“完全食”の麺・パンをD2Cで提供するベースフードが4億円を資金調達

“完全栄養食”のパスタやパンを開発し、サブスク型で販売する食品スタートアップのベースフードは5月27日、総額約4億円の資金調達実施を発表した。

主食なのに糖質・カロリーオフの“完全食”

ベースフードは2016年4月の創業。「主食をイノベーションして、健康をあたりまえに」をミッションに掲げ、手軽においしく、体にいい主食の開発・販売を手がける、フードテック領域のスタートアップだ。現在提供しているのは、1食で1日に必要な栄養素の3分の1が摂れる“完全食”の主食2種類を中心とした商品である。

2017年2月に販売開始した「BASE PASTA(ベースパスタ)」は、全粒粉の小麦やチアシードなど10種類以上の栄養豊富な食材が練り込まれた生麺だ。ゆでて、パスタソースをあえるだけで、糖質や脂質、ナトリウムは抑えつつ、簡単にバランスよく栄養が摂れる。2018年12月には改良版へリニューアル。めんつゆで和風のそばとして、もしくはソースで焼きそば風にして食べるなど、ユーザーによってアレンジもいろいろ考えられているようだ。

また2019年3月に登場した新商品「BASE BREAD(ベースブレッド)」は冷凍パンだ。電子レンジで加熱するだけ、あるいは自然解凍だけでも食べられ、手軽に栄養バランスを補える。こちらも一般的なロールパンと比べると、糖質は50%オフ、脂質は30%オフ、カロリーは20%オフだ。調理の必要がなく簡単に食べられることや、ほかの食べ物に合わせやすいことから、パスタにも増して売れ行き好調とのこと。発売から2週間で2万食を販売したという。

ベースフード代表取締役の橋本舜氏は、「新しくできた商品の方がよりおいしくなっている」と自信を見せる。「栄養バランスのよい主食づくりという点では、製品はできあがっているので、さらにおいしいものを開発することに力を入れている。パスタのバージョンアップもそうだし、ブレッドについてはパン屋さんの味を実現できていると思う」(橋本氏)

BASE PASTA、BASE BREADはいずれも1食あたりの価格は390円(税込)。基本的にはサブスクリプションモデルを前提としているため、定期購入にすると10%オフ、送料割引(BASE PASTAでは送料無料)で購入可能だ。

フードテック×D2C企業として独自製品で世界目指す

資金調達について橋本氏は、「食品メーカーとして売上も立ち、利益も上がっているが、『かんたん、おいしい、からだにいい』をかなえる食品を1000万人といったオーダーで、世界中に広げるために、スピードアップするため」と語る。調達資金は商品やサービスの改善に投資するほか、日本発の完全栄養食をより多くの人に届けるため、海外展開についても推進していく考えだ。

写真中央:ベースフード代表取締役 橋本舜氏

橋本氏は「フードテックは今、投資家にも注目されている」と話す。「米国のフードテック事情を見渡すと、例えばBeyond Meat(植物由来の人工肉メーカー)は、今年5月のIPO後に株価が160%に値上がりしている。景気低迷の中で、プラットフォームビジネスが限界を迎えつつある今、ものづくりに回帰する動きがあるのではないか。そうした中で、付加価値やサステナビリティをうたった食品をつくって売る事業は強いと、VCにも見られている」(橋本氏)

さらに「日本はもともとフードテックの国」と橋本氏は続ける。「味の素、カップラーメン、カロリーメイトなど、いずれも戦後、日本発で出てきた商品で、メーカーはいずれも今、大手企業だ。健康でおいしいものをつくる力が日本には世界のどこよりもある。情報技術と違って、フードテックでは日本はすぐ世界一になれる可能性を持っている」(橋本氏)

その上で橋本氏は「現状では、日本でフードテックのスタートアップとして、独自に飲料などではない食べ物を作っているところは、我々のほかにはない。けれども後続で現れるフードテック企業のためにも、今回ベースフードが4億円という資金を調達したことには意味があると考える」と話す。

また、橋本氏は、ベースフードが自社開発商品を消費者へ直販するD2Cモデルで事業を行っている点も、投資家に評価された部分だと感じている。

「米国ではD2Cモデルのユニコーン企業が5社ぐらいあり、日本でも、これから資金調達を行っていくD2Cスタートアップは増えるだろう。傾向としては店舗で販売していたところへITを導入するという流れの事業が多い中、ベースフードでは、単品でオリジナルの、今までになかったコンセプトの商品を開発してD2Cで販売しているというところがポイントだと考えている」(橋本氏)

今回の資金調達はベースフードにとって、シリーズAラウンドにあたる。第三者割当増資の引受先は楽天(楽天ベンチャーズ)XTech Venturesグローバル・ブレインと個人投資家だ。同社は、2017年10月にもグローバル・ブレインを引受先として1億円を調達している。

新たに株主に加わった楽天について、橋本氏は「当初からECサイトを運営し、グローバルで事業も行う彼らがベースフードについて、かなり早い段階で『絶対に世界的なブランドになる』と言ってくれていた」と明かす。

またXTech Venturesについては、特にテクノロジー系のスタートアップに強いVCということもあり、かつ「共同創業者でジェネラルーパートナーの手嶋浩己氏が、(海外にも進出して上場も果たした)メルカリをユナイテッド時代に見出した人であり、彼が現在D2Cビジネスに注目していることが大きかった」と橋本氏は述べている。

橋本氏は「麺とパンという世界中で食べられている食品を、おいしく、かんたんで体にいい完全食として、どんどん掘り下げて開発し、よりよいものとして広げていく。グローバルでは100兆円規模とも換算される市場で勝負していきたい」と語っていた。

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TechCrunch Japan

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