成功する起業家に必要なのは「若さ」か「経験」か――国内キャピタリストに聞く

11月18日〜19日に東京・渋谷ヒカリエにて開催中の国内最大級のスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2014」。2日間に渡って国内外のテクノロジービジネスにまつわる多数のプログラムが展開されているが、18日午前には「若さか社会経験か?成功する起業家に必要なもの」というテーマで、国内屈指のベンチャーキャピタリスト4人によるパネルセッションが行われた。

パネリストの詳細は以下のとおり。モデレーターを務めたのは、TechCrunch Japan編集長の西村賢。

・秋元 信行 氏(株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ 取締役副社長)

NTTグループのコーポレートベンチャーキャピタルとして、スタートアップ支援プログラム「ドコモ・イノベーションビレッジ」を始め、グループ全体のオープンイノベーションを進める。

・松本 真尚 氏(株式会社WiL 共同創業者 ジェネラルパートナー)

ベンチャーと大企業との連携推進を大きなミッションとしながら、日米を中心に投資をしている。最近ではgumiやメルカリへの投資が話題となった。

・丸山 聡 氏(ベンチャーユナイテッド株式会社 チーフベンチャーキャピタリスト)

ユナイテッド株式会社(前ネットエイジ)の子会社として投資事業を展開。インターネットビジネスの黎明期からシードアクセラレーターとして携わる。過去の投資先はmixiやエニグモなど。

・田島 聡一 氏(株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズ 代表取締役)

サイバーエージェントの100%子会社。アジアを中心に8カ国11拠点において、シードステージ、アーリーステージを中心に投資活動を行う。

起業家に求められるのは「若さ」か「社会経験」か

―投資のステージによっても異なるかもしれませんが、シードステージやアーリーステージに投資されていると、やはり起業家は若い人が多いのでしょうか?

丸山(以下、登壇者の敬称略):うちはまだできたばかりですが、今のところ20代の起業家に投資していることが多いです。社会人未経験の人もいるし、社会人2〜3年の人も。なぜ彼らに投資しているかというと、生活費が安いからですね。その分、長い間挑戦できるので、僕らの投資スタイルにとってはアドバンテージになります。

秋元:うちも「ドコモ・イノベーションビレッジ」というインキュベーションプログラムをやっていますが、投資先全体のポートフォリオを見ると、ミドルステージ以降の人たちが多くなっているので、あまり学生はいません。それは、うちがベタベタのストラテジックリターンを目的としたコーポレートベンチャーキャピタルの志向なので、本体やグループ会社とのシナジーを追求しようとすると、シードの段階では、なかなか話を進めるのが難しいからです。

松本:年齢はあまり気にしたことはありませんが、うちの本社があるシリコンバレーでは、起業家の平均年齢は35〜40歳くらいが多いんですよね。我々の場合は、ある程度知見を持っている方に対しての投資が日米ともに増えています。

田島:うちの場合、事業会社で一定の成果を出した方が起業するときや、一度起業して会社を売却した方の二度目のチャレンジのときに投資するケースが多いです。それは失敗経験を積んでいる分、成功に対してショートカットできそうな方が多いからという理由と、「サービスじゃなくて産業を売りたい」といったような目線の高い方が多いという感覚があるからです。IPO時に時価総額1000億円を狙っている企業が多いですね。

―起業家の良し悪しについては、どのように見極めていますか?

松本:うちのメンバーは皆インターネット業界に15〜16年くらいいるので、起業家の方ともどこかしら友人関係でつながっている場合が多いです。シリコンバレーに(ベンチャー)村ができているように、日本でもベンチャー村みたいなのができてきているんですよね。まったくお会いしたことがない方は、いっしょにお仕事をされたことがある方にアポをとって、ボードメンバーすべての人物評価をしていただいて、それをある程度信用しながら進めていくことが多いです。

―逆に、若い人がデビューするには、どうすればいいですか?

丸山:今はシードアクセラレーションプログラムが増えているので、そういうところに入っていく方法もありますが、全体で言うとマジョリティではないと思います。大半の人は、まずサービスを作ってみるというところから始めています。起業の前から、ふわふわした段階の事業プランを元に、1〜2年かけてメンタリングをしながら投資に至るケースも多いので、僕らのようなベンチャーキャピタリストを使ってもらうのもひとつの手かなと。

マーケットを「取られる」のか「取りに行く」のか

―肌感覚として、何割くらいの起業家がグローバルを目指していますか?

丸山:世界に目を向けている起業家は日本では圧倒的に少ないですね。極端かもしれませんが、1対99くらいの感覚。本当に世界を見ている人は少ないと思います。今の世の中って簡単にグローバル展開できるので、まずは可能性を模索してみようという意味で、身近な問題を解くだけではなくグローバルに挑戦してみようという話はしています。

―起業家からすると、言葉の違いも大変だし、日本のマーケットは結構大きいし、イグジットも見え始めて……という「プチイグジット問題」(小さなイグジットを目指してしまいがちということ)のようなものがあるように思いますが、その辺りについて、どう思われますか?

松本:僕らはその“プチ感”をなんとか打破したいと思っています。gumiやメルカリにも、「そのまま上場するのではおもしろくないから、世界で戦うための金を調達しよう」と言ったんです。日本で数百億円で上場するということは、グローバルで1000億、2000億を目指せる環境があるってことじゃんっていう話もしますし。

世界中の人が困っているのであれば、課題を解決する対象が日本人だけである必要はない。自分のプロダクトで世界中の人を喜ばせたいという「志」さえあれば、国境なんて関係ありません。日本でゆっくりやっている間に、いつの間にか海外でメジャーになっていたなんてことになるのは残念なので、作った瞬間に5カ国対応くらいすれば? と思いますね。

田島:僕らは東南アジアで(投資を)やっているんですけれど、たとえばインドネシアの起業家は、インドネシアのマーケットが大きいので東南アジアに出て行きたいという人はあまりいません。でも、タイやベトナムやマーケットが小さいので、みんな東南アジアに出て行きたいと言います。日本でもこれと同じことが起こっているのかなと。つまり、日本の中にはそれなりのマーケットがあるので、その中でやっていけばいいと思っている人が多いんじゃないかと思うんです。

隣の韓国は、スマホの普及率が8〜9割になっていますが、マーケットがないので外に出て行きたいという勢いが極めて強い。取られるのか、取りに行くのか。世界大戦になってきているので、市場機会に気付いて、どんどんアジアや世界を取りに行くような起業家が増えればいいと思っています。


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。