家具サブスクの「airRoom」が約1億円を資金調達しパーソナライズを強化、C2C展開も視野に

写真中央がElaly代表取締役の大薮雅徳氏

家具やインテリアのサブスクリプションサービス「airRoom(エアールーム)」運営のElalyは7月24日、オークファン、F Ventures 2号投資事業有限責任組合、名古屋テレビ・ベンチャーズ、コロプラネクスト 3号ファンド投資事業組合、Japan Angel Fund 1号投資事業組合、そして複数の個人投資家を引受先とした第三者割当増資により、総額約1億円の資金調達を実施したと発表。同社は2018年10月にも数千万円規模とみられる資金調達を発表している。

個人投資家には元メルカリ執行役員CTOの柄沢聡太郎氏、ラクサス・テクノロジーズ代表取締役社長の児玉昇司氏、Smartly.ioのSales Director(Japan)坂本達夫氏、そしてベクトル代表取締役社長の西江肇司氏が含まれる。

2018年10月にローンチしたairRoomは人気ブランドの家具を月額500円から利用できるサブスクリプションサービスだ。東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県と大阪府で利用可能なこのサービスでは、1万点以上におよぶ家具のラインナップを用意している。プロのインテリアコーディネーターによるコーディネート提案や配送料、返却料、組立、設置が無料となっており、「安心保証」付きのため、傷をつけても心配する必要はない。また、2018年12月には、物置きのシェアリングサービス「モノオク」との連携により、家具の一時預かりサービス「airRoomトランク」の提供を開始した。パッケージ商品のサブスクリプションも2018年11月に開始されている。

TechCrunch Japanでは、2018年5月設立のElalyで代表取締役を務める大薮雅徳氏に今回の資金調達とairRoomの今後の展開について話を聞いた。

家具サブスクのリーディングカンパニーを目指すための株主構成

大藪氏は、「今後、家具サブスクの2Cの市場を作り上げていく上で、まずは僕らがそこのリーディングカンパニーであるというところを市場に対して示していく必要がある。そのためには、上場がやはりかかせない。そして上場を成し遂げていくためには大規模資金は必要ではあるが、一方で得た資金で最大限のレバレッジを効かせていかなければならない。そのためには、そこに対する知見を持っているメンバーを入れる必要があった」と話す。

今回の調達ではモノのサブスクに知見のあるメンバーを株主として迎えた。児玉氏は月額制でブランドバッグが使い放題の「Laxus(ラクサス)」運営の代表取締役社長、Smartly.ioの坂本氏はカメラ、家電、ガジェットのレンタルサービス「Rentio(レンティオ)」に投資しており、コロプラネクストはLaxusの株主。加えて、既存株主のサムライインキュベートは定額制ファッションレンタルの「airCloset(エアークローゼット)」に出資している。

大藪氏は、これにより「国内におけるそれぞれのドメインにおいての第一線を走っているスタートアップの知見が手に入る」と述べた。

今後の全国展開を見据え、愛知県は名古屋テレビ・ベンチャーズ、九州は福岡が拠点のF Venturesに協力を仰ぐ。また、airRoomは当初より家具に留まらず、コマース領域を全方位的に包括していくことを考えているため、その面ではメルカリ元CTO柄沢氏の知見を活かす。

そして、家具のサブスク市場の構造が「クラウドワークスとランサーズの状況に類似している」ため、上場を目指すと言う意味でもクラウドワークスCOOの成田修造氏を株主として迎えた。

今後はパーソナライズを強化、C2C展開も視野に

今回調達した資金をもとに、Elalyは体制を強化、商品ラインナップを拡充し、人工知能やARなどのテクノロジーを利用したソリューション開発への投資や人材採用を行う予定だ。同社は顧客への家具のコーディネートの提案をウェブで展開中だが、ElalyではairRoomのアプリを開発し「部屋の写真をパシャっと1枚撮り『このような生活をしたい』と説明するだけで家具のコーディネートを提案されるというところを目指していく」(大藪氏)

airRoomはローンチしてから約半年。「解約率が見るからに減っている」そうだ。大藪氏いわく、その要因はコーディネート提案。家具の稼働率は現在90パーセントを超えており、「ほぼ在庫がない状況で、返却もわずか」なのだという。今後は強みである「パーソナライズ」をさらに強化していく予定だ。そのため、「顧客データは勿論のこと、加えて商品データと不動産データ、この3つのデータを取っていく」と大藪氏は説明。

「従来の家具メーカーが持っている顧客データは、性別や年齢、住んでいる場所など、本当に一般的なデータのみ。だが、適切にパーソナライズしようとするのであれば、そのデータだけでは不十分だ。例えば、ペットを飼う人と飼わない人では選ぶ家具には差がある。より洗練されたパーソナライズには顧客データだけでは足りていない」(大藪氏)

商品データに関して、大藪氏はairRoomでは「ID管理を11つの商品ごとに行なっている」と述べた。これにより、「どのようなユーザーに貸したらどの程度の傷などが付いた上で返却されるのかがわかる」(大藪氏)

不動産データは、部屋の間取りやデザインなどのデータだ。「例えば、床が白い部屋に住んでいる人と床が一般的な茶色なのとではやはり選ぶ家具は違う」(大藪氏)

大藪氏は、「顧客データ、商品データ、不動産データの3つの掛け合わせが重要」と説明した上で、「これを前提としてデータを取っていき、パーソナライズの精度を上げていくというのが短期的に目指しているところだ」と話した。

airRoomでは現在、比較的リーズナブルな値段の家具を揃えているが、ラインナップを増やしていく上で、「50万円、60万円の家具」も借りられるようにしていく。

「そうなった時に、貸し借りのトランザクションを通じて溜まる与信データをどんどん溜めていきたいと考えている。これによって、例えば、『この人は安定的に使ってくれる』、『綺麗な状態で返してくれる』、というのがわかれば、使える家具の値段の幅がもう少し上がる、というところをやっていきたい。サブスクは主にB2Cだが、airRoomでは徐々にC2C化していくことを検討している」(大藪氏)

投稿者:

TechCrunch Japan

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