大麻投資家たちが次に狙うのは精密服用製品

【編集部注】日本国内では、大麻取締法により大麻の所持だけでなく、大麻から製造された医薬品の使用、施用が法律で禁じらており、違反者には5年以下の懲役刑が科せられる。EU諸国も多くの国で非合法の薬物とされている。一方、米国ではシリコンバレーを含むカリフォルニア州をはじめ30州程度が医療用だけでなく嗜好用の大麻を合法化している。

女性と高齢者が大麻ムーブメントに参加しはじめた。数日前に国際ベンチャーファームDCMが主催したイベントで行われた、投資家たちへのインタビューを通して、このことが新しい投資機会を生み出していることを、私たちは聞き出すことができた。

具体的には、主要精神活性成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)を少量ずつ管理しやすい量で消費しやすいかたちにした、さまざまな製品が増加することを期待していることが語られた。

大麻ムーブメントそのものは驚きではない。聞く話だが、女性たちは大麻を、泥酔することなく緊張を解すことができる手段としてみなすようになっているらしい。これは決してささやかな関心ではない。女性の体は、男性の体に比べてアルコールによる影響が異なる。これは、アルコールを分解する特定の酵素の体内生産量が少ないことも関係している。彼女たちはより働き、よりたくさん飲むことで、より早く肝硬変を発症している。疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)のレポートによれば、45歳から64歳までの女性の死亡率は2000年から2015年の間に57%と驚くほど上昇した(これは男性の上昇率よりも大きい)。そして同期間に、肝硬変に起因する死亡率は21%も増加したのだ。

一方、高齢者の場合は、さらに幅広い事情の理解が可能だ。多くの高齢者が慢性的な不快感を抱いて生活してる。それは例えば関節炎や骨粗鬆症、あるいは時には疲労、関節痛、あるいはもっと悪い症状を引き起こす自己免疫疾患などを抱えているからだ。OxyContinやその他の鎮痛剤に依存する人の数は増えつつあり、それらへの依存を軽減する手段をも模索されている。それもまた、大麻がかつてのようにスキャンダラスに見られない事例の1つだ。もうすぐ70歳に手の届く歳であり、長年マリファナの合法化に反対してきた元下院議長のジョン・ベイナー(John Boehner)氏でさえ、大麻販売会社のAcreage Holdingsの取締役に昨年夏に就任した。なお元マサチューセッツ州知事であるビル・ウェルド(Bill Weld、73歳)も同時に就任している。

大麻でのより予測可能な体験を、初心者に提供してくれるものの1つが、Indoseと呼ばれる創業2年目の、カリフォルニア州ウッドランドに本拠を置くヴェポライザー(気化器)メーカーの製品である。同社のキャッチフレーズは「Greatness Comes with Control」(素晴らしさは節度とともに)というものだ。Casa Verde Capitalが主導した350万ドルの資金調達を完了したばかりのこの企業は、一服あたり何ミリグラムのTHCを吸入するかを、ほどほどの1〜2mgから、よりインパクトのある3〜4mgまで、ユーザーが調整できるようにする。

カリフォルニア州サンタモニカに拠点を置く気化吸入スティックメーカーのDosistも、新規ユーザーに対して同様のアピールを行っている。そのスティックは、ユーザーが3秒以上吸入を行うと振動するので、吸う人間が吸入量を調整しやすくなる。Dosistはまた、単に「Sleep」(睡眠)と呼ばれる製品や、「Bliss」(至福)と呼ばれる別の製品系列を販売するなど、新しいユーザーが利用しやすいように準備した製品系列のマーケティングも行っている。

大麻チンキのような、舌の下に置く形態のもの(いわゆる舌下剤)も成長している。THC服用量の管理がより簡単であるという理由で、特に新規ユーザーたちの間での人気が高まっている。実際、大麻卸売注文プラットフォームLeaflinkは、大麻を注入した舌下錠およびチンキ製品、滴下剤、タブレットおよびフィルムが、昨年最も成長が著しかった大麻製品カテゴリであると述べている。

しかし、この先最大の機会を期待できるのは、おそらく食品分野かもしれない。こうしたものはこれまでもずっと存在してきたが、これからは確かに存在感を増して、異なるマーケティングが行われるようになるだろう。たとえばDCMは、今年の夏から、THCを注入したフレーバーショットを販売する予定の新しい飲料ブランドに500万ドルを投資したばかりだ。この飲料は、利用者に正確に何ミリグラムのTHCを服用することになるのかを知らせる。同時にいつどのような感覚を得ることになるのかも伝える。

今週初めにも書いたように、同社のターゲット市場は、必ずしもマリファナ煙草の喫煙者だというわけではなく、(規制の撤廃、広告、そしてスマートなパッケージのおかげで)「大麻に好奇心を持っている」層を相手にしたものだ。同社の共同創業者の1人もまさしく昨年から大麻を試し始めた女性だ、彼女は以前は消費者向け包装業の幹部だった。

そして、もっと多くの要因が登場する可能性がある。Casa Verde Capitalのマネージングディレクター、カラン・ワヘラ(Karan Wadhera)氏がパネルディスカッションの際に語ったように、「多くの分野に巨大な市場機会がある」のである、そして業界では「人びとが本当に正確な服用量を気にしていることが明らかになって」いるのだ。

大麻投資会社のCanopy Riversの社長であるナーブ・アレキサンドリアン(Narbe Alexandrian)氏も完全に同意した。彼が会場に向けて語ったのは「消費者のデータ、そして潜在的消費者(すわなち現在は大麻をやっていないが抵抗のない層)のデータ、そして拒否者(過去6カ月の間大麻をやっておらず、これからも考慮しないという層)のデータを見ていくとわかることは、現在拒否者である人多くも昔大麻を試したことがあるということです。しかし、非常にパンチの効いた大麻入りブラウニーを食べてしまったためにノックアウトされてしまい、その後この物質には近付かないようにしているのです」ということだ。

こうした層に向けて微量服用製品を売るチャンスは「巨大」だ、とアレキサンドリアン氏は語る。そして多くの人たちは、商品が提供される際には、よりコントロールされたものを歓迎するだろうと述べた。彼はまた、現在小売店で行われている奇妙な計算も、新しい機会となると示唆した。彼の説明によれば、現在の店舗は、個別の製品そのものに焦点を合わせるのではなく、何ミリグラムを売っているのかに焦点を合わせているという。「このため、彼らが考えるのは、100mgの飲料を10ドルで売り、50mgの飲料を5ドルで売るといったことなのです」、このため顧客は買ったものをどのように希釈するかを考えなければならない。だがそれは近い将来変わるだろう、と彼は語った。

パネリストで長年の大麻投資家であるエミリー・パクシ(Emily Paxhis)氏は2人の話に割り込みながら、彼らの意見に同意した。より具体的には、女性たちがより「程よい服用量」の機会を模索しはじめたことで、彼女自身「低用量プラットフォーム」への関心を持つようになって来ていると語った。彼女はそれを「『贅沢なランチで強い酒を飲む』のとは反対に、ワインまたはビール1杯を飲むのと同じようなものだ」と考えていると述べた。

2013年に大麻を中心とした投資会社であるPoseidon Asset Management(同社はPax Labs、Juul、大麻業界のHRスタートアップ、そして大麻専業のデータ分析会社などに手広く投資している)を共同創業したパクシ氏は、こう付け加えた。「消費者の皆さんを教育して、大麻でもっとくついで気分良くなってもらえる方法がたくさんあります。これらの低用量製品を市場に出すことは、そうしたことを実現するための素晴らしい方法の1つなのです」。

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(翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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