安倍総理がイーロン・マスクと会談、「シリコンバレーの文化を取り込む」と新プロジェクトにも言及

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今日4月30日(日本時間で5月1日)、安倍晋三内閣総理大臣がシリコンバレーに本社のあるテスラ・モーターズを訪問した。首相が到着するまでの間、シークレット・ポリスのSP、警察犬による荷物のチェック、韓国慰安婦問題で不満を抱える人たちのデモのシュプレヒコールなど、物々しい雰囲気だった。同社のCEOが運転するテスラ車に乗り込んだ安倍総理は1週間の強行な訪米スケジュールにも関わらず、イーロン・マスクCEOとの会談中は疲れも見せず、始終笑顔だった。

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イーロン・マスクCEOの運転するテスラ車の試乗を終えた後、テスラ車の加速が凄く、スピードに感動したと感想を述べた後、安部総理は「ビッグデーターとか、シェアード・エコノミーなど、(シリコンバレーでは)新しい概念がどんどん生まれています。そういうものを取り込んで、また日本から中小企業を含めて、シリコンバレーに人をどんどん送り込む必要性を感じました」と、シリコンバレーの文化を取り込み、日本に反映させることの重要性を語った。

人材をシリコンバレーに送り込み、日本にも起業システムを導入

安倍総理がワシントンDCでの上下両院合同議会での演説や会合を終え、現職総理として初めてシリコンバレーにやってきたのは、「世界の技術、人材、資金を日本の成長に取り込む」と同時に、経済活性化には起業のメッカであるシリコンバレーのように、変化に対して早く、次々に生まれてくる技術、それを支えるベンチャー資金などの起業システムが必須だと認識したためだ。日本企業200社の経営者たちを5年間に渡って、シリコンバレーに送り込み、修行させて起業文化や技術を吸収させるプロジェクトにも言及した。

ホワイトハウスに影響力を強めるシリコンバレーのエグゼクティブたち

また、シリコンバレー出身のエンジニアたちが、米政府の中枢部で働く例が増えてきたことも、シリコンバレー初訪問の1つの理由であろう。

具体例で言えば、2008年の大統領選挙戦で、Facebook創業者の1人であるクリス・ヒューズ氏がオバマ氏が選挙に勝つよう、My.BarackObama.comというネットワーキングウェブを作成し、オバマ大統領が選挙戦での勝利に貢献したことはよく知られている。また、元Google副社長だったミーガン・スミス氏は現在、米政府のCTOだ。2012年の選挙戦は有権者の行動などに関するデータベースを分析し、年齢性別などに異なるメッセージを送ったビッグデータ選挙と呼ばれた。コンピュータ仮想化用ソフトのVMwareで上級副社長だったトニー・スコット氏は政府のCIOに就いている。現アメリカ政府中枢部に、シリコンバレーのマネーや人材がかなりの影響力を持つようになっている。

中国に追い抜かされ世界経済で第3位となった日本だが、アジアインフラ投資銀行などの諸問題もあり、日米関係の強固が必須で、とくにシリコンバレーが強いハイテク経済を強固にしたいという思いもあったのだろう。

ベンチャー創業支援を推し進める安部首相は、テスラモーターズ他、Facebook CEOやYahooの創業者、Oracle会長、Microsoftなどシリコンバレーの企業を視察した他 、カリフォルニア州知事のジェリー・ブラウンに日本の高速鉄道を売り込んだ。ノーベル賞を受賞した山中伸弥京大教授(現在はカリフォルニア大学サンフランシスコ校研究所)にも会う。

安倍首相は本日を含め、カリフォルニアに3日間滞在する。明日から首相はロサンジェルスに移動し、日米経済フォーラム出席や日系アメリカ人たちに会い 、2日に政府専用機でロサンジェルスから帰国する。

電気自動車だけではない、テスラのトータルな環境ビジネス

ところで、首相の相手を務めたテスラのイーロン・マスクCEOもシリコンバレーからロサンジェスルに早速飛んだ。電気自動車だけではなく、家庭でのエネルギー・バッテリー・ラインを販売するメディア・イベントのためである。家庭にパワーウォールというバッテリー・システムを設置すれば、「電気料金を払う必要がなくなる」。同システムの価格は約3500ドルで、今年の夏に米国で発売開始予定で、 海外でも発売される。テスラは電気自動車を売るのだけが目的ではなく、二酸化炭素排出量を減らし、「世界で環境に優しいイノベーションを進める」ミッションがあると述べた。利益追求だけでない、総合的なビジョンがある経営者がいることが、真のシリコンバレーの強みだろう。

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投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。