批判が高まる中、テスラが中国向けの新車両を検討中

Tesla(テスラ)は、その電気自動車の品質に関する苦情の衝撃が中国のインターネット上で広がる中で、中国の消費者に合わせた車両の開発に取り組んでいる。

Teslaの副社長であるGrace Tao(グレース・タオ)氏は、今週開催された上海モーターショーの中で、中国のビジネスニュースの21st Century Business Herald(21世紀ビジネスヘラルド)に対して、Teslaが中国向けにゼロから設計した新製品を検討していると述べた。この中国で開発された車両は、世界でも販売される予定だと彼女は付け加えた。

中国時間4月19日に開催された同イベントでは、1人の女性がTeslaのブースに現れ、Tesla車の上によじ登って、同社製のブレーキに欠陥があると叫んだ。その後、この女性は車両を傷つけたとして拘束されたが、TeslaはマイクロブログプラットフォームWeibo(ウェイボー、微博)上で、彼女のクルマが事故を起こしたのは品質上の問題ではなく、制限速度を超過したためだと書き込んだ

しかし、その様子を撮影した動画がネット上で拡散されたため、当の抗議者は多くの人の共感を集めることになった。それに乗じて多くのユーザーが、Teslaの問題を訴えたのだ。「Tesla stand turned into stage for defending rights」(Teslaのブースが権利を守る舞台となった)というハッシュタグを付けた投稿が、Weibo上で2日間に2億2千万回以上の閲覧回数を記録した。

Tesla中国は、事件を受けてWeiboに掲載した声明の中で「私たちは当初から、国や権威ある第三者機関と協力して、みなさまから寄せられた問題を徹底的に検証したいと考えています。そのようにすることで、消費者のみなさまのご安心いただきご理解いただきたいと願っています」と述べている

「しかしながら、まだその願いは叶えられていません。それは、お客さまとの私たちのコミュニケーション方法に問題があるのだと思われます。また、お客様がこれらの問題をどのように解決なさりたいのかを、私たちが決めることはできないのです」。

欧米同様、中国でもTeslaはカルト的な人気を博している。また同社は、Apple(アップル)と並んで、中国で確固たる地位を築いている数少ない米国のハイテク企業の1つだ。2020年Teslaは、全世界で約50万台の自動車を出荷し、中国は同社の収益の20%を占めている。

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しかし、その一方で、中国国産車メーカーたちとの競争も激化している。Xpeng(シャオペン、小鵬)、Nio(ニオ)、Li Auto(リオート、理想汽車)などの資金力のあるスタートアップや、Huawei(ファーウェイ)などのハイテク企業の支援を受けた既存の自動車メーカーが、Teslaの市場を奪う準備をしている。中国でデザインされた車両はすでに、愛国心の強い人たちの間で受け入れられつつある

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中国政府がTeslaに対してより厳しい目を向けていることも同社にとって不利な材料だ。2021年1月には、中国内で数万台のリコールを実施した直後に、品質問題の件で現地の規制当局に召喚されている。中国政府は、国家安全保障上の懸念から、軍事施設でのTeslaの使用を制限していると、2021年3月にThe Wall Street Journalが報じている。それを受けてElon Musk(イーロン・マスク)氏は、もし自社のクルマがスパイに使われたら、会社は閉鎖されるだろうと述べた

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カテゴリー:モビリティ
タグ:中国Tesla電気自動車

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(文:Rita Liao、翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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