履歴書作成ツール兼ポートフォリオサービス「Proff」正式公開——ロールモデルの提案ツール目指す

かつては「履歴書・職務経歴書といえば手書き」というのが常識とされてきたものだけれども、人材不足の折、必ずしも自筆の書類にこだわらない企業も増えているようだ。就活・転職サイトでエントリーシートのフォームや履歴書・職務経歴書の作成支援ツールを提供するところもあるし、フリーで履歴書作成ツールを提供するサイトもある。

コンセプトデザインやクリエイティブ制作を手がけるイキモノが8月20日、正式リリースした「Proff(プロフ)」は、そうした履歴書・職務経歴書を作成する機能と、LinkedInやWantedlyのプロフィール画面のようなポートフォリオ機能を持つ“スマート履歴書”サービスだ。

作成はPCからだけでなく、スマートフォンにも対応。ポートフォリオページは独自のURLを持つことができるので、就職・転職活動だけでなく、フリーランスのエンジニアやデザイナー、ライターがSNSなどでシェアして活用する、といった使い方もできる。

テンプレートデザインは現在6種類。エンジニア向け、スマホで見やすいシンプルなウェブ用などが選択でき、今後も追加を予定しているという。

「今までの形式にとらわれずに、自由度高くポートフォリオを作成できる」ことをうたっているProffだが、従来の履歴書フォーマットにも対応。それぞれPDFとして出力することも可能で、ファイルを共有したり、印刷して提出したりできるようになっている。

また1つのアカウントで複数のプロフィールが作成できるので、メインキャリアの実績を記載した自己紹介用ページと、副業用のポートフォリオページを分けて使うことも可能だ。

イキモノ代表取締役の古屋悠氏は、フリーランスと鎌倉のクリエイティブ企業カヤックでウェブ制作、エンジニアを経験。その後2012年12月にイキモノを設立した。イキモノではコンセプトデザイン、デザイン制作を受託するほか、クライアントとの共同事業も行う。自社独自の事業開発も行っており、自社プロダクトの第1弾として約1カ月前にProffのベータ版運営を始めた。

正直に言って、冒頭で述べたとおり無料の履歴書作成ツールは既にあるし、ポートフォリオに関しても既存サービスへの入力を充実させれば、それなりに完成度の高いものに仕上げられると思う。ここであえて新サービスとしてProffをスタートしたのはなぜか。古屋氏に尋ねた。

古屋氏によれば、履歴書作成・ポートフォリオサービスは入り口であって「最終的には人間の生き方のデータをレシピ化して、ロールモデルのような形で提供することが目的」という。きっかけとなったのは、10代の頃のドイツ留学での出来事だ。

「留学中、月に1度ぐらいの頻度でカウンセラーとの面談があって『将来こういうことがやりたいけれど、そのためにはどういう単位(科目)を取得すればいいだろう』ということを細かく相談することができた。今の日本だと、家族や先生などが知っている職業の知識の範囲でしかアドバイスが得られず、周囲の知識の限界が自分の限界になってしまう。僕はそれは良くないことだと思う」(古屋氏)

例えばエンジニアになりたい、というなら、小学生からでもできることがあるはず。何をすればよいのか、どういう傾向の人がエンジニアになるのか、といったことをデータから導き出せるよう、たくさんの人のデータを集めて、ライフスタイルデザインとロールモデル(キャリア)設計をする、というのが、古屋氏が目指していることだ。そのために「5年以内で100万ユーザーを集めたい」と古屋氏は述べる。

海外の履歴書・ポートフォリオのさまざまなサービスを見て、古屋氏は「日本の型の決まった履歴書フォーマットは、近いうちに崩れるだろう」と話す。それよりも「自分の履歴、経歴をちゃんと書くことが大事。紙のアウトプットである必要もない」と考えている。

またWantedlyやLinkedInなどの既存サービスについては、「キャリアがゴールになっているという前提がある」と古屋氏。「Proffでは中立の立場でサービスを提供することで、これまでやってきたことを整理して書ける場、1人1ポートフォリオ時代を支える場を作りたい」と述べる。

「実は『履歴書サービス』として打ち出すかどうかについては議論があった」と古屋氏は明かす。「ただ『ポートフォリオサービス』としてしまうと、フリーランスの人たちしかピンとこない。新卒や転職の人にもわかりやすく使ってほしかったので『スマート履歴書』としてスタートした」(古屋氏)

古屋氏は、ツールを経歴やスキルの整理のために使ってもらうのはもちろん、「これからやりたいことなども書いてほしいので、工夫したい」という。「ゆくゆくは、チャットボットでロールモデルについて相談できるような機能や、あるキャリア/ロールを目指す人に対して、その実績を持つ人の履歴書を個人が特定できない形にして売る、といったCtoCマーケットなども検討している」(古屋氏)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。