子どもにデジタルスキルを教えるKodlandが約10.4億円調達、オンラインのコーディングスクールを拡張

ロンドンに拠点を置くKodlandは、2018年に起業して子どもにコンピュータプログラミングなどのデジタルスキルを対面で教えるコースを提供し、2020年前半からはオンライン教育にシフトした。同社はシリーズAラウンドで900万ドル(約10億4000万円)を調達し、これから市場を拡大していく。

このラウンドはRedseed Venturesが主導し、他にBaring Vostok、Kismet、Flyer One Ventures、ニューヨークに拠点を置くI2BFのパートナーであるAlexander Nevinsky(アレクサンダー・ネビンスキー)氏が参加した。

Kodlandが提供する6〜17歳向けのリモートコースは現在、英国、アイルランド、米国、カナダ、独立国家共同体地域、マレーシア、インドネシア、アルゼンチンで利用できる。同社はそれぞれの地域に応じてローカライズしたコンテンツを提供している(同社のユーザーはおよそ40カ国に広がっている)。同社によれば、これまでにおよそ1万6000人が有料コースに申し込んだ。

Kodlandは新たに調達した資金でオンラインコースの対象地域をさらに広げていく。

同社のコースはグループ学習またはプロジェクト学習で、コーディングやウェブサイト構築、ゲーム制作、アニメーション、ビデオ編集といったデジタルスキルを、従来のクラスルーム形式のレッスンよりも楽しくインタラクティブに教える。同社プラットフォームが提供するオンライン教育は、自己学習ではなく講師が指導する。

Kodlandによれば、同社プラットフォームには約1000人の講師がいて、市場によって雇用している場合もあればギグワーカーの場合もある。通常は、生徒15人に対して講師が1人つく。ただし個人指導も提供している。

同社は、学校に対してツールやリソースを販売するのではなく、デジタルスキルの課外学習に集中しているという。その方が学校教育の複雑な導入要件に対応する必要がなく、グローバルに拡大しやすいからだ。

また、クリエイターエコノミーに関して「Out of the Box」という独自のアクセラレータを設けている。これは優秀な生徒の目を「現実の」プロダクトに向けさせ、デジタルの成果物を収益化できるように特別に支援するものだ。

今回のラウンドで、Kodlandのこれまでの調達金額合計は1100万ドル(約12億7000万円)となった。同社は今回調達した資金を使い、今後2年間でコースの対応言語をさらに8言語増やして市場を拡大する計画だ。プロダクト開発にも資金を投入するという。

同社はTechCrunchに対し「2022年中に現在の英国やアイルランド以外にも英語圏の国に拡大し、スペイン語圏や東南アジアの国々にも拡大します」と説明した。

資金の一部はアクセラレータプログラムに使われる。

Kodlandは生徒たちから「大きなトラクション」を得て「最大級の成長を確実に遂げている」ことを背景に、今回のシリーズAを実施した。同社は2021年第3四半期に前年同期比6.5倍の売上を達成した。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で、EdTechは全般に急成長した。外出や人に会うことが制限されたため、画面を見る時間が増えたからだ。保護者が在宅で仕事をしている間に手頃な価格で子どもに使わせることのできるツールを求める需要があることはいうまでもない。

しかしそれは、競争が激化しているということでもある。

ソフトバンクのような大手投資家が教育分野に多額の資金を投じEdTechのユニコーン各社も活発M&Aをしている。コホート方式の学習プラットフォームも同様にEdTechとクリエイターエコノミーをつなごうとすることで投資を集めてきた。

子どもに関連するところでは、この分野の大手には以前からRobloxがある。Robloxはソーシャルゲームを活用して、プログラミング学習と収益化の可能性に対して子どもたちに興味を持たせようとしている。

しかし、講師が指導するクラスで子どもたちにSTEMのスキルを教えるというKodlandの構造とやり方は、拡大を続けるEdTechの世界で認められるようになるかもしれない。

同社は「国際的な子ども向けオンラインデジタルスキルスクール」として質の高い教育コンテンツという概念を保護者に売り込んでいる。4つのクラス(「モジュール」と呼ばれる)のセットは110ユーロ(約1万4000円)、全32クラスのコースは660ユーロ(約8万6000円)だ。

シリーズAに関する発表の中でRedseedマネージングパートナーのEugene Belov(ユージン・ベロフ)氏は次のようにコメントした。「従来の教育機関にとって現在の急激なテクノロジーの進歩についていくのは難しいことです。そのため供給(若年層のスキルや能力)と人材に対する需要(現代の職場で求められる要件)とのギャップがしばしば発生しています。(共同創業者の)Alexander Nosulich(アレクサンダー・ノスリッチ)氏とOleg Kheyfets(オレグ・カイフェッツ)氏は、これまでの学校教育では手付かずになることが多いにもかかわらず現在のデジタルの世界では不可欠になりつつあるスキルを生徒たちに教えることで、このギャップを埋めようと熱心に取り組んでいます。成果重視のユニークなプログラムは現代の子どもたちに強くアピールしています。我々はKodlandのジャーニーを支援できることをたいへん喜んでいます」。

補足資料の中でFlyer One VenturesゼネラルパートナーのVital Laptenok(バイタル・ラプテノク)氏は次のように述べた。「教育分野には現在、独占的な存在がありません。そのため多くのプレイヤーが市場に参入し、増加する教育サービスの需要に応えようとしています。顧客のリアルなニーズを理解しているプレイヤーが成長し、市場の流れを決めるでしょう。Kodlandのチームは子どもたちにとって実用的な知識と機会にしっかりと的を絞り、インタラクティブな職業教育をしています」。

画像クレジット:Kodland

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Kaori Koyama)

投稿者:

TechCrunch Japan

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