好みを踏まえて室温を自動調整、自宅をスマートにする「LiveSmart」が三菱地所らから3億円を調達

アプリやスマートスピーカーを通じて家電を操作できるサービス「LiveSmart」を運営するLive Smartは3月29日、複数の投資家を引受先とする第三者割当増資により約3億円を調達したことを明らかにした。

同社に出資したのは三菱地所、みずほキャピタル、三井住友海上キャピタル、イノベーション・エンジン、加賀電子の5社。三菱地所とは住宅やマンションなどの住環境における「スマートライフの実現」に向けて業務提携も結んでいる。

Live Smartでは調達した資金を活用して開発体制やビジネスサイドの組織体制を強化するほか、プロダダクトの販売拡大やスマートホームの認知度向上に向けたマーケティング施策を展開する計画。なお今回を含めると、同社の累計調達額は5億円を超えるという。

スマートホームコントローラーを軸に快適な生活をサポート

Live Smartは現在個人向けと法人向けにそれぞれスマートホームサービスを展開している。

個人向けには自社開発のスマートホームコントローラー「LS Mini」を軸に、アプリやスマートスピーカーを介して家電を操作できるプラットフォームを提供。たとえば外出先からアプリやLINEを使ってエアコンを操作したり、Amazon Echoなどを用いて音声でテレビや照明を操作したり。ユーザーの日常生活を便利にする。

「各家電を一度の操作で全部オン/オフにする」「毎日7時に自動的に照明をつける」などのルールを設定すれば操作を自動化できるほか、独自のAI(Adaptive Intelligence)機能を搭載。この機能を通じて身長や体重を始めとしたパーソナルなデータと、自分が心地いいと感じる温度など“個々人の好み”を考慮した上で最適な環境を整えてくれる。

現在はエアコンのみに限られるが、AI機能をオンにしておくと「夜間に外の気温や日射量低下の影響で室温が変化するのを察知して、ユーザーが快適な温度を保つべく自動でエアコンを稼働する」といった使い方が可能だ。

一方で法人向けにはLS Miniの上位機種である「LS Hub」を中心に、主に不動産ディベロッパーに対して管理画面やライフアシスタントボットを用いたサービスなどを提供している。

Live Smart取締役の上田大輔氏によると「通信規格のバリエーションの多さ」と「オープンプラットフォームであること」が大きな特徴とのこと。個人向けのLS Miniでは赤外線とWi-Fi、法人向けのLS Hubではそれに加えてBluetooth、ZigBee、Z-Wave対応のデバイスと接続できる。

これによって家電を遠隔操作できるだけでなく、Wi-Fiカメラやスマートロックの「Sesame」に繋ぐことも可能。子どもやペットの見守り用途としてはもちろん、中長期的には不在時の荷物受け取りや家事代行サービスなどにも対応していきたいという。

またサービスだけでなくデバイスについても他社製品と積極的に連携していく方針だ。特に法人向けのサービスについては「Hubは自分たちで作るが、そこに繋がる他のデバイスについては気に入ったものを直接メーカーから買ってもらって構いませんという発想で進めている」(上田氏)そう。今後もオープンなプラットフォームを維持していく。

個人のスマートライフを支える社会インフラ目指す

Live Smartはエンジニアのバックグラウンドを持つ代表取締役CEOのロイ・アショック氏や、Amazon Japanにて玩具事業部の商品戦略部部長を勤めていた上田氏ら4名が2016年に創業したスタートアップだ。

元々アショック氏は海外のパートナーと共同で現在のLS Hubのプロトタイプを作っていたそう。ヒアリングの結果、日本の企業で一定のニーズがあることがわかり国内で会社を作ることを決断したという。

ちなみにアショック氏と上田氏が初めて出会ったのは、近所のレストランとのこと。「偶然隣の席で食事をしていた時に、『こっちの方が美味しいから食べてみなよ』と話しかけられたことがきっかけ」(上田氏)で仲良くなり、最終的には一緒に起業するに至ったのだという。

左からLive Smart代表取締役CEOのロイ・アショック氏、取締役の上田大輔氏

今回の資金調達を踏まえ、Live Smartではプロダクトの開発や他社との連携をさらに加速させる計画。これまでAmazon上でのみ販売していたLS Miniを家電量販店でも販売しチャネルの拡大を図るほか、三菱地所との協業や今後展開予定のライフアシスタントサービスの開発も進める。

三菱地所とは共同で住宅向けのサービスを作っていく方針で、三菱地所グループの住宅開発事業に対するスマートホーム機能の実装に加え、チャットボットやアプリを活用したマンション居住者向けサービスの拡充などを見据えているという。

そしてそこにも関わってくるのが、Live Smartが現在仕込んでいるライフアシスタントサービスだ。

これは上田氏の言葉を借りれば「(様々なサービス、デバイスと繋がった状態で)1人1人にコンシェルジュがつくようなもの」。LINEやFacebookメッセンジャーといたコミュニケーションプラットフォームを介して、家事代行サービスや宅配便受け取りが不在時でも簡単に利用できたり、チャットボット経由で地域のセール情報や便利な情報を入手できる仕組みを考えているようだ。

上田氏自身、Amazon在籍時に物流業務に関わることがあり、その時感じた再配達や不在時の荷物受け取りに対する課題感が起業にも繋がっているのだそう。「LiveSmartをきっかけに、いろいろな社会課題を解決できるのではないか」という考えは以前から持っていたという。

「自分達の中では『スマートホーム』よりも『スマートライフ』という表現をしている。(ライフアシスタントサービスなどの提供を通じて)人々の快適な生活を支える、新しい社会インフラの実現を目指していきたい」(上田氏)

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TechCrunch Japan

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