成功するスタートアップの陰にメンターあり


編集部記: Rhett Morrisは、Endeavorの調査研究を担うEndeavor Insightのディレクターである。Endeavorは強い影響力を持つ世界中の起業家を支援する非営利団体である。

「投資家向けのピッチは最低でも200回は見直しました」先日フォウンダーの一人が私にそう言った。彼女は先月、シードラウンドの資金調達を達成するまで、出資の可能性のありそうな投資家50人以上と面会していた。この話を大げさだと思う人もいるだろうが、このようなことは珍しいことではない。

起業家は、エンジェル投資家やベンチャーキャピタリストから資金調達を行うのに何百時間もかけている。このような活動が会社にとって重要であることは言うまでもないが、スタートアップに関する新しい研究データからすると、ファウンダーは今ままで見落とされていた活動についても時間をかけるべきだということが分かってきた。それは、素晴らしいメンターを探すということだ。このシンプルな戦略は他のどのような戦略よりも成功確率を高める可能性を秘めている。

成功したファウンダーの秘訣を探る

私たちのチームは昨年、テック業界の何千もの企業について研究した。その中でも特にニューヨークのテック企業に注目した。なぜなら今では世界で二番目に大きいテクノロジーのハブ都市になるほど、2003年から2013年におけるニューヨークのテック企業の成長が著しかったからだ。この調査の目的は、ローカルなテック企業が成功した理由を探ることである。

私たちの分析は、CrunchBase、 AngelListとLinkedInから得られた情報を集約し、更に700名近いファウンダーへのインタビューから得られた内容に基づいている。ニューヨークのファウンダーたちは累計で一ヶ月以上もの時間を私たちの調査に費やしてくれた。このようにして集められたデータは、一つの起業家コミュニティーを表す世界最大のデータベースとなった。

スタートアップの成功の秘訣と言われているようなこと、例えば大学に通っている頃から会社を始めるといったことは、その後に目立った違いを生み出してはいなかった。このようなスタートアップに関する迷信についての検証でも興味深い結果が得られた。しかし成功企業とそのファウンダーに見られた行動の検証では、それを上回る面白い発見があった。

起業家のアドバンテージを生むもの

ニューヨークのテック企業の膨大なデータ量で、今までにない分析方法が可能となった。同じ街の同じ分野で同じ年にローンチした企業を「類似グループ」としてまとめた。各グループの中から、下記の条件を一つ以上満たした企業を「トップパフォーフマンス」企業とした。

  • 売却に成功:1億ドル以上でのエグジットを達成
  • 投資家へのアピール:資金調達額が類似グループの上位10%内
  • 内部のスケール具合:従業員の数が類似グループで上位10%内

この条件を一つでも満たした企業は、研究対象となったニューヨークの全テック企業の13%だった。「トップパフォーフマンス」に分類された企業の中には、Gilt Groupe、Huffington Post、 MongoDB、 Shutterstock やTumblrなどがあった。

ニューヨークのテック業界内の成功している企業を分析すると面白いパターンがみつかった。このようなスタートアップを率いている起業家の多くは、他の成功している企業のファウンダーとの個人的なつながりを持っていたのだ。

中でも最も強い影響を持っていたのはメンターの存在だった。例えば高いパフォーマンスを出しているEtsyのChad DickersonやFlatiron HealthのNat Turnerは、成功している起業家であるFlickrのCaterina Fakeや、AppNexusのBrain O’Kelleyをメンターとしていた。

このようなつながりは強力だ。下の図を見てほしい。成功している起業家のメンターがいる場合、それらのテック企業の33%は「トップパフォーマンス」に分類されていた。他のニューヨークに拠点を置くテック企業のパフォーマンスと比べると、その成果は3倍以上だ。

このメンターシップのパターンはニューヨーク以外の起業家でも見られる。Steve Jobsが亡くなったとき、Mark Zuckerburgは、Appleのファウンダーは偉大なメンターであったと話している。DropboxのファウンダーのDrew HoustonとArash Ferdowsiのメンターは、シリコンバレーで成功を手にしたシリアルアントレプレナーのAliとHadi Partoviだ。

メンターの効果は何も起業だけに限らない。他の分野においても、良いメンターに師事した学徒のパフォーマンスが向上することが研究で分かっている。しかし、企業のパフォーマンスを比較すると、適切なメンターがいる場合とそうでない場合の差は歴然であり、スタートアップにとってメンターの価値は非常に高いと言える。

メンターとメンターシップを最大限活かす

Endeavorは、20以上の国で、急成長する企業を率いる1000人もの起業家をサポートしてきた。ファウンダーと投資家をつなぐこと、そして彼らに適切なトレーニングを提供することが主な活動である。それと共に、ファウンダーと経験豊富な起業家や重役を担ってきた人をつなぎ、メンターシップの場を提供してきた。このメンターシップにより、Endeavorネットワークの企業の平均成長率が、年60%以上も向上した。企業のいくつかは上場あるいは、1億ドル以上のエグジットに成功している。

ファウンダーがメンターとの関係を築くために覚えておきたいことが3つある。

ポイント1:メンターのクオリティーが大事。

メンターがいるだけでは充分ではない。あなたの企業を成功させたいなら、そのレベルに到達する方法を知っているメンターが必要だ。既にテック業界で成功を収めたメンターは、若いスタートアップが類似グループの企業より結果が残せる可能性を3倍高める。成功していない、クオリティーの低いメンターの影響は、ずっと低い。

ポイント2:メンターシップの効果は、継続的な関係を築くことで得られる。

私たちのニューヨークの研究では、成功している企業のファウンダーは、3回以上メンターと面会している。私たちの起業家をサポートする事業でも、定期的に会うことが重要なことが分かっている。Endeavorのネットワークに加入した新しいファウンダーには、複数のメンターからなるアドバイザリーボードを付ける。四半期に1度は必ず面会の機会を作るためだ。

ポイント3:素晴らしいメンターには、ビジネスにおける最重要な課題を相談する

メンターの才能を最大限活用することが重要だ。今回の研究でも、ファウンダーは自身の企業で起きている重大な問題についてメンターに相談していた。素晴らしいメンターは、同時に忙しい人でもある。ファウンダーは、メンターの時間と専門分野を最大限に活かし、問題の解決の糸口を探すべきだろう。

さらに詳しい情報については、こちらを見てほしい。ニューヨークのテクノロジーセクターの研究を助けてくれたMike Goodwin、そしてこのプロジェクトにアドバイスをくれたGlobal Entrepreneurship Research Networkのメンバーに感謝いたします。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ facebook


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。