悪条件下でも使える短波長赤外線を利用するセンサーの商業化を目指すTriEye、インテル、サムスン、ポルシェが支援

イスラエルのスタートアップ企業TriEyeは、悪条件下での自律走行システムや運転支援システムの視認性向上に役立つセンシング技術を商業化するため、7400万ドル(約84億円)を調達した。

その技術は、波長の短い赤外線、すなわち短波長赤外線(Short-wavelength infrared、SWIR)を利用する。赤外線なので人間の可視波長域にはない。SWIRによるセンシング技術は以前から存在するが、コストが高くつくため航空宇宙や防衛産業に限られていた。TriEyeによれば、同社はそのコストを大幅に下げて、今日のスマートフォンや自動車で使われているカメラ程度の費用にし、また市場にある他のタイプのセンサーよりも高性能だという。

そのイノベーションはCTOのUriel Levy(ウリエル・レビー)氏がヘブライ大学に在籍していた10在職中の10年以上の間に研究、開発したもので、TriEyeはそのSWIR技術の商用化と市場化を目指している。

CEOのAvi Bakal(アヴィ・バカル)氏によると、SWIRはこれまでの視覚システムにさらにもう1つの情報のレイヤーを加える(tri-eyeは「3つの目」の意)ので、それにより人は「可視物以上のもの」を見ることができる。

「センシングは至るところにあります。どのような産業でも、それは工程を編成し分析するための必須の部分です。しかし現在では、全体的なパフォーマンスと意思決定の向上に役に立つような、必要不可欠なデータの提供能力が視覚システムの市場にはありません」とバカル氏はいう。

TriEyeの創業者ウリエル・レビー氏、アヴィ・バカル氏、Omer Kapach(オメル・カパック)氏(画像クレジット:TriEye)

TriEyeはSWIRと同社独自の光源技術を使って、sedar(spectrum enhanced detection and ranging、 スペクトル強化検出測距)と呼ぶセンサーを開発した。同社によるとsedarは、高度な運転者補助や自動運転のシステムが必要とする像と深さに関するすべてのデータを提供する。ゆえにそれは、今日の高度な運転者補助や自動運転システムが利用しているカメラやレーダーやLiDARなどを使う従来的なセンシング系をリプレースできる。

TriEyeの技術は、カメラやライダーに比べてコストが安いことも大きなアドバンテージだ。バカル氏によると「マスマーケットが採用するためにはその点が欠かせません。最もシンプルなクルマから高級車まで、すべてに対応することが目標です」。

TriEyeのSWIRセンサーはCMOS半導体を使っている。同社はすでに大手のCMOSファウンドリ数社と提携して、今後の年産数百万という市場のニーズに備えている。また大手OEM数社とも、sedarを共同で商用化し搭載する具体的な車種の話し合いに入っているが、詳細はまだ明かされない。

同社のメインのターゲットは自動車業界だが、狙っているのは自動車だけではない。SWIRによるセンシングの性能は食品の検品や素材の検出にも向いている。また、バイオメトリクスや監視システムにも適している。

TriEyeがSWIRの市場を非常に大きく捉えているので、大手の投資家たちも関心を持ち始めた。その中にはIntelやPorscheの投資部門もいる。どちらも、2019年のTriEyeのシリーズAに参加した。

今回の最新の投資ラウンドはM&G InvestmentsとVarana Capitalがリードし、Samsung VenturesとTawazun SDF、Deep Insight、Allied Group、Discount Capital、そしてこれまでの投資家であるIntel CapitalやPorsche Ventures、Marius Nacht、そしてGrove Venturesが参加した。これでTriEyeの調達総額は9600万ドル(約109億円)になった。

画像クレジット:TriEye

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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