宮崎県産の野菜を1時間で都内に届ける「VEGERY」が正式ローンチ、東京・根津にはリアル店舗も

ベジオベジコ代表取締役社長の平林聡一朗氏(左)とVEGEO VEGECO 根津店長の杉本恭佑氏(右)

ベジオベジコ代表取締役社長の平林聡一朗氏(左)とVEGEO VEGECO 根津店長の杉本恭佑氏(右)

TechCrunchの読者であれば、日用品のデリバリーサービスである「Instacart」については聞いたことがあるだろう。ユーザーがオンラインで注文した日用品を、Shopperと呼ばれるクラウドソーサーがスーパーで購入してユーザーのもとにすぐ届けてくれるサービスだ。また2016年には日本でもフードデリバリーサービスの「UberEATS」が上陸した。こちらもUberが集めたクラウドソーサーが、ユーザーの注文した飲食店の料理を自転車やバイクを使って届けてくれるというものだ。

これらのサービスは普段、クラウドソーシングのように余剰リソースを用いた「シェアリングエコノミー」という観点で語られることが多いが、もう1つ重要なのは、注文してすぐにモノを届けてくれるという「オンデマンド」を実現したデリバリーサービスであるということだ。今日はそんなオンデマンドなデリバリーサービスがスタートしたので紹介したい。ベジオベジコは1月13日、野菜を中心とした生鮮食品のデリバリーサービス「VEGERY」の正式サービスを開始した。App Storeより無料で専用アプリをダウンロードできる。

VEGERYは同社が直接契約した農家が生産する宮崎産の野菜を中心とした生鮮食品のデリバリーサービス。ユーザーがアプリ上で野菜を選択し、届けて欲しい時間帯(最短で約1時間)を選択すれば、同社のスタッフがその時間帯に自宅まで野菜を届けてくれるというもの。商品代に加えて390円の送料がかかる。

screen696x696

「VEGERY」のアプリ。グッドパッチがUIを担当した

2016年11月からステルスでサービスを開始。サービスが好調だったことから(ノンプロモーションながら1カ月以内のリピート率が30%。毎週商品を買うユーザーが全体の25%。コンバージョン(ここではアプリを立ち上げて購入する割合を指す)は10%、単価で3000〜4000円という数字が出ているのだそう)本日正式なサービスローンチに至った。

ローンチ時点では約90種類の野菜および加工品を販売する。サービス提供エリアは渋谷区、世田谷区、港区、目黒区の一部のエリア。渋谷に自社の配送のセンターを立ち上げており、約15人のスタッフが、自転車やバイクで配送を行う体制を作った。4月をめどに都内23区をカバーし、Androidアプリもリリースする予定だという。

VEGERYのローンチにあわせて、東京・根津にリアル店舗(超オシャレな八百屋だ)「VEGEO VEGECO 根津」もオープンしている。また、B Dash Ventures、ドーガン・ベータ、宮崎太陽キャピタルからシードマネーを調達したことも明らかにしている。金額は非公開としているが、1億円程度とみられている。

ベジオベジコではこのシードマネーをもとに、都内の配送センターや宮崎での集配体制など物流オペレーションを自前で(ただし宮崎〜東京の配送については運送会社と提携)構築しているという。

ベジオベジコはECサイト構築などを手がけるアラタナと、同社が立ち上がった宮崎県の地元企業との合弁で2011年にスタートした会社(当時の社名は「あらたな村」)だ。代表取締役社長の平林聡一朗氏はアラタナのインターン経験を経て、3年前に代表に就任。VEGERYの前身である宮崎県産野菜の定期購入サービスを開始した。その後アラタナは2015年3月にスタートトゥデイの子会社となったが、そのタイミングで株式の一部をアラタナ代表取締役社長の濵渦伸次氏が個人で譲受。グループから独立して事業を展開してきた。

当初は「スムージー用の宮崎県産野菜」とうたい定期購入サービスを展開していたベジオベジコ。芸能人やモデルなども利用していたそうだが、よりスケール感のあるビジネスを検討した結果がこのVEGERYなのだそう。「日本はコンビニエンスストアもどこにでもあって便利だが、いざ東京で新鮮な野菜を買うのはなかなか難しい。宅配サービスもあるが時間がかかるし、欲しい野菜だけ買えない。Instacart的に『欲しいモノだけ1時間で届く』というサービスができないか考えていた」(平林氏)

ビジネスのスケールを考慮し、物流まわりのオペレーションも自前で整えた。実はデリバリーサービスの多くは、利益を出すのが非常に難しいという。原価率3割程度のピザの宅配ならまだしも、原価率6割、7割のネットスーパーでマネタイズしようとすると厳しくなる。スタートアップとしては大きな投資が必要となるが、将来的なスケールやコストを考慮し、自前で物流サービスを構築するというのが最良だと判断したという。

また、根津にオープンしたリアル店舗も今日から営業中だ。インテリアデザイン監修をワンダーウォールの片山正通氏、ロゴ等のキービジュアルをアートディレクターの平林奈緒美氏が担当した。リアル店舗はブランディングの意味合いも強いようだが、今後は店舗を拠点に配達エリアを拡大することなども検討しているという。

海外を見れば「Amazon Fresh」のような生鮮食品の即時デリバリーサービスも登場しているが、VEGERYではまず野菜の種類を拡充し、その後食肉など取り扱い領域を拡大していく予定だという。ベジオベジコでは当面の目標として月商1億円という数字を掲げている。

VEGEO VEGECO 根津の店内に並ぶ野菜

VEGEO VEGECO 根津の店内に並ぶ野菜

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。