建設現場向けチャットアプリ「stacc」、作業員のスマホ率7割超えで建設業に転機

SlackやChatWorkなどビジネス向けのチャットサービスが広まりつつあるが、業界ごとにチャットに求めるニーズは違うようだ。本日MCデータプラスは、建設現場用のチャットアプリ「stacc(スタック)」を正式ローンチした。これはMCデータプラスが以前より提供している建設業向けの労務安全書類の管理システム「グリーンサイト」と連動する。

少しMCデータプラスについて説明したい。MCデータプラスは三菱商事の社内ベンチャーのうちの1つで、2015年7月にスピンアウトした。彼らの主力サービスは建設業向けのASPだ。

「グリーンサイト」はそのうちの一つで、建設業向けに労務安全書類を管理するためのものだ。建設現場での安全管理のため、請負業者は作業員の免許や資格を書類にまとめ、元請業者に提出する必要がある。グリーンサイトはそうした必要書類の作成、届け出をインターネット上で一括管理できるようにした。今では、大手ゼネコンをはじめ全国20万社、100万人以上の作業員の情報の登録があるという。全国で建設業に関わる人口はおよそ400万人なので、25%以上の人が登録している計算という。

ただ、労務安全書類の管理はIT化できたが、実際の建設現場ではまだまだ口頭や電話、紙での連絡が多く行われているとstaccの責任者を務める原和也氏は言う。staccはそうした現場でのコミュニケーションの課題を解消することを意図している。

staccの特徴はグリーンサイトと連携していてチャットルームを自動で作成できる点と原氏は説明する。グリーンサイトにはどの人がどの現場に入って、どのような作業を行うかの情報が登録されている。そのデータを元にstaccでは現場ごとに職場全体のルーム、企業別や編成別ルーム、職長だけのルームなど、必要なルームを自動作成するという。

グリーンサイトのユーザーIDがある人はstaccに新規登録する必要はなく、同じIDでログインしてチャットを利用できるそうだ。

LINEなどのチャットアプリで十分と思うかもしれないが、それらは建設現場で利用するには適していなかったと原氏は説明する。現場では他の請負業者とコミュニケーションを取ることも多く、1日に複数の現場にいく作業員もいる。そうすると、現場ごとのチャットルームを作ってメンバーを招待するだけでも手間だった。

また、チャットの中で図面などの機密情報に言及することも多い。そのため、セキュリティー面で通常のチャットアプリより安心して使えるものを作る必要があった。staccはグリーンサイトと連携することで、関係する人だけが簡単にチャットルームを使えるようにするという。

原氏はMCデータプラスがスピンアウトした2015年7月と同じタイミングでジョインした。MCデータプラスに入社する前は、起業してコーヒーのサブスクリプションECの立ち上げなどを行ってきたそうだ。

建設業はIT化が進んでいない印象だが、それは少しづつ変わってきていると原氏は言う。「最近になって職人の7割近くがスマホを持つようになりました。ようやく、こうしたアプリで建設業でのIT化が進められる状態になりました」。

グリーンサイトやstaccでは、今後他社サービスとも連携していきたいと原氏は話す。建設業には関わる業者も多く、ニーズも多岐にわたる。それを自社だけで賄うのは難しく、他社と連携することで業界全体の生産性を高められるようにしたいと原氏は話している。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。