形状を変える”4D”プリントオブジェクトが宇宙建築への道を拓いてくれるかもしれない

たとえNASAの手にかかろうとも、宇宙に物体を打ち上げるには多額の資金が必要だ。そのコストは、1ポンドあたり約9000ドルから4万ドル以上に及ぶ。こうした価格帯の下では、重量とスペースがシャトルミッションの中で大きなプレミアム価値となる。よってNASAは、よりコンパクトな搭載物を生み出す革新的な新しい手法を探すことになる。ジョージア工科大学のチームは、この問題をいつか解決しようと、熱に晒されたときに拡張する小さな構造の作成を、3Dプリンタを利用して探求している。

この方法は、科学コミュニティの中で4Dプリンティングと呼ばれるものの1形態である。4Dプリンティングというのは3Dプリンティングされた構造が、プリントされた後にその形状を変えることだ。ここで言う第4の次元とは時間である。それは最近聞かれるようになった業界のバズワードのようなものだが、この問題にはかなりうまく適合する。MITのような他の学校で行われている同等の研究のように、ジョージア工科大学のチームの研究も、変形のきっかけが温度によって与えられる。この研究が類似の研究から差別化されている点は、テンセグリティ構造日本語Wikipedia)を利用する点だ。これは浮き上がった固形の棒(ロッド)たちが紐(ワイヤー)によって結び合わされた構造になっているものだ。システムは軽く、強く、簡単に折りたたむことが可能なため、宇宙旅行のためには理想的な構造だ。

チームによる構造は、完全に3Dプリンタによって生み出される。プリント後の段階では、オブジェクトは平らに横たわっている。摂氏65度(華氏149度)の水に浸すと、それらは展開を開始する。それが進行する速度は、試行錯誤を通して、研究者たちがプリント対象に直接焼きこんでいる。もし、大きな構造をあまりにも速く展開してしまうと、ワイヤーとロッドが絡まった混乱した構造が残されることになる。

Glaucio Paulino教授はこのためのプログラミングを「メモリー」と呼んでいる。これはワイヤーによってつながれたポリマーロッドに組み込まれているものだ。「メモリーはロッドに埋め込まれています。ワイヤーにはメモリーはありません」と彼はTechCrunchに語った。「これらは柔軟な素材です。すべてのメモリはロッドの上のみにプリントされています。私たちはこのメモリーをプリントする技法を見出したのです」。

このメモリーはまた、構造物が元の状態に戻ることもできることも意味しているが、現時点では材料による制約でうまく実現できていないとPaulinoは語る。複数回の変形を行なうことで、崩壊が始まってしまうのだ。チームはそれを修正する手法にも取り組んでいる。

Paulinoは、これらのシステムの規模拡張にも取り組んでいるという。現時点ではそれが展開されたとしても、人間を収容できる程の大きな構造物を建てるための道のりは遠い。とはいえテンセグリティ構造自体はかなり大きなスケールで使用されている。この用語は1960年代にBuckminster Fullerによって提唱された概念であり、スタジアムや橋を含む多くの種類の大規模構造物に利用されてきた。建築業界では特に一般的というわけではないが、最小限の材料から生み出される強度は高く評価されている。

すべてがうまくいけば、この技術は最終的には、宇宙構造物やロボットそして生物医学的なニーズに至る幅広いデバイスに利用することができるだろう。

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(翻訳:Sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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