手数料なしのモバイル銀行Chime、シリーズCで7000万ドル調達して企業価値5億ドルに

サンフランシスコ拠点のChimeは顧客フレンドリー、手数料なしという新進気鋭の銀行として知られる。そのChimeがMenlo Ventures主導のシリーズCラウンドで7000万ドルを調達した。共同投資を行ったのは、これまでも投資してきたForerunner Ventures、Aspec Ventures、Cathay Innovation、Northwestern Mutual、Crosslink Capital、そしてOmidyar Networkで、これまでの累計調達額は1億ドルを超え、企業価値はおおよそ5億ドルだ。

このスタートアップは、実在店舗を必要としない若い人々、特にミレニアル世代に人気がある新手の銀行の一つだ。ミレニアル世代は、当座貸越しとなったり最低残高を下回ったりしたときに課金されるのにうんざりしている。手数料というのは、消費者が金融面で最も重視するポイントだ。

Chimeの指摘にあるように、既存の銀行は2017年、顧客に340億ドル超の手数料を課した。一方のChimeは、顧客向け手数料を下げている。

月々の手数料なし、口座維持手数料なし、当座貸越し手数料なし、そして海外送金手数料もなし。加えて、無料で利用できる約4万台のATMネットワークも展開している。顧客を脅かすように手数料をとる代わりに、Chimeはデビッドカードを含む支払い手数料ベースのビジネスモデルで収益をあげている。デビットカードでは、Visaからの1.5%の支払い手数料で稼いでいる。

手数料がないというのは消費者にとって大きな魅力である一方で、Chimeは斬新な機能でも人気を博している。スタートアップとファイナンスそれぞれの専門家が組んで立ち上げられたサービスだけあって、アプリは古めかしい銀行のものではなく、まるでテック企業が展開しているもののようだ。

Chimeの共同創業者でCEOのChris Brittは以前Flycastで働き、comScoreの初期の社員でもあり、VisaとGreen Dotでも働いた経験を持つ。共同創業者でCTOのRyan KingはPlaxoとComcastで経験を積んだ。

「私がこの会社を立ち上げたのは、Green Dotはクレジットの返済履歴が良くないなどして銀行に口座をひらけないような人を専門としてきたから」とBrittは説明する。「Green Dotはあらゆる機能を持つ口座ではなかった。だから、私がChimeでしたいのは、通常の人々向けのプロダクトをつくることだった。その通常の人というのはBank of AmericaやWells Fargoに実際に口座を持っているものの、さまざまな理由で銀行に決して満足していない。おそらく真っ先に来るその理由は、銀行のプロダクトがかなり罰則主義だから、というもものだろう」と語る。

Chimeがコンシューマー向けのサービスを開始したのは2014年半ばのことだ。しかしChimeをメーンバンクとして利用してもらうための一連の機能は2016年初めまで提供していなかった。

今日では、そうしたメーンバンクとしての機能には、カード利用時の端数を自動的に預金するオプションや、給料の10%を自動的に定期口座に入れるサービスも含まれる。また、人気の手数料なし給料前払いサービスもある。このサービスでは、給料を支払う側が支払いの手続きをすると、Chimeが実際の給料支払日前であっても給料を使えるようにするというものだ。

こうした機能、そして手数料なしという点で、Chimeは他の銀行を利用していた全米の多くの若者を魅了した。数週間前にChimeの口座数は100万を超え、今では毎月10万件の口座開設がある。また、これまでの取引高は45億ドルにのぼり、今年末には100億ドルを達成する見込みだ。

追加の資金調達で、Chimeは事業規模をさらに大きくしようとしている。マーケティングに力を入れるのはもちろん、現在80人規模のサンフランシスコのチームを100人規模にし、商品開発や新たな機能の提供を行う予定だ。

「次に取り組むべきは、顧客がより効率的にクレジットやローンを管理できるようになるのを手伝うこと。クレジットカード締め切りのサイクルを短くすることで負債の管理ができるようになると考えている」とBrittは語る。しかし、詳しい情報は明らかにしなかった。

Chimeはまた給料を支払う企業とも何かしら試みを抱えているようだが、今回詳細は語れない。

今回の資金調達ラウンドでは、Menlo VenturesのShawn Carolanが役員に加わった。

CarolanはMenloの投資について「銀行の口座というのは、財政上そして精神衛生上、暮らしの中心にあるもの」と話す。また「表に出さない手数料で顧客を脅すようなやり方ではなく、顧客自身のために貯蓄するのをより促すというやり方で成長するChimeのアプローチに共感する。ファイナンシャルサービス分野におけるこうしたビジネスモデルへの移行は避けられず、Chimeはその先頭をいくものになる」とも語った。

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(翻訳:Mizoguchi)