急成長するウガンダのスタートアップ、Y CombinatorとGoogleも魅了

現在アフリカ大陸におけるスタートアップ・エコシステムは、ナイジェリア、ケニア、南アフリカ、エジプトのBig 4(ビッグフォー)が支配している。多額のベンチャーキャピタルやその他の投資を受けている国々だ。

しかし、この状況は大陸の他の国々からも注目すべきスタートアップが出現し、投資家がビッグ4以外にリスクを分散すべく新たな機会を探すようになって徐々に変わりつつある。

ウガンダは、アクセラレータのY Combinator(ワイコンビネーター)や、早期および成長期のスタートアップを対象に昨年10月設立されたGoogleの5000万ドル(約57億円)アフリカ投資ファンドといった著名なテック・プログラムに波紋を起こしている国の1つだ。

2021年12月、ウガンダのマルチ・サービス・デジタル決済プラットフォーム、SafeBoda(セーフボーダ)は、Googleの同ファンドから投資を受けた大陸で最初のスタートアップになった。さらに、この国で最初にY Combinator(2022年冬)に入ったスタートアップとなったフィンテックのNumida(ニュミダ)も上流階級に仲間入りした。NumidaはアフリカからY Combinatorの冬学期に入った15番目のスタートアップとして、シリコンバレー投資家の眼鏡にかなう機会を得た。

「すばらしく大きな会社を作り成功した人たちとつながりをもち、フィードバックを受けられることは、私たちのステージにとっては特に、かけがえのない機会です」とNumidaの共同ファウンダー・CEOのMina Shahid(ミナ・シャヒド)氏が、YC参加に関するTechCrunchのインタビューで語った。

Numidaの星は、昨年初めてシードファンドで230万ドル(約2億6000万円)を獲得して以来、輝き続けている。同スタートアップはウガンダの零細企業にリスクベースの融資を提供しており、迅速なビジネスローンの需要の高まりによって、開業以来月々30%成長している、とシャヒド氏は語る。

Numidの与信限度額は3500ドル(約40万円)だが、小企業に対する金額は増額され、利息は借り手のリスク特性に基づいて決められる。同フィンテックは今年中にガーナに進出する計画だ。

ファンディング

上記2件の大型発表以外にも、ウガンダのテック業界は繁栄を続けており、モビリティ、Eコマース、Eヘルス、クリーンテック、フィンテックなどの分野に次々とスタートアップが出現し、あらゆるタイプの投資家をひきつけている。ウガンダは昨年アフリカで大規模な株式ファンドを受けた15か国の1つだったと、Partech(パーテック)のレポートが報告している。

昨年12月、ケニアで運用する資産金融会社、Tugende(ツゲンデ)は、1700万ドル(約19億円)の債務投資を獲得した。同年はそれ以前に、Mobility 54 Investment SAS、豊田通商のベンチャーキャピタル子会社、およびCFAOグループなどの著名な投資家から360万ドルのシリーズA拡張ラウンドを完了している。2012年にMichael Wilkerson(マイケル・ウィルカーソン)氏が設立したTugendeの主要製品は、ウガンダで人気の輸送手段であるバイクタクシーの「リースして所有する」プランだ。ほかにもボート、自動車、販売器具などの収益を生む資産を購入するための融資を行っている。

しかし2021年、Mobility 54はDOB EquityとInfraCo Africaと共に340万ドル(約3億9000万円)を電動バイクのスタートアップ、Zembo(ゼンボ)に投資した。Zemboはウガンダの首都、カンパラでバッテリーの充電・交換ステーションも運営しており、この国の電動バイクの普及の高まりから期待できるビジネスだ。

スタートアップのEnsibuuko(エンシブーコ)も昨年、FCA Investmentsから100万ドル(約1億1500万円)のシード資金を調達した。Gerald Otum(ジェラルド・オータム)氏が2014年に設立した同社独自のデジタル・インフラストラクチャは、信用組合や貯蓄団体の業務自動化を支援する。

現状、この投資ブーム最大の受益者はモビリティとフィンテックといえるだろう。モビリティ・テックでは、東アフリカの国々で人気の輸送形態であるバイクタクシー分野に注目が集まっている。

現在ウガンダの首都、カンパラだけで20万台以上のバイクタクシーが走っていると推定されている。当地では住民が慢性的交通渋滞を回避するために利用している。Bolt(ボルト)、Uber(ウーバー)、SafeBodaといったマルチサービス・アプリは、オートバイのライドシェアリングやデリバリーの市場ですでに活用されている。

ウガンダのEコマース業界も急成長している、と同国の情報通信技術省による2021年の調査結果が示しており、この分野の収益は2025年までに4億2100万ドル(483億円)へと倍増し、ユーザー浸透率は29.1%になると予測している。企業の中には(例えばSafeBoda)、この分野の上昇に乗ずるべく戦略計画を修正しているところもある。

SafeBodaはここ数年、シングル・サービス・プロバイダーから、統合マルチ・サービス・スーパーアプリへと戦略を転換し、ライドシェアリング、オンライン・ショッピング・デリバリーおよび決済(代金支払い、送金授受)サービスを提供している。 Gojek(ゴジェック、GoToが支援するスーパー・アプリ)もナイアガラで利用可能で、他の市場にも目を向けている。

「私たちは東アフリカ以外でも通用するグローバル・プロダクトを作っています」とSafeBodaの共同ファウンダー・CEO、Ricky Rapa Thomson(リッキー・ラパ・トムソン)氏が最近のインタビューで本誌に語った。

一方、ウガンダのテック・エコシステムの成熟と、この国の若者たちとスマートフォンの普及に合わせて、アフリカ大陸全体から何十社ものスタートアップが新たな成長への道を求めてこの国に進出している。
2021年10月、ガーナ発の成長著しいEヘルス・スタートアップで最近3500万ドル調達したmPharma(エムファーマ)がウガンダ市場に進出し、同国最大の医薬品小売業、Vine Pharmace(バイン・ファーマシー)の株式の55%を買収した。ケニアのB2Bマーケットプレイス、Marketforce(マーケットフォース)とSokowatch(ソコウォッチ)およびEコマース・プラットフォームのCopia(コピア)は、ナイジェリアのMaaS(マース、サービスとしてのモビリティ)スタートアップ、Treepz(トリープズ)と組んで、すでにカンパラで運用を開始している。ほかにも、ケニアの物流スタートアップ、Amitruck(アミトラック)をはじめ何十という企業がこの市場を狙っている。

ウガンダは今年注目すべき国の1つである。この国では、世界最長のCOVID学校閉鎖を含むロックダウンが解除されたことを受け、あらゆる分野の活動が再開した。

画像クレジット:mathisworks / Getty Images

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(文:Annie Njanja、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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