス・ブロアー氏は、友人のJacques Huppes(ジャック・ハプス)氏、Lucas van den Houten(ルーカス・ヴァン・デン・ホーテン)氏、Sander Kuijk(サンダー・クイーク)氏とともに、まだ学生だった2013年、インターネットとクラウドソーシングの力を活用する機会を見出した。大学で同じコースを学ぶ学生たちがオンラインでつながり、コースからのメモをアップロードして互いにやり取りすることで、スムーズに協力し合うことを可能にするものだ。

(ハプス氏は同社の積極的な職務からは離れてアドバイザーとして活動しており、他の2人は引き続き同社に在籍しているとブロアー氏は述べている)

初期の製品は「完全に無料」で、デルフトの大学だけでなく他の多くの学校でユーザーを集めるほどの人気があったと同氏は語る。その後、創業者たちは卒業を目前にして「ある程度の収益が必要だと判断」し、そのコンセプトを堅持しつつ、自分たちのツールをビジネスにすることに目を向けた。

数回のイテレーションを経て「フリーミアムモデルでできる限り自由を保とうと最終的に考えました」とブロアー氏。StuDocuの場合、ドキュメントの閲覧数、ダウンロード数、推薦度で集計したデータをもとに全ドキュメントの上位20%を構成し、それらをプレミアムとしてラベルづけする。「そうすることで、自分のドキュメントをアップロードする他に、プレミアムにアクセスするために少額の購読料を支払うという選択肢がユーザーに生まれる」。逆にいうと、サイト上のドキュメントの80%は無料のままだ。

StuDocuはまた、同社のプラットフォームにいくつかの技術を組み込んで、詐欺師や不正を企てる者への対策に役立てている。プレミアムコンテンツを判断するための指標となるユーザーはプレミアムユーザー自身に限られており、彼らはサイト上のプレミアムコンテンツがどのようなもので、何がそうでないかを知ることはなく、さらには、StuDocuのより本格的なユーザー、ヘビーユーザーである可能性が高い。

「最高品質のドキュメントを上位に保持し、残りは別に蓄積しますので、ユーザーはすばらしいノートだけを体験できるようになります」と同氏は説明する。「ただし、多少のアップロードのゴミがあっても損をしないことはわかっています。無料でアクセスできるようにするもので、そうなるべきではありません。結局のところ、これはコミュニティであり、質を高く保つことができると信じています」。さらに、宝くじやその他の特典を利用して、ドキュメントを見直すよう奨励している。

また、ユーザーが投稿しているものが、白紙のドキュメントだったり、関係のないランダムな文章だったりするものではなく、目の前にあるテーマに関する実際のメモであるかどうかを判断するために、資料をスキャンする手段も拡大している。さらにブロアー氏によると、先ごろ締結されたAlgoliaとの検索に関する業務提携により、大学やコース単位で検索して資料を探すのではなく、より詳細な文書検索が可能になるという。

これは多くのユーザー生成コンテンツサイトが抱えている問題、つまり圧倒的多数がクリエイターではなく消費者であるという課題を解決するのに役立つ魅力的なビジネスモデルだ。ブロアー氏は、現在ユーザーの約15%が有料サービスを利用しており、15%がコンテンツのアップロードによってアクセスし、70%が無料サービスを利用してアップロードはしていないと概況を語った。

StuDocuは、自分たちのために作ったツールから段階的にビジネスを構築することを通して「スクワットで働く」ことから、インターンと一緒に小規模で低コストのスペースを利用すること、そしてブロアー氏がいうところの「普通のオフィス」へと発展してきたという。

他にも多くのEdTech企業が、生徒たちが互いに学習を手助けできるプラットフォームを提供する可能性を見出している。Brainlyも欧州(具体的にはポーランド)の大手企業で、ノートではなく、学生が互いに助け合って宿題の質問に答えるという、Cheggと類似したコンセプトを確立した。オーストラリアのNexusNotesも、メモを集めるためのプラットフォームを構築している。Academiaはノートだけでなく研究論文も対象としている。Docsityはクラスノートと論文の両方に焦点を当てている。StudySmarterも欧州を拠点にしており、ノート機能に加えて、学習の進歩をかたち作るためにAIを活用している。

おそらく最も類似性が高く、StuDocuの最大の競合である米国企業Course Heroは、現在の評価額が約11億ドル(約1200億円)とされている(注目すべき数字だが、StuDocuは評価額を公表していない)。

「私たちは世界をリードする企業であると認識しています」とブロアー氏は語り、コースやノートのカタログ全体で30以上のローカル言語をサポートしていることを示した。

「数百万人にのぼる学生を支援し、膨大な数のドキュメントを保有していますが、同時に私たちは自らをハイパーローカル型マーケットプレイスと捉えています」と同氏は付け加えた。「同じ法学コースにいる300人が、お互いにコミュニケーションを取り、知識を共有できるようになりました」。

今回の資金調達は、ハイパーローカルコンセプトをより広範囲に拡大するだけでなく、来るべき支援がより大きな影響を与え得る機会を利用するという、興味深い試みになるだろう。

例えば英国では、他の年齢層に比べて、大学より下の年齢層の高校生(14歳以上)が多くなってきている。彼らの大多数は、2つのセットの試験に備えるために勉強している。GCSEは11年目(通常16、17歳)に、Aレベルは13年目(18、19歳)に受験する。どちらも極めて限定的な科目に基づいており、文字通り国全体が共同で学ぶという非常に特殊なカリキュラムに準拠している。つまり、個々の学校や教師が異なったアプローチをとったり、良い教え方をしたり、悪い教え方をしたりしても、最終的にはすべての生徒が指定科目で同じ試験を受けることになる。

これはStuDocuのような企業にとって興味深い機会である。大きなユーザーネットワークを構築することができ、その結果、貢献度の高い強力なノートの割合は少なくて済む(より多くのユーザーが同じ素材を必要とするため)。このモデルは他の地域でも採用されており、ブロアー氏によると、StuDocuはこの種の市場でテストを進め、徐々に拡大してきているという。

標準化されたテストが方程式の一部ではなかったとしても、学生は、エッセイの執筆などの他の種類のコースワークに使用するために、または単に学習を続けながら知識を保持するのに役立つように、より良いノートを必要とすることが考えられる。現在約2億人が大学教育を受けており、この前提において多様性を見出す機会は多いと言えるだろう。

また将来的には、多くの教授が学生に講義用のノートを提供することを考慮すると、大きな領域となるコース教材を構築するために大学とより緊密に協力する可能性もあるかもしれないが、ブロアー氏は、多くの場合教授はまだそうしたことを実行していないため、当面は学生とそのニーズに焦点を当てるとしている。

StuDocuの資金調達に投資家が参加しているのは、これまでに述べたすべての理由からだろう。

PartechのゼネラルパートナーであるBruno Crémel(ブルーノ・クレメル)氏は声明の中で「StuDocuはすでに世界中の何百万人もの学生を支援しているプラットフォームであり、教育を誰もが利用しやすいものにするというミッションのもと、この才能あるチームとパートナーになることを喜ばしく思います」と述べている。「StuDocuのチームに出会ったとき、私たちはそのデータ駆動型の文化と、学生たちがそのサービスをとても気に入っていることに非常に感銘を受けました。ブロアー氏とそのチームがStuDocuのグローバル展開を加速させ、学生たちが学習目標を達成するのを支援する革新的な方法をさらに開発してくれることを楽しみにしています」。

関連記事
食べチョクが給食食材と食育コンテンツを学校向けに期間限定で無償提供、学校からの公募もスタート
建築学生向けサービス「BEAVER」を運営するArchiTechが3500万円を調達、利用者数3000人突破
韓国のRiiidはソフトバンクの支援を受けてAIベースの学習プラットフォームをグローバルに拡大する

カテゴリー:EdTech
タグ:StuDocu資金調達アムステルダムオランダ大学生

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。