太陽光発電で「飛び続ける無人飛行機」を開発するSkydweller Aeroが分析プラットフォームのPalantirと提携

現在の飛行機やドローンは、その大きさや燃料の種類にかかわらず、いずれも「最終的には着陸しなければならない」という同じ制約を抱えている。

米国とスペインのベンチャー企業であるSkydweller Aero(スカイドゥエラー・エアロ)は、この制約から自由になりたいと考え、最終的には永久に飛行が可能となる太陽光発電による自動操縦型航空機を開発している。

シリーズAラウンドで3200万ドル(約35億2000万円)の資金調達に成功した同社は、Leonardo S.p.A.(レオナルド株式会社)、Marlinspike Capital(マーリンスパイク・キャピタル)、Advection Growth Capital(アドベクション・グロース・キャピタル)の3社から800万ドル(約8億8000万円)の募集枠を超えた追加資金調達を行った。また、同社はPalantir Technologies(パランティア・テクノロジーズ)とのパートナーシップも発表。Palantirの分析プラットフォーム「Foundry(ファウンドリー)」を使用して、通信、政府機関、緊急サービス用に設計されたSkydwellerの航空機に搭載し、大規模な情報処理を行う。

Skydwellerの共同設立者であるJohn Parkes(ジョン・パークス)氏は、TechCrunchのインタビューに答えて次のように述べている。「(Palantirは)データから価値を生み出すことに最も長けています。それは、我々の航空機をどのように飛行させるかという運用上の洞察を得るために、データを同社のシステムに入力する場合と、我々の航空機のセンシングシステムから出力されるデータや、航空機のネットワークを通じて得られるデータを、同社のシステムに入力してそこから得られるものについて解析する場合の両方においてです」。

そしてSkydwellerは、大量のデータを生成することになる。同社は現在、通信、地理空間情報、行政調査という、膨大なデータが関わる3つの市場に注力している。SkydwellerはFoundryのプラットフォームを利用することで、政府を含む同社の顧客が監視している地域を、より詳しく理解できるようにすることを計画している。

また、Foundryのプラットフォームは、飛行ルートやミッションの計画にも役立つ。Skydwellerは、天気や大気の情報を活用し、同社の航空機が太陽の光を効率的に利用して空を飛ぶことができるようにしたいと考えている。

「要するに、私たちが目指していることは、持続的な空中写真あるいは擬似的な衛星を作るということです」と、パークス氏はいう。「私たちは、永続的に飛行できる航空機を作ることに集中しています。我々の目標は、太陽が昇る限り、永遠に飛び続ける飛行機を作ることです」。

そのためには天候や大気のデータは特に重要で、航空機の飛行高度を決定する重要な要素となる。同社の飛行機は高高度を飛べるようになる予定だが、パークス氏によれば「より困難で、より実用的な問題」は、気象計画を利用して、十分なエネルギーを取り込み、低高度に留まり続けることだという。低高度飛行ではインターネットの通信品質や地理空間データが向上し、ペイロードのための電力もより多く確保できると、パークス氏は述べている。

画像クレジット:Skydweller Aero

Skydwellerの技術は、Bertrand Piccard(ベルトラン・ピカール)氏とAndré Borschberg(アンドレ・ボルシュベルグ)が指揮を執ったスイスのソーラー航空機プロジェクト「Solar Impulse(ソーラー・インパルス)」から生まれたものだ。このプロジェクトは14年間運営され、1億9000万ドル(約209億円)をソーラー航空機に投資してきたが、その背後にある財団が2019年に知的財産をSkydwellerに売却した。しかし、Solar Impulseは操縦するように作られていたため、それ以降の作業の多くはプラットフォームを無人で飛行できるようにし、機体に超長期耐久性を持たせることだったと、パークス氏は語る。

この航空機は、2200平方フィート(約204平方メートル)の太陽電池パネルを搭載した翼、600キログラムのバッテリー、水素燃料電池のバックアップ電源システムを備え、電気のみで駆動する。ソーラーパネルは飛行を維持するためだけではなく、地理空間カメラシステムや通信会社のペイロードなど、顧客のシステムにも電力を供給する。

同社は標準的な民間航空部品を使用しているが、そのほとんどは一定の使用時間以上にテストされているわけではなく、それはSkydwellerが計画している航空機の使用時間よりもはるかに短い。さらに、他の新技術を用いた航空機と同様、完全な認証の枠組みも確立されていない。

「時間のパラダイムを打ち破ろうとすれば、未知の領域に踏み込むことになります」と、パークス氏はいう。

2020年に飛行試験を開始したSkydwellerは、それ以来、自律システム技術の搭載とテストに注力してきた。今後は「非常に短期間で」この自律型航空機の離陸、フルフライト、着陸を含むテスト飛行を行い、将来的には長時間の飛行を実現することを目指している。顧客は1年から1年半以内にこの航空機のライセンス取得を開始できるだろうと、パークス氏は推測している。

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画像クレジット:Skydweller Aero

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

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