従業員の福利厚生として学生ローンの返済に力を入れるGoodlyには追い風

写真はCEOのグレゴリー・プーリン氏(左)と、共同設立者でGoodlyのCTOであるヘマント・ヴァーマ(右)(画像クレジット:Goodly)

創業3年目のサンフランシスコに拠点を置くスタートアップGoodly(グッドリー)は、5人のチームと、2019年に確保した150万ドル(約1億7000万円)という限られた資金、最近では、長年人事を担当し、Airbnb(エアービーアンドビー)で従業員体験のグローバルヘッドを務めたBeth Axelrod(ベス・アクセルロッド)氏から得た非公開の資金で着実に事業を展開している。

企業が従業員の福利厚生として学生ローンの非課税返済を提供することをとにかく簡単にすることを目指している同スタートアップは、収益性が高い。同社は、保険会社のNFPや大手のWillis Towers Watson(ウィリス・タワーズ・ワトソン)など、数多くのブローカーと独占的な関係を築いている。しかし、企業がリモートワークや従業員のメンタルヘルスを維持することに必死になっていたパンデミックの間、同社の製品は必ずしも注目されてこなかった。

2022年が近づくにつれ、この状況が変わるかもしれない。それには2つの理由がある。1つは、2021年の統合歳出法に規定されているもので、従業員1人あたり年間最大5250ドル(約59万円)まで、学生の借金返済のために雇用者が拠出できるというものだ。会社からの拠出金は、雇用主にとっては税控除の対象となるが、従業員にとっては課税所得から除外されるため、企業にとっては拠出金を支給する金銭的なインセンティブがより大きくなるようだ。

2つ目に、何百万人もの学生ローンの借り手に対して20カ月以上にわたって一時的に学生ローンの支払いを猶予してきた学生ローン救済措置が1月31日に終了するため、2月からは連邦政府のローンの支払いが通常の(そして通常よりも厳しい)金利で再開されることになる。これは、しばらく棚上げにされていた問題が急に前面に出てくることを意味しており、競争の激しい雇用市場においては、企業は注意した方がいいかもしれない。

共同設立者でCTOのHemant Verma(ヘマント・ヴァーマ)氏とともに、Parker Conrad(パーカー・コンラッド)氏の会社Rippling(リッピング)の初期の従業員の一人であった、GoodlyのCEOであるGregory Poulin(グレゴリー・プーリン)氏は、彼らがさらに掘り下げることを決めた場合、説得力のある提案を持っている。今週初めにプーリン氏が私たちに語ってくれたように、5250ドル(約59万円)は大した額ではないように思えるかもしれないが、時間が経てば驚くほどの金額になる。

「私たちが担当している平均的な企業では、加入者1人あたり月に100ドル(約1万1300円)程度の拠出が最も一般的です」と1日あたりのコーヒー1杯分のコストに例えて語ってくれた。しかし、雇用者拠出金を学生ローンの元本に直接充当することで、問題となるローン期間中の複利の問題を解決することができる。

プーリン氏によると、一般的な返済期間は約10年だが、Goodlyは従業員のローン残高に応じて、その返済期間を3〜4年短縮することができるという。これは、我々が目にしているデータと完全に一致しているわけではなく、実際には返済期間は平均して20年近くになるが、Goodlyを利用することで1年でもローンの支払いを減らすことができれば、雇用主にとっては十分使える特典だ。

参考までに、このスタートアップの技術は非常に単純だ。Goodlyのユーザーにはそれぞれアカウントが与えられ、ダッシュボードで学生ローンを管理・追跡することができる。そこから従業員は、経済的な相談や、返済を最適化するための最良の戦略などのコンテンツにアクセスすることができるというものだ。

プーリン氏は、特に人気のある機能として、従業員が友人や家族を招待して、学生ローンのための寄付を行うことができることを挙げている。この機能は、クラウドファンディングと同様の機能で、親や祖父母が1回限りの寄付や定期的な寄付を行うことができるというものだ。「もちろん、その寄付者は、支払いが他のことに使われるのではなく、その学生ローンに向けられているという安心感を持つことができます」と彼は言う。

Goodlyは、2018年の立ち上げ直後にY Combinator(Yコンビネーター)を通過した。プーリン氏は、ダートマス大学在学中に実父が急死し、その後、8万ドル(約910万円)の学生ローンを借りなければならない状況に陥ったことが、この事業を立ち上げるきっかけになったという。

それから数年経った今でも、彼の支払いは月に900ドル(約10万円)以上になるそうだ。

残念ながら、ほかにも似た問題を抱える多くの仲間がいる。昨年の時点で、米国には4500万人の債務者がいて、その合計額は1兆6000億ドル(約182兆円)近くにのぼり、そのうちの多くの人にとって、学生ローンの返済は大きな負担となっている。「学生ローンを抱えている人は、多くの意味で二流の市民であるという二層構造の職場を作っているのです。なぜなら、30歳になると、学生ローンを抱えている人の退職金の額は、学生ローンを抱えていない人の半分程度になってしまうからです。」とプーリン氏は語る。これにより住宅購入や結婚、出産を遅らせる原因になっている。

Goodlyが展開を進め、2022年に学生ローンが再び注目を浴びるようになれば、より多くの企業がこの問題を認識し、従業員がこの悪循環を緩和できるよう、より多くの支援を行うようになると考えられる。

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(文:Connie Loizos、翻訳:Akihito Mizukoshi)

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TechCrunch Japan

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