実物大の3D製品イメージで消費者のショッピング体験を向上させるAvataarが52億円調達

eコマースの顧客の大多数は、購入前に商品を見ておきたいと思っている。かつてAmazon(アマゾン)のような企業が、ファッションや家庭用品のオンライン化に苦労してきたのはそのためだ。サンフランシスコとベンガルールを拠点とするスタートアップがこの問題を解決しようとしており、事業規模拡大のため、このほど新たに資金を調達した。

AIとコンピュータービジョンのスタートアップであるAvataar(アバター)は、現地時間1月7日にシリーズBで4500万ドル(約52億円)を調達したと発表した。このラウンドはTiger Globalがリードし、既存の投資家からSequoia Capital Indiaが参加した。6年の歴史を持つこのスタートアップは、創業者兼最高経営責任者から初期に調達した金額も含め、これまでの資金調達ラウンドで約5550万ドル(約64億円)を調達した。

Avataarは、消費者直販ブランドやeコマースマーケットプレイスが製品を3D表示し、コンシューマージャーニーを形成する支援を行う。企業はAvataarのプラグアンドプレイ技術を自社システムに組み込むことができる。顧客は携帯電話のカメラを使い、リビングルームにいながら、製品の実際の大きさと雰囲気を視覚化することができる。

Avataarの創業者で最高経営責任者のSravanth Aluru(スラバント・アルル)氏はTechCrunchのインタビューで、家具や大型家電などのカテゴリーで上位2社のeコマース・マーケットプレイスを含む数多くの企業と現在提携していると述べた。同氏は、守秘義務契約を理由に、顧客企業名の公表を断った(Samsungや Pepperfryなど、Avataarとの提携を公に認めている企業もある)。

アルル氏はデモで、提携するeコマースマーケットプレイスのアプリから、ソファや机などいくつかの製品を、自分のリビングルームにドラッグ&ドロップし、家の中でバーチャルアイテムの位置を変えずに色やアイテムを変更してみせた。アイテムをインタラクティブにすることもできる。例えば、冷蔵庫をバーチャルで再現すると、ユーザーはドアを開けたり閉めたりすることができる。

ブランドは、Avataarのサービスを利用するために何か大きな変更を加える必要はない。商品画像の解像度が1080p以上であれば、Avataarがバーチャル3D版を作り上げることができるとアルル氏は話す。消費者側でも、近年発売されたiPhoneやAndroidスマートフォンなら、バーチャルオブジェクトの表示やインタラクションをサポートする計算能力とグラフィックパワーを備えている可能性が高いという。

「カメラがホームスクリーンであることを考えると、エンゲージメントの時間を著しく長くとることができます。ブランドの売り上げへのコンバージョンは3.5倍以上になっています」と同氏は語る。同社は、エンゲージメント情報を提携ブランドに提供する。提携ブランドは、顧客によりよいサービスを提供するため、さらにパーソナライズする。

アルル氏は、この技術がもたらす利点を認識し、採用する企業がますます増えてきているという。この傾向は、今後ますます強まることが予想される。

ブランド名は明かさなかったが、いくつかのスマートフォン企業はAvataarの技術を利用してバーチャルローンチを行ったという。「当社は現在、ほとんどのプラットフォームに統合されています。もし、大容量のサービスで3Dを見ているなら、それは我々が提供したものである可能性が高いと思います」と述べた。

Avataarの創業チーム。左からMayank Tiwari(マヤンク・ティワリ)CBO、Sravanth Aluru(スラバント・アルル)CEO、Prashanth Aluru(プラシャント・アルル)取締役、Gaurav Baid(ガウラブ・バイド)CPO(画像クレジット:Avataar)

2025年までに、世界人口の75%近くと、ソーシャルアプリやコミュニケーションアプリを利用するほぼすべての人が、頻繁にARを利用するようになると、Snap(スナップ)はDeloitte(デロイト)と協力した最近のレポートで述べている。同レポートによると、ARを使って買い物をする顧客はすでに1億人を超えているという。

アルル氏は、メタバースが浸透していくなかで、同社は最前線に立つための準備をしており、この分野のいくつかの主要なプレイヤーと関係を持っていると述べた。

「メタバースはすでに存在しています。Avataar.meは、最大手のブランドに規模を創造する能力をもたらし、商売を実現する道を切り開いています。ARやVR環境において非常に有望なアプリケーションです」と、Sequoia IndiaのマネージングディレクターShailesh Lakhani(シャイレーシュ・ラカーニ)氏は声明で述べた。

「スラバント、ガウラブ、マヤンクと一緒に仕事をするのは楽しく、Sequoia Capital Indiaは、彼らのシリーズBラウンドに再びコミットすることをうれしく思います」。

業界の推計によると、デジタルおよびデジタルに影響される市場は、2025年までに18兆ドル(約2090兆円)に拡大し、2Dから3Dへのコマースシフトを推進する基盤としてのプラットフォームに対し、今後10年間で500億ドル(約5兆8000億円)を超える収益化の機会を提供すると予測されている。

「史上初めて、ライブカメラ映像により、消費者の物理的な現実を検知、理解、拡張、操作することができるようになりました。当社の特許取得済みのAI・CV機能はメタバース全体の進化に適用可能ですが、先行して消費者のショッピング体験の再定義に着手しました」とアルル氏は話す。

「このプラットフォームは、自宅のモバイルデバイスやARメガネ・ウェアラブルを通して、あるいは実店舗であっても、デジタル化されたカタログという無限の通路を見て回る消費者のショッピング体験を変革します」。

Tiger GlobalのパートナーであるEvan Feinberg(エバン・ファインバーグ)氏は声明で次のように述べた。「消費者はより良いeコマース体験を求め続けています。Avataarが生み出した革新的な技術は、この需要に応えるための強力なプラグアンドプレイ・ソリューションを顧客に提供しています。デジタル世界が2Dから3Dに移行する中、Avataarとその有能な経営陣は、この急成長市場において好位置につけています」。

画像クレジット:Avataar

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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