携帯電話の通信設備を屋内に設置するスタートアップ、JTOWERが10億円の資金調達を実施

JTOWERは携帯電話事業者などの通信キャリアに基地局を設置するためのアンテナやケーブルといったインフラ設備を提供するスタートアップである。具体的には商業施設やオフィスビル、マンションなどで、JTOWERが設置するインフラ設備を複数の携帯電話事業者に共有してもらう事業をスタートさせようとしている。米国では同種の事業はAmerican Towerなどがあり上場も果たしていて、大きな企業に成長している。このJTOWERが産業革新機構JA三井リースアイティーファームを引受先とした総額10億円を上限とする第三者割当増資を実施した。

JTOWERのビジネスは、通信企業のインフラコストを抑えようというものだ。携帯電話などでは電波が確実に端末に届くことが重要になるが、屋内では電波の遮蔽が起こり、電波が届きにくいところがある。このために各通信キャリアは商業施設やオフィスビルなどの屋内に自前でアンテナや基地局を設置する必要があるが、それにはそれなりのコストがかかっている。たとえば、大きなビルでは数億円程度の設置費用がかかるのだという。このコストは通信キャリアだけでなく、商業施設やビルを所有する不動産事業者も負担を強いられることもあった。そこでJTOWERがその設備を敷設し、通信キャリアはその設備を複数社で利用することで、そのコストを抑えようというわけである(下記、産業革新機構の資料参照)。

通信業界のような大型の設備投資が必要な業界に新たな事業にチャレンジするスタートアップが登場するのはとても興味深いことだ。このアイデアを実現したJTOWERの代表取締役の田中敦史氏は、イー・アクセスの創業メンバーでイー・モバイルのCFOなどを務めていた人物である。通信業界に深く関わってきたからこそ、こういったビジネスの可能性が存在していたことに気がついたのだろう。田中氏は「この事業はこれまでの通信業界の枠組みに変化をもたらす可能性があると考えているが、実績がない中で大型の増資を実現するのには相当の努力をした」と語っている。今後は各通信事業者との継続的な調整を重ね、不動産会社各社と協業していく予定だとしている。また設備投資もさることながら、人員拡充、特に通信技術者を採用していく予定だという。