家庭用性感染症検査キットを提供しSTI検査の敷居を下げる米TBD Health

性に関する健康問題は以前ほどタブーではないが、だからといって、STI(Sexual Transmitted Infection、性感染症)の検査における問題がすべて解決したというわけではない。TBD Health(TBDヘルス)は「Vagina-Haver(女性器所有者)」のために、自宅で検査ができるようにするという新しいアプローチをとっている。同社は、自宅で5種の検査ができる「Check Yourself Out(チェック・ユアセルフ・アウト)」キットを提供しているが、最近、ラスベガスに対面式のクリニックを開設した。なぜ家庭でできる性のヘルスケアサービスが求められているのか、共同設立者の2人に話を聞いた。

米国疾病予防管理センター(CDC)によると、米国のSTI感染率はここ数年上昇を続けており、2021年に報告されたデータでは6年連続で過去最高を記録している。米国では5人に1人がSTIに罹患しており、そのうち半数は15~24歳の若者で、直接的な医療費として160億ドル(約1兆8200億円)がかかっている。あえていうなら、TBDは縮小するはずの市場を狙っているのだが、そうではない。

「当社は、検診にかかることが重要であることに気づいた。現在、検診を受ける人は以前よりも少なくなっている。これは新型コロナウイルス感染症の影響もあるが、人々は病院に行きたがらないし、連邦政府の多くの資金援助が問題をより複雑にしている。当社は、家庭用キットから始めて、人々の日常生活で実際に有効なSTI検査を提供するために設立された。他の医療関連企業とはまったく異なるアプローチをとったので、臨床的とは感じないし、賭けに出ているとも感じていない。本当に受診者の身になって行うような検診をしたいと考えていた。そして、2022年の初めに、6つの州で試験的にクリニックを開設した」とTBD Healthの共同設立者であるStephanie Estey(ステファニー・エスティ)氏は語る。

TBD Healthの家庭用検査サービスは、ワシントン州、アリゾナ州、ネバダ州、マサチューセッツ州、フロリダ州、コネチカット州で提供されており、さらに多くの州への展開を計画しているが、全50州をカバーするには規制上の課題がある。

「もし陽性と診断された場合、当社でほとんどすべての治療を行うことができる。当社の臨床医は、罹患者の個別のケアプランについて話し合うための時間を設ける。それは『ここに一般的なケアプランがあるので、かかりつけの病院に相談してください』というような無責任なものではない。例えば、抗生物質が必要な感染症の大半は、当社が処方箋を発行して治療を行うことができる」とエスティ氏は説明する。もちろん、臨床医を必要とするということは、その臨床医らが活動するすべての州に拠点が必要だということでもある。「当社は各州に医療チームを置いており、臨床医がすべての結果を確認し、検査機関の依頼に署名し、結果を分析したり、処方を行ったりする。現在は6つの州で展開しているが、2022年には急ピッチで拡大していく予定だ」と同氏はいう。

同社は、通常の医師が検査できるのと同じSTIをすべて検査できるとしているが、検体の採取には自己採取のプロトコルを採用している。自分で採取するものには、膣スワブ、尿サンプル、血液サンプルがある。特に血液サンプルについては、静脈穿刺を自分で行うのかと興味をそそられたが、指先から採血カードに少量の血液を落とすタイプのもので、それを医療チームが分析し、治療が必要かどうか判断できるとのことだ。

「当社では、乾燥血液スポットカードと呼ばれるものを使用している。これは基本的に、いくつかの円が描かれた紙であり、指にランセットを刺して血液を垂らして使う。糖尿病患者が日常的に行っている検査と同じものだ。このカードによって、HIVや梅毒など、血液を用いた主なSTIの検査はすべて行うことができる。実際これは、すばらしいツールだ。乳児の採血をするのは難しいため、乳児の検査を目的として開発されたものだと思う。また、輸送中も安定しているので、自宅での検査に適している」とエスティ氏は説明する。

ラスベガスにオープンしたTBD Healthの対面式クリニック。壁には家庭用検査ボックスが飾られている(画像クレジット:TBD Health)

TBD Healthは、従来のSTI検査プロトコルの精度を維持しているという。

「検査機関での検査には、感度と特異度という2つの主要な精度指標がある。その確認のため、当社は多くの検査機関を精査した。当社のパートナー検査機関の感度と特異度は基準を満たしており、これは必要な精度を確保していることを意味している。また、自宅でプライバシーを守りながら検査ができる」とエスティ氏は述べる。そして「遠隔医療により、当社の臨床ケアチームのサポートを受けることもできる」と同氏は付け加える。

TBDは、対面式のケアも行うために、ラスベガスにケアハブを開設した。これは、顧客のニーズをより深く把握できる環境を整え、そこから得た知見を他の事業のサービス向上につなげることを目的としている。

今のところ、同社は女性器所有者に焦点を当てている。それは、STIの問題だけでなく、不妊症の問題にも取り組んでいるためであり、可能な限り最高のサービスを提供するため、同社は対象を絞ることにした。

「当社は今、女性と女性器所有者のためのサービスに集中している。男性器所有者へのサービスが当社のロードマップのどこに位置するのかは、まだいえない。男性器所有者は、伝染の面で大きな要因となっていることは確かだ。しかし、女性にとっては、コストや不名誉だけでなく、多くの場合、生殖機能の問題でもある。STIは、米国における不妊症の原因のうち、予防可能なものの1番目に挙げられている」とエスティ氏は説明し、そして次のように続けた。「当社が重点分野を拡大する場合、そうした人々に適切なサービスを提供できる体制を整えたいと考えている。企業が間違ったことをする例は数多くある。女性のために何かを作ることは、ピンク色にすればいいというようなことではない。TBDは、女性器所有者をよく理解していて、どうすれば最適なサービスを提供できるかわかっている。だからこのサービスに深く関わることに興奮を覚えるのだと思う。当社が男性器所有者にサービスを提供する時には、女性器所有者に対して行ってきたことと同様に、思慮深く、真剣に、公正を保ちたいと考えている」。

画像クレジット:TBD Health

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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