対面式サービス業にBNPL式後払いを導入するWisetackが約49億円調達

「Buy Now, Pay Later(BNPL、今買って後払い)」方式は、アフリカ、ラテンアメリカ、アジアなど、世界各地でさまざまな企業が展開し、グローバルに成長している。

米国では、Affirm(アファーム)とKlarna(クラーナ)が大きなプレイヤーであり、Square(スクエア)は最近Afterpay(アフターペイ)の買収を発表した。

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従来のBNPLは、消費者がオンラインや店頭で分割払いをする機会を提供するものだった。しかし、国内でも、分割払いの機能は、eコマースや小売業界以外にも広がっている。

Wisetack(ワイズタック)は、このBNPLサービスを対面式のサービスに導入するスタートアップだ。Wisetackは、Insight Partners(インサイト・パートナーズ)が率いるシリーズB資金調達ラウンドで4500万ドル(約49億3900万円)を調達した。

この資金調達には、既存の支援者であるGreylock Partners(グレイロック・パートナーズ)とBain Capital Ventures(ベイン・キャピタル・ベンチャーズ)も参加し、2018年の創業以来、同社の調達総額は6400万ドル(約70億2500万円)に達した。今回のラウンドは、WisetackがシードラウンドとシリーズAラウンドで1900万ドル(約20億8500万円)を調達したと発表してからわずか6ヵ月半後のことで、いずれもGreylockが主導したものだ。

サンフランシスコを拠点とするこのスタートアップは、ひと言でいえば、対面式のビジネスが消費者に融資を提供するのを支援している。共同設立者でCEOのBobby Tzekin(ボビー・ツェキン)氏によると、Wisetackは、企業がすでに構築して業務に利用しているソフトウェア・プラットフォームに、実際に融資の選択肢を組み込んでいる点で、他社にはないサービスだという。

その対象は、HVAC(冷暖房空調設備)や配管工など、サービスを提供する企業だ。例えば、エアコンが故障して交換に数千ドル(数十万円)かかる場合でも、業者がWistackのAPIをサイトに組み込んでいれば、消費者は分割払いのオプションを利用することができる。

これまでWisetackは、Housecall Pro(ハウスコール・プロ)やJobber(ジョバー)などの垂直型SaaSビジネスと提携することで急成長を遂げてきた。これらの企業は、それぞれの顧客に融資を提供しており、その中には何万人ものホームサービスのプロが含まれている。

Wisetackは、明らかにギャップを埋めているように見える。2021年の時点で、2020年と比較して売上高と融資額が「10倍以上」に成長している。そして、ツェキン氏によれば、何千もの加盟店と提携しているという。

同氏は「明らかに大きなニーズがある」と感じたため、2018年に仕事を辞めてWisetackを立ち上げ、Liz O’Donnell(リズ・オドネル)氏とMykola Klymenko(ミコラ・クライメンコ、Varo Bankの持ち株会社であるVaroMoneyの共同設立者兼CTOだった)氏とチームを組んだ。

Wisetackは、新たな資本を得て、自動車修理、選択的医療、歯科、獣医、法律サービスなど、サービスをベースとした他の分野にも進出する予定だ。また、今後1年間で現在40名のチームを倍増させる予定もある。

ツェキン氏は、この機会は非常に大きいと考えている。

サービス業の多くは中小企業であり、これまでは大手eコマース企業に比べてサービスを提供するのが困難だった。ハーバード大学のレポートによると、米国人は住宅のリフォームや修理だけで、年間4000億ドル(約43兆9100億円)以上を費やしている。また、米国の自動車修理・メンテナンスサービス市場は、2020年の2,010億ドル(約22兆650億円)から、2026年には2,500億ドル(約27兆4400億円)に達すると予測されている。

また、ツェキン氏によると、BNPLのオンライン取引の平均は数百ドル(数万円)だが、サービスを提供する企業への購入は平均で4000〜5000ドル(約43万9000〜54万8000円)近くになるそうだ。

ツェキン氏は、クレジットカードで購入するよりも「今買って、後で払う」方が魅力的だと考えている。1つは、消費者が3カ月から60カ月までの分割払いを選択できることだ。

「時間をかけて費用を分散することができるため、お金を出してより高品質な機器を購入することできるようになることが多いのです」と同氏は語る。

また、クレジットカードで支払う場合は、金利や返済期間によって金額が変わることがある一方、この方式だと購入の時点で長期的な支払い金額がはっきりしていると、ツェキン氏は付け加えた。

同社は、加盟店には処理手数料を、消費者には金利を課すことで収益を上げている。金利は0%から29%まで「信用度の高さ」によって変わると同氏はいう。

「しかし、クレジットカードは複利で請求されるのに対し、我々は単利で請求します」と付け加えた。

Insight Partners(インサイト・パートナーズ)のプリンシパルであるRebecca Liu-Doyle(レベッカ・リュー・ドイル)氏は、Wisetackを「業界の中でも際立った存在」と評している。

「Wisetackは、eコマースよりも複雑でサービスが行き届いていないようなユースケースに対応することを目的に構築され、組み込み型BNPLという点で差別化されたプラットフォームを持っている」とメールで語っている。

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Akihito Mizukoshi)

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TechCrunch Japan

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