急成長する民間企業の取締役会で今、起きている5つのトレンド

本稿の著者はAnn Shepherd(アン・シェパード)氏とJocelyn Mangan(ジョセリン・マンガン)氏。シェパード氏はソーシャル・インパクト・ベンチャーであるHim For Herの共同ファウンダーであり、フィンテック・スタートアップのHoneyBook取締役。マンガン氏はソーシャル・インパクト・ベンチャー、Him For Herの共同ファウンダーでChowNowおよびPapa John’sの取締役だ。

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「取締役会は大きく変わります」。

Dunkin’とPapa John’sの取締役、元CEOのNigel Travis(ナイジェル・トラヴィス)氏は、CEOと意欲的な取締役会メンバーによるコーポレートガバナンス の将来に関する議論を、こう切り出した。

2020年、無数の企業の生き様が大きく変わったのと同じく、取締役会は重大かつ長期的な変革に直面している。2020年我々は500人以上のビジネスリーダーから話を聞き、300近い企業の取締役会を調べた。それに最近行った取締役会ベンチマーキング結果を加えて検討した結果、我々は米国で急成長中の非上場企業の取締役会に5つのトレンドがあることを発見した。

1.取締役会の多様化は不可欠

歴史的にみて、役員はすでに取締役会にいる人々の個人的ネットワークを通じて選ばれることが多い。このアプローチは信頼と利便性に最適化することで多様性を犠牲にしている。

取締役会の多様性に対する圧力が高まり、男性のみの取締役会のリスクが社会的問題として取り上げられる中、企業は役員構成に対するより包括的なアプローチを取り始めている。ネットワーク外に目を向けて女性や有色人種を指名するようになり、これがいわゆる「パイプライン問題」ではなくネットワークの問題であることを発見した。過去1年の間に、レイトステージ非上場企業で取締役会が男性のみの割合は60%から49%に減少した。

これは進歩ではあるが、豊富の資金を得ているベンチャーキャピタル支援企業の半数近くで取締役会に女性がいないという事実は、これから成すべき仕事の膨大さを物語っている。現在、高成長民間企業の取締役会に占める女性の割合はわずか11%であり、有色人種女性はわずか3%である。

しかし、人種・民族の多様性については、この先改善が進んでいくことが期待される。Him For Her(ヒム・フォー・ハー)への女性取締役候補紹介の要請は2020年第4四半期に前年同期比4倍に増え、指名された新取締役の4分の1は黒人・アフリカ系米国人だった。

2.候補者をCEO以外の経営幹部に広げる

社外取締役を探す時、取締役会はCEO経験者を優先する傾向がある。現在のCEOの性別不均衡を踏まえると、その選択志向は直ちに男性候補者に傾く。

女性登用を検討する中で、多くの取締役会は次期取締役の選考基準に戦略的アプローチを取ることの価値に気づいた。求めている資質の代用としてCEOの肩書に頼るするのではなく、取締役会はギャップ分析を行い、最も重要なコンピテンシーの組み合わせを考えるようになった。

その結果、戦略的展望と最先端のベストプラクティスを合わせ持つ経営幹部の太いパイプラインができあがる。今すぐ監査委員会を開けるCFOだけでなく、市場開拓能力のある幹部、イノベーションを進めることで知られたプロダクトリーダー、および企業カルチャーを構築する方法を知っている人材活用責任者を求めるリクエストが我々のもとに届いている。他に、顧客の声を取締役会に届けるために、ビジネスに強い医師や看護師、警察官などを探している企業を手助けしたこともある。

3.社外取締役は早期に

CEOが取締役会に多様性と経営経験をもたらそうとする際、その多くが早い段階で社外取締役を迎えている。どのくらい早く?「社外取締役を迎えるのに早すぎることはない」とRippleのCEOであるBrad Garlinghouse(ブラッドガーリングハウス)氏はいう。同社の最初の社外取締役は会社設立後わずか1年で任命された。

2020年、潤沢な資金を得ている民間企業で、社外取締役が少なくとも1人いる割合は71%から84%に増え、取締役会に社外取締役の占める割合は20%から25%へと増えた。2020 Study of Gender Diversity on Private Company Boardsによる。我々が取締役会調査を実施した非上場企業のうち40%以上がシリーズBまたはそれ以前だった。

4.Zoom取締役会の活用

パンデミックは取締役会を画面へと向かわせたが、多くの会社では、リスクが軽減された後も少なくとも一部でバーチャル会議は続けられるだろう。2020年、企業は物理的オフィスの役割を考え直し、物理的役員会議室の重要性は新たな監視の目に晒された。多くのCEOや役員は、正式な取締役会の対面参加を好むだろうが、リモート出席の新たな流れや臨時バーチャル会議の増加が予想される。

移動の減少とスケジューリングの容易さ以外にも、バーチャル会議には幹部らが活用すべき隠れた恩恵がある。出席者増による機会費用の減少である。「役員室に人が増える」ことによる影響は、長年にわたり幹部の取締役会参加に反対する理由の1つだった。バーチャル形式によって、CEOはより多くのリーダーが取締役会の議論に参加する機会を活用するだろうと我々は予想している。

その一方で、バーチャル会議では人間関係構築に意識的な努力が必要となる。取締役会はバーチャル会議の利便性と対面による親密な関係構築の価値の均衡をとって協調的意思決定を推進していく必要がある。

5.ステークホルダー資本主義の定着

公開市場における圧力の高まりと価値に基づく購入決定を行う消費者の増加に後押しされて、民間企業の取締役会は意思決定における持続可能性をあからさまに重視するようになった。BlackRockのCEO Larry Fink(ラリー・フィンク)氏は毎年恒例のレターで、業界のライバルをESG指数で上回る企業が「持続可能性特典」を得ている証拠を指摘した。上場企業がESG実績に関する指数を標準化、公表したことで、その規律は国際市場での競争を目論む企業の役員室へも拡大している。

民間企業は経済のほぼすべての分野でイノベーションを推進してきたが、取締役会は過去数十年間驚くほど変わっていない。2020年は会社の取締役会にとって転換点になると予想している。この時期の取締役会転換は、多様性・包括性の拡大および持続可能な価値創造のますますの重視によって定義されるだろう。こうした取り組みが定着すれば、恩恵を受けるのは企業と投資家だけでなく、従業員、顧客、サプライヤー、そして社会全体である。

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画像クレジット:Luis Alvarez / Getty Images

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(文:Ann Shepherd、Jocelyn Mangan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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