家電の“お試しレンタル”で拡大、1500種類のモノをレンタルできる「Rentio」が10億円調達

カメラ・家電のレンタルサービス「Rentio」を手がけるレンティオは2月25日、複数の投資家からのエクイティ出資と、りそな銀行などからのデットファイナンスを合わせて総額で10億円を調達したことを明らかにした。

レンティオにとって4度目となる今回の資金調達ではグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)、W ventures、SMBCベンチャーキャピタル、コンビの4社が投資家として参画。GCPとW venturesに関しては前回からの追加投資となり、そのほかANRI、有安伸宏氏、East Ventures、メルカリ、アドウェイズが既存投資家に名を連ねる。

レンティオでは調達した資金を活用して人材採用を強化するほか、在庫の拡充やマーケティングへの投資、物流面のアップグレードを進めていく計画だ。

イベント時の短期レンタルから家電のお試しまで幅広い用途に対応

Rentioはカメラや家電など1500種類以上のモノを扱うレンタルプラットフォームだ。

一口にモノのレンタルと言っても用途は幅広い。Rentioには3泊4日からモノを借りられる短期のレンタルに加えて、月額制の長期レンタル、一定期間使用し続けると商品が手に入る「もらえるレンタル」、追加料金を支払うことで短期レンタルした商品を購入できる「そのまま購入」など複数の選択肢が用意されている。

旅行や運動会など特別な日に一眼レフを借りたい時、もしくは高価な家電を購入する前に“お試しレンタル”したい時には短期のレンタルがもってこい。使ってみた結果、実際に欲しいと思ったらそのまま購入してもOKだ。

家電のお試しレンタルという観点では、一部の商品はもらえるレンタルにも対応する。これは気になる家電を実際に数ヶ月間使ってみてから、その商品を返すか、もらうかを選択できるサービス。たとえばロボット掃除機のルンバの場合、最低3ヶ月使えばいつでも返品ができ、12ヶ月間使い続ければ商品が手に入る。昨年12月からは大物家電(LG styler)の提供も始めた。

家電の分割払いに近しいが、使ってみて気に入らなければ返却できるのが最大のポイント。そのためレンティオ代表取締役の三輪謙二朗氏は「途中で返せる(やめれる)分割払い」という表現もしていた。

また「ベビーカーを1年間だけ使いたい」など中長期に渡って使い続けたいモノの場合は月額プランとの相性が良い。たとえばベビーカーにおいては月額3000円で複数の商品を乗り換えられるサブスク型のサービスも提供。子どもの成長に合わせて適切なベビーカーを使い分けることができる。

2015年のサービスローンチ時は短期レンタルのみだったが、商品を拡充するとともにレンタルの選択肢を広げながらサービスを拡大してきた。現在Rentioではカメラや家電を中心に1500種類以上、約2万点の在庫を保有し、累計の注文件数は20万件を突破。月商は1億円を超え、毎月1万3000〜4000件の商品を貸し出すほどの規模に成長している。

「買う前に1回試したい」ニーズを掴み成長

面白いのが「家電メーカーとの関係性の変化」だ。メーカーの視点だとレンタルをすることで購入者の数が減ってしまう恐れもあり、三輪氏の話でもサービス開始当初はそのような反応が多かったそうだ。ただ共同で取り組みを進めていく中で「レンタルやサブスクが最終的にはメーカーのプラスになり、同じ方向を向いてやっていけることが実証できてきた」という。

たとえばある家電メーカーのイヤホンの例を紹介しよう。家電製品を買うか検討した後、実際に購入に至るのはごく一部の消費者にすぎない。このスピーカーの場合はCVRにするとだいたい3%ほど、100人のうち3人が実際に購入するようなイメージだ。

そこで残りの97%に対してメルマガなどで「レンタル」の選択肢を提示してみたところ、約30%がレンタルを体験。さらにそのうちの30%が商品を買ってくれたという。

「商材によっても違いはあるが、レンタルは購入の邪魔をするものではなく、購入のチャンスを広げてくれる存在だということを示せてきている。ユーザーにとっても『買う前に1回試しに使ってみたい』というニーズは強い。Rentio上でも購入検討時のお試しレンタルの割合がどんどん増えていて、実際に試して納得した上で商品を買うという消費行動が広がりつつある」(三輪氏)

特に高単価で付加価値の高い製品や、使ってみないと何とも言えない製品の場合はお試しニーズが強い。以前TechCrunchでも紹介したルンバのサブスク(返せる分割払いタイプ)もまさにその一例だ。ルンバの場合は家具やレイアウトによっても使い勝手が変わってくるので、自宅で使ってみて初めてわかることも多いだろう。

それだけにいきなり数万円を払って一か八か購入するというのは「ハードルが高い」と感じる人もいるはずで、「合わなければ返せる」という選択肢の存在は大きい。それがきっかけとなり、これまでルンバの購入経験がないユーザーにもアプローチできているそう。ヒアリングの結果ではほとんどのユーザーがそのまま使い続けたい(購入したい)と答えたという。

レンティオでは特にここ1年ほどメーカーと連携しながら「試してから買う」選択肢を広げている。もらえるレンタルに加え、昨年9月にはそのまま購入をスタート。レンタル後にそのまま購入する割合は今のところ平均で数%だが、商品によっては10〜15%に及ぶものも出てきた。

並行して十数のメーカーとはレベニューシェアモデルの取り組みも実施。購入されにくいタイプの商品であっても、レンタルされるごとにメーカーに収益が分配されるモデルも作っている。

強固なオペレーション武器にさらなる事業拡大へ

レンティオは2015年4月の創業。楽天出身の三輪氏が、EC事業を展開するベンチャー企業を経て立ち上げた。

ちなみにレンタル事業を選んだきっかけの1つは、三輪氏が友人の結婚式でお笑い芸人のたむらけんじさんのモノマネをするために「獅子舞とサングラスとふんどしをレンタルした」こと。1回しか使わないため購入ではなくレンタルを選んだが、同じように特別な機会のためにモノをレンタルしたいという需要はあるのではないかとRentioを始めたそうだ。

レンティオ代表取締役の三輪謙二朗氏。同社のオフィスは物流倉庫も兼ねていて、Rentioで扱う商品も多くがここに保管されている

当初は一時的なモノの需要にフォーカスした3泊4日の短期レンタルサービスとしてスタート。2015年10月にANRIから出資を受けて以降、複数回の調達を実施しながら着々とサービスを磨いてきた。

現在メーカーと連携した新たな取り組みに次々とチャレンジできるのも、当初から行ってきた短期レンタルで安定的な基盤を築けているからこそ。それを支えるのが裏側の強固なオペレーションだ。

レンティオでは商品管理システムを自社で開発し、各在庫ごとに「いつ、どのようにレンタルされてきたのか」「これまでにいくら利益を生み出してきたのか」を全て細かく把握できる仕組みを構築。たとえば旧型のモデルなどでも値段を変えたり、サイト内での露出の仕方を調整することで不稼働在庫を減らす工夫を重ねてきた。その結果として現在でも月間の在庫回転率は90%を維持している。

「自分たちにとっての在庫回転率はホテルの空室率と同じでとても重要な指標。眠っている資産をいかに減らせるかを常に考えている。単品管理ができているから、商品が足りなくなった段階で仕入れをするので仕入れの無駄も減らせる。数値を見ながら値段や露出場所を工夫していくことで、商品によっては古いモデルでも新型のモデルと同じくらい借りてもらえている」(三輪氏)

レンタルサービスにおいては在庫回転率と同様に盗難率も1つのポイントになってくるが、こちらも社内の独自DBや自動判別の仕組みを用いて1%以下に抑えることができているという。

今後レンティオではこの基盤を軸として、さらなる事業拡大を目指していく計画。冒頭でも触れた通り組織体制の強化を進めるほか、商品の拡充や物流面・マーケティング面にも投資をする。

「今まではモノを使いたいと思った時、『利用するために所有する』か『我慢する』か2つの選択肢しかなかった。レンティオとしてはその間の選択肢となるようなサービスを提供していくことが目標。その1つとして『試して買う』ことが当たり前になれば、本当に良い商品だけが売れるようになり、結果として良い製品を作っているメーカーがしっかり評価されることにも繋がる。そういった世界観を広げていきたい」(三輪氏)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。