家庭の冷暖房に特化した垂直型SaaSのServiceTitanは年間定額収益270億円、評価額9000億円以上に

家庭の冷暖房に特化した垂直型Software as a Serviceツールキットを開発することで、83億ドル(約9090億円)の価値が生まれるとは誰が想像できただろうか?

これは、わずか8年前に設立されたロサンゼルスを拠点とするスタートアップ企業であるServiceTitan(サービスタイタン)の現在の価値を表している。銀行関係者によると、住宅建設やエネルギー効率化などの大きな追い風が同社の収益を押し上げ、垂直型ソフトウェア企業としては前例のない評価額になっているとのことだ。

ServiceTitanの巨額の資金は、Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)のGlobal Equities(グローバル・エクイティ)ファンドと、Tiger Global Management.(タイガー・グローバル・マネジメント)が主導する5億ドル(約550億円)の資金調達ラウンドで得たものだ。

ServiceTitanの出資者は、Battery Ventures(バッテリー・ベンチャーズ)、Bessemer Venture Partners(ベッセマー・ベンチャーズ・パートナーズ)、Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)といった長年の投資家に加え、T. Rowe Price(ティー・ロウ・プライス)、Dragoneer Investment Group(ドラゴニア・インベストメント・グループ)、ICONIQ Growth(アイコニック・グロース)といった後期ステージからの投資ファンドなど、ベンチャー業界のさまざまな顔ぶれが並ぶ。

同社は今回の5億ドルの資金調達により、市場環境が整えば、2021年後半から2022年末までに株式を公開することが可能になるだろう。

ServiceTitanは現在、7500社以上の顧客が10万人以上の技術者を雇用し、配管工事、空調工事、電気工事、煙突工事、害虫駆除、芝生の手入れなど、200億ドル(約2兆2000億円)相当のサービスを提供している。

Angi(アンジ)やThumbtack(サムタック)が、住宅所有者がサービスや技術者を探しに行くところなら、ServiceTitanは、それらの技術者が自分のビジネスを管理したり組織化したりするところだ。

カリフォルニア州グレンデールを拠点とし、アトランタとアルメニアにサテライトオフィスを持つServiceTitanは、HVAC(冷暖房空調)事業に従事していた両親を持つ共同創業者たちが、身近に感じていた問題を解決するために立ち上げた事業だ。

ホームサービス市場は、米国で500万人以上が働く1兆ドル(約110兆円)規模の世界市場となっている。

グローバルな展開という言葉は魅力的に響くものの、ServiceTitanにとって米国だけでも成長する余地は十分にある。

米国では、リモートワークの増加や新型コロナウイルス流行の影響を受けた大都市からの人口流出により、住宅所有率が10年ぶりの高水準に達しているからだ。

エネルギー効率を重視し、温室効果ガスの排出量を削減しようとする動きは、住宅や商業施設の改修を急増させ、それが新たなビジネスを後押しすることにもなるだろう。実際にこのような傾向は、2020年に経済全体が3.5%縮小したにもかかわらず、ホームセンターへの支出は3%増加したという統計にも表れている。

「私たちは、水道、暖房、空調、電力といった生命維持システムを保持するために、これらの専門業者の人々に依存しています」と、ServiceTitanの共同設立者でCEOを務めるAra Mahdessian(アラ・マフデシアン)氏は語る。「今日、住宅所有率と在宅時間がともに過去最高を記録する中、これらの必要不可欠なサービス提供者は、ますます増加している現代テクノロジーに精通した住宅所有者からの需要の高まりに直面しています。ServiceTitanは、これらの業者の方々に、すばらしい顧客体験の実現とビジネスを容易に成長させるために必要なツールを提供することで、勤勉なこの業界の人々が、相応の成功レベルに到達することを可能にします」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:ServiceTitanSaaS住宅

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

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