拡張機能でカスタマイズ可能なiOSブラウザをInsightがリリース

Insight(インサイト)という新しいスタートアップが、広告やトラッカーをブロックし、Amazon上のフェイクレビューにフラッグを立て、SEOフリーの検索エクスペリエンスを提供し、メディアバイアス(偏向報道)や誤情報を指摘することで、ウェブブラウジング体験をより良いものにすることを目的としたiPhone用のウェブブラウザー機能拡張をリリースした

これらの機能はInsightのエクステンションという方法で利用でき、最初にアプリを立ち上げる時に提示される。一方、他のものはアプリ内でブラウズでき、検索、ショッピング、料理&外食、ニュース、健康、読書といったカテゴリーに分類整頓される。Insightはまた、ユーザーがそうしたエクスペリエンスをオプトインすれば、ユーザーのブラウジングに基づいてエクステンションの試行を提案する。

たとえば1つのエクステンションでGoogle、Amazon、ユーザーのTwitterやFacebook、Redditといったソーシャルメディアフィード上の広告をブロックできる。別のエクステンションはAmazon.com上のフェイクレビューを検知するためにReviewMetaと連携し、CamelCamelCamelの価格トラッカーの助けを借りて価格アラートを設定できる。また別のエクステンションでは、ダークモードエクスペリエンスの機能を提供していないサイトでその機能を可能にし、Media Bias Fact Checkでニュースの偏見をチェックし、YouTubeや他のビデオサイトでピクチャー・イン・ピクチャーのモードでビデオを閲覧するといったこともできる。

画像クレジット:Insight

Insightは合計で100近くのエクステンションをすでに構築しているが、デベロッパーでなくても自分でエクステンションを作ることができるツールも提供している。

iOS Shortcutsアプリのようなものに似ているシンプルなインターフェイスを使って、ユーザーは基本の「if」と「then」を使ってエクステンションの条件を決められる。たとえば「もしこのURLにマッチするページを開いているなら」あるいは「ドメインのこのリストにあるなら」「この他のページも表示する」といった具合だ。

これらの機能をモバイルで動かすようにするためには、ちょっとしたクリエイティビティが必要となる。AppleはデベロッパーがWKWebViewでできることを制限している。つまり、モバイルブラウザーは、デスクトップウェブで利用できるものと同じようなエクステンションを提供できない。

この問題を解決するためにInsightはスワイプジェスチャーを使ってナビゲートする一種の「サブタブ」ワークフローを作った。たとえばオンラインショッピングのとき、あなたは興味のあるプロダクトを閲覧すると、利用できるクーポンや信用できるプロダクトレビューをチェックしたり、他のサイトのショップと比較したりといったことができる。

レシピを探しているときは、検索をお気に入りの食べ物ブログのリストのみに制限できる。エクステンションを一緒に使うことができるので、食べ物ブログにある広告をブロックし、「リーダーモード」でサイトを閲覧するためにスワイプできる。

画像クレジット:Insight

これらをどう使うかはあなた次第だ。どのエクステンションをインストールして利用できるようにするか、それらをどう設定するかによる。

Insightのアイデアは、実際には医師向けのカスタム検索エンジン構築にフォーカスしていた初期の取り組みからきている。Insightのチームは2019年のY Combinator冬季セッションに参加し、信頼できるソースに医師を誘導するためにジャンクの医療コンテンツや消費者を目的とした他のページをウェブから取り除く検索エンジンを開発した。

しかし新型コロナウイルスのパンデミックが発生し、状況は一変した。

「その時点まで、一緒に取り組んでいたユーザーの多くは医学生でした。パンデミックが米国に到達したとき、医学校は閉鎖され、医学生の多くが自宅に戻りました」とInsightの共同創業者でCEOのArcha Jain(アーチャ・ジェイン)氏は説明する。「我々のユーザーベースはひと晩で消えました」。

チームは内部でしばらく検討していた他のアイデアに取り組むことを決めた。

「我々が取り組んでいた問題は、医療特有のものではないと気づきました。根本的な問題は、インターネットは万能の解決法ではないということです。我々は、もしみんなが自分のブラウザーエクスペリエンスを我々が特定の人のためにしている方法でカスタマイズできるようになったらどうなるか、と考えました」とジェイン氏は話した。

そうしてInsightが生まれた。

InsightはGoogle、Uber、Calicoなどでエンジニアリングの経験があるジェイン氏、Quora、Mozilla Labs、Facebookで働いた経験がある共同創業者のAbhinav Sharma(アブヒナブ・シャーマ)氏、Newgen Softwareの元プロジェクトマネジャーShubhi Nigam氏(シュブヒ・ニガム)氏を含む小さなチームによって構築された。

InsightはY Combinator、Heartcore Capital、Altair Capitalから150万ドル(約1億6000万円)のシード資金を得ている。

長期的にはInsightは提供が始まったサービスにプロバージョンを設けるつもりだ。また、ブラウザをデスクトップにも拡大することを目指していて、デスクトップではエクステンションそのものとして機能する。

2020年12月にベータ版のテストを立ち上げて以来、アプリのアクティブユーザーで最も利用の多い上位10%のユーザーはInsightで1日あたり1000のページビューがあり、これはおそらくロイヤルカスタマーが好みのモバイルブラウザとしてInsightへシフトしたことを示している。立ち上げ前、Insightはベータ版のプロダクトのアプリストアAirportでしばらくの間ダウンロード数が1位だった。

InsightはApp Storeで無料でダウンロードできる

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:InsightウェブブラウザーiOS

画像クレジット:Insight

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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