寿命を延ばす研究に役立つオープンリサーチリソースを立ち上げるLongevicaが約2.8億円調達

ライフサイエンス企業であるLongevica(ロンジェビカ)は現地時間11月24日、オープンリサーチツールを立ち上げると発表した。医薬品試験を行う科学者や研究機関が、1000以上の薬理学的化合物の効果を追跡するデータセットにアクセスできるようにする。

これは、バイオテクノロジー企業である同社の最新の取り組みだ。同社は、健康的な加齢と寿命延伸メカニズムの研究のために、Xploration Capitalがリードしたラウンドで250万ドル(約2億8750万円)を調達した。

Longevicaは4月、研究成果に基づくサプリメントのラインナップを発表した。同社は11年以上前にスタートし、現在では長寿関連の投資家であり同社の社長でもあるAlexander Chikunov(アレクサンダー・チクノフ)氏をはじめとする投資家から1550万ドル(約18億円)以上を調達した。

関連記事:長寿スタートアップのLongevicaが長期研究に基づくサプリメントを発売予定

Longevicaの共同創業者でCEOのAinar Abdrakhmanov(アイナー・アブドラフマノフ)氏はTechCrunchに対し電子メールで、ステルス状態から抜け出した当初は、研究成果をできるだけ早く活用する最良の方法を見つけ出し、消費者向けの製品をいくつか市場に投入することに主眼を置いていたと語った。

「しかし、一連の深いインタビューを通して、長寿分野のほとんどの科学者にとって、インフラが不足していることがわかりました。私たちは、提携を通じた多くの研究の活用のために、社内のエンジンを共有することにしました。研究者にとって仕事に必要なデータプラットフォームを提供するのです」とアブドラクマノフ氏は付け加えた。

長く生きることは、人間とペットの両方を対象に、他の企業も取り組んでいる分野だ。世界のアンチエイジング医薬品市場は、2020年に約80億ドル(約9200億円)となり、2027年には倍増すると予測されている。

一方、Crunchbase Newsが7月に長寿分野のスタートアップ企業の状況を調査したところ、この分野で活動している30社以上が、合わせて数十億ドル(数千億円)の資金を調達していることがわかった。最近の例では、2700万ドル(約31億円)を調達したLoyalがある。同社は、動物の長寿を調べ、人間の長寿につなげるという長期的なビジョンを掲げている。

Longevicaが資金調達を開始したのは、エンド・ツー・エンドのオープンリサーチプラットフォームのアイデアを思いついたときからだ。今回調達した資金は、そのプラットフォームの開発と、同社の研究データセットの統合を支えるために使う。

アブドラフマノフ氏は、科学研究を消費者が使える製品にするパイプラインを検証することが目的だと述べている。

「加齢や寿命に関する仮説は数多くありますが、それらの仮説を実際に検証して、誰が正しいのかを見極めることが、明らかにボトルネックになっています」と同氏は付け加えた。「私たちのプラットフォームは、科学界が答えに少しでも近づくために役立つはずです」。

チクノフ氏とLongevicaの共同創業者であるAlexey Ryazanov(アレクセイ・リャザノフ)博士が主導した当初の研究では、1033種類の化合物をテストし、有意な寿命延伸効果を示した。その研究については、査読付き論文の発表が間近に迫っている。アブドラフマノフ氏は、これは「どちらかというとムーンショットプロジェクト」だという。この方向性であれば、より早く結果を出すことができ、業界全体にとっても有益であることを、同社の投資家たちは見抜いていたとも述べている。

新たな研究能力を手に入れたLongevicaは、ジャクソン研究所での新たな研究で、300種類の化合物をより深くテストする。また、2022年1月には、6月に開始される本格的な薬理学的スクリーニング実験で薬を試したい研究者から、申請の受け付けを開始する。

「また、1月に私たちは公開データベースを始めます。マウスを使ったほとんどの長寿関連の実験のマークアップデータを含み、公開されているものと、まだ発表されていないものの両方があります」とアブドラフマノフ氏は話す。「このプラットフォームはすべて無料のオープンソースで、プログラムコードもGitHubで公開されます」。

画像クレジット:Vinoth Chandar

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。