家賃支払いを代行、借り手に支払いの柔軟性をもたらすJettyが約25億円調達

家賃を支払う際に賃借人に柔軟性を与えることを目的としたフィンテック企業であるJetty(ジェッティー)は、Citi(シティ)とFlourish Ventures(フローリッシュ・ベンチャーズ)が共同で行う資金調達ラウンドで2300万ドル(約25億3700万円)を調達した。

今回の資金調達により、Jettyの2016年の創業以来の調達額は7800万ドル(約86億500万円)となった。今回の成長ラウンドに参加した他の投資家には、Credit Ease(クレジット・イーズ)とK5が含まれる。これまでの支援者には、Farmers Insurance Group(ファーマーズ・インシュアランス・グループ)、Khosla(コスラ)、Ribbit Capital(リビット・キャピタル)などがいる。

ニューヨークを拠点とする従業員100名のこのスタートアップは、消費者がオンラインや店頭で利用する機会が増えている「今買って、後で払う」(BNPL)モデルに似たサービスを提供することで、賃借人が家賃を滞納しないようにする方法を考え出した。

簡単にいうと、借り手は家賃の支払い期限が来たら家賃を支払うことができ、その月の24日までに、一括または分割でJettyに借りたお金を返すことができるというものだ。その際、金利や遅延金は発生せず、借り手のリスクプロファイルに応じて15〜25ドル(約1650〜2750円)の月額利用料を支払うことになる。借り手が決められた期間内に返済できなかった場合、翌月の借り増しはできない仕組みになっている。

この月額料金は、家賃が期限内に支払われなかった場合に発生する可能性のある遅延金よりも「はるかに低い」と、共同創業者兼CEOのMike Rudoy(マイク・ルドイ)氏は語っている。

「平均的な賃借人の給料の約50%は家賃に充てられています。つまり、家賃は賃借人にとって最大の支出なのです。だからこそ、ペナルティを受けないように、期日までにお金を用意できるような柔軟性を提供する、何らかの金融サービス商品があると期待されているのです」と彼はいう。

この商品は、実際のBNPLというよりも、従来のBNPLの従兄弟のようなものだと彼は語っている。

ルドイ氏は「当社が賃借人に代わって月初に家賃を全額支払うことで、不動産管理者は必要なときに必要な資金を得ることができます。賃借人は24日間、自分のニーズに合ったスケジュールで返済することができます」と説明してくれた。

Jetty Rentを立ち上げるために、同社は大手不動産投資・開発・管理会社であるCortland(コートランド)と提携し、複数の物件の居住者を対象にベータ版を提供してきた。

そして今回、一般向けに提供を開始したということだ。Jetty Rentは、同社のプラットフォームの中で最も新しい製品で「低コスト」の賃借人保険や敷金返還サービスも提供している。

「この会社のミッションは、賃貸住宅をより手頃で柔軟なものにすることです。また、当社は金融サービスのプラットフォームであり、当社が提供するすべての製品は、不動産管理者と賃借人の両方に価値を提供することを目的としています」とルドイ氏はいう。

Jettyは、今回の動きにより、Insurtech(インシュアテック)から金賃業者へと進化しているとルドイ氏はいう。同社は、Cross River Bank(クロス・リバー銀行)を通じてローンを提供している。

ルドイ氏はTechCrunchに対し「Jettyはこれまでインシュアテック企業と考えられてきましたが、私たちはこのビジネスにさらなる信用力と融資力をもたらすために取り組んでいます」と述べている。

ルドイ氏によると、同社が3つの商品すべてを不動産管理会社に提供していることが、同社の競争力の源泉になっているという。

「これは、同じ空間や問題をターゲットにしている他の金融サービス企業とは異なるものです。敷金の代替商品とフレキシブルな家賃商品の両方を同じ屋根の下に持っているのは、当社だけです。そのため、不動産管理者にとっては、統合や導入の観点からも当社を選択することが非常に容易になります。またそれは、賃借人にとっては、複数の異なるサービスを目にしなくてすむということでもあります」と彼はTechCrunchに語っている。

賃借人はすべての製品の代金を支払い、物件管理者は製品の展開におけるパートナーとなる。

現在、同社は全国で220万戸以上の賃貸住宅を運営する不動産オーナーや管理者と契約している。同社のマーケティング担当副社長のAlex Vlasto(アレックス・ブラスト)氏によると、2017年に不動産パートナーネットワークの構築を開始して以来、Jettyは契約戸数が前年比で平均193%の伸びを示しているという。Cortlandの他にも、AMLI Residential(AMLIレジデンシャル)などとも提携している。

Flourish VenturesのマネージングパートナーであるEmmalyn Shaw(エマリン・ショウ)氏は、米国人の70%以上がその日暮らしな生活をしていると指摘している。

「安定した住宅は、彼らが経済的な安定を得るための重要な要素です」と彼女はいう。

ショー氏は「単一のソリューションに留まらず、賃貸保険や敷金の代替、さらには家賃の柔軟性など、豊富で差別化された金融サービスを提供しているのはJettyだけです」と付け加えた。

「独自の消費者インサイト、差別化された価格設定、消費者のロイヤルティ向上により、Jettyは大きな競争優位性を獲得しています。さらに、Cortlandのような一流の不動産管理会社を通じた消費者へのアプローチは、他に類を見ないものです」とショー氏はメールで述べている。

最近になって、賃借人の生活を楽にするための新しい技術を考え出した他のスタートアップも資金を調達している。アパートを「インタラクティブなコミュニティ」に変えることを目指しているスタートアップSugar(シュガー)は、最近250万ドル(約2億7500万円)のシード資金を調達した。また、自動物件検査プラットフォームを構築しているスタートアップのRentCheck(レントチェック)も、先日260万ドル(約2億8600万円)のシードマネーを調達した。

画像クレジット:Indysystem / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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