急成長中の排卵日予測アプリFloが評価額880億円で55億円のシリーズBをクローズ

月経周期追跡にフォーカスした排卵日予測アプリのFlo(フロー)が5000万ドル(約55億円)のシリーズBをクローズした。同社いわく、同ラウンドでの同社のバリュエーションは8億ドル(約880億円)で、投資家がフェムテックにどれほどの価値を付加しているかを強調している。

2016年創業のFloは初年に100万ドル(約1億1000万円)のシード資金を調達し、これまでの累計調達額は6500万ドル(約71億円)だ。最新ラウンドとなるシリーズBはVNV GlobalとTarget Globalが共同でリードした。

Floのユーザーベースは世界で2億人に成長した。この中の一部は同サービスの中心的な機能である月経周期追跡に加えて、より専門的なコンテンツにアクセスするのにお金を払っている。

Floアプリはユーザーに「キュレートされた」周期追跡、予測、パーソナライズされた健康に関する洞察、リアルタイムの健康アラートを提供するのに機械学習を活用している。これらは追跡されている症状、同アプリのかなりのユーザーベースによってフィードされたデータに基づいている。なので月経周期追跡アプリとして始まったFloはいま、女性に「科学に裏付けされたコンテンツ、専門家が率いるコース、正確な周期予測」を提供していて、自らを女性のための先を見越した予防医療ツールとうたっている。

しかしそれはまた、月経周期追跡など女性向けのユーティリティでますます競争が激しくなっている分野でもある。たとえば、Apple(アップル)は2019年にiOSネイティブのヘルスアプリに月経周期追跡を加えた。そのため、Floのようなフェムテックスタートアップは最近、女性ユーザーを獲得するために基本的なユーティリティを提供する以上に多くのものを展開しなければならない。

Floは現在展開するコンテンツとマーケティングの組み合わせで正しい方向に進んでいるようだ。過去12カ月でアクティブ会員ベースは4倍に増え、2021年8月には150万人に達した。そして今年末までに年間経常利益1億ドル(約110億円)の達成を目指している。

中核ビジネスモデルはサブスクベースだが、Floはアプリでフリーミアム版も提供している(基本の月経周期追跡を提供するため)。そして全バージョンでユーザーのさまざまデータを収集できる。ここにはユーザーの月経に関連するセンシティブな健康情報、受胎能力、妊娠の意向などが含まれるが、それだけではない。

iOSアプリプライバシー開示通知によると、Floは検索履歴(!)や連絡先など、さまざまな種の他のデータをユーザーに結びつける可能性がある。この開示ではまた、Floのアプリがユーザーのアクティビティをサードパーティのアプリやウェブサイトにリンクするためにユーザーの位置や購入、データ使用、IDなどの情報を追跡するかもしれないことが示されている。

Floはパーソナライズされた健康予測を提供しているため、多くのデータ収集が続くことになる。

しかし明らかに、Floアプリが収集できる一部のデータのタイプは健康というより販促に関連している。Floはこの点でプライバシーに関し過ちを犯した。

同社のユーザーデータの収集・共有への入れ込みは、2019年のウォール・ストリートジャーナル紙の報道の後、連邦取引委員会(FTC)が目をつける事態となった。同紙はFloアプリのデータ共有に関する数多くの慣行を分析し、Floがユーザーデータを非公開にすると大々的に言っていたにもかかわらず、アプリ内アクティビティをFacebook(フェイスブック)に渡していたと報じた。共有した情報はユーザーの月経期間や、妊娠の意向をいつアプリで明らかにしたか、といったものだ。

2021年1月にFloはそうした指摘をめぐって過ちを認めることなくFTCと和解した。

FTCとの和解の取り決めの一環として、Floは現在、ウェブサイト上部にこの問題に関する法的声明へのリンクがはられているバナーを表示している。声明では、2016年6月30日から2019年2月23日にかけて、Floアプリがユーザーに関連する識別番号、ユーザーの月経期間や妊娠についての情報を、分析・計算サービスのために使っているFacebook、Flurry、Fabric、Googleなどサードパーティのアドテック企業に送っていたことを説明している。

FTCとの和解でFloはまた、プライバシー慣行についての独立した調査を受け、健康に関する情報を共有する前にユーザーの承認を得ることにも同意した。Floのウェブサイトにある声明ではこの内容を繰り返していて、「許可を得ない限り」ユーザーの健康についての情報をどの企業とも共有しません、とある。

カテゴリー:
タグ:

画像クレジット: Flo

[原文へ]

(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。