支払日の前に給与を現金化できるActivehoursがシリーズAで2200万ドルを調達

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次の給料小切手を受け取るまでに、2週間待つ必要がなかったらどうだろうか?

働いたあと、すぐにその分の給料が受け取れるとしたらどうだろうか?

給料担保金融業者とは違い、そのために手数料を支払う必要がなかったとしたら?その代わりに、気が向いたときに寄付をするだけでよかったとしたら?

これらがPalo Altoを拠点とするActivehoursが提供する価値である。創業から4年の同社は、ペイロールの常識を覆そうとする企業だ。そして同社は現地時間9日、Matrix PartnersがリードするシリーズAで2200万ドルを調達したと発表した。

同社のサービスはどこかATMにも似ている。ユーザーは同サービスを利用することで給与を支払日前に現金化することができ、その資金を予期せぬクルマの故障による修理費用や、期限が迫った支払いなどに充てることができる。銀行や高金利の給料担保金融業者とは違い、厄介な当座貸越手数料を支払う必要もない。このサービスには金利もかからないが、Activehoursのサービスに満足したときには寄付することが奨励されている。

Activehoursはユーザーの信用情報をチェックしていない。社会保障番号を聞くこともない。普通預金口座を持っていて仕事があれば、誰でもサービスを利用することが可能だ。どのような企業に務めていてもActivehoursを利用することは可能だが、同社はSears Holdings(SearsとKmartの親会社)をはじめとする企業と提携を結んでいる。これらの提携企業に勤めるユーザーは通常よりスムーズにActivehoursを利用することができ、未受領の給与を給与小切手が届くまえに現金化することができる。また、同社はUberとも提携を結んでおり、UberドライバーはActivehoursに自分の銀行口座番号とUberのアカウント情報を提供することで、勤務後すぐに給与を受け取ることが可能だ。

Activehoursのおもしろい機能は、プラットフォームに参加するユーザーが他の誰かの代わりに「チップ」を支払うことも可能だということだ。そして、この機能は完全に匿名で利用することができる。イメージとしては、高速道路の料金所で自分の通行料と一緒に後ろにいるクルマの分まで支払うようなものだ。

今回の調達ラウンドをリードしたMatrix PartnersのDana Stalderは、「Activehoursは、バリスタや本屋の店員、銀行の窓口係などに向けたサービスです」と語る。「クレジットカードでリボルビングローンを組んでいるアメリカ人は全体の50%です ― それに加えて、リボルビングローンを利用していない層も大勢取り込めます」。

とはいえ、手数料が無料?金利もナシ?そのようなビジネスが成り立つのだろうか。特にビジネスをスケールさせようとするなら尚さらだ。Stalderの話しによれば、Activehours CEOのRam Palaniappanがビジネスモデルのプレゼンテーションを行ったとき、Stalderもこれと同じ質問をしたそうだ。しかし、実際にユーザーは寄付をしてくれているのだと、その時Palaniappanは言った ― しかも、今では1万2000社以上の従業員が利用するサービスとなったActivehoursの売上予測をするのに十分なほど、寄付が集まっているというのだ。

Stalderは「私は本当に寄付だけでこのビジネスが成立するのかどうか疑問に思っていましたが、Ramは確かにそれが成立しうることを証明したのです」と話す。

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それはつまるところ、ロイヤルティの力なのだとStalderは言う。このことは、無期限に有給休暇を取ることができたとしても、実際にはそれまでよりも少ない休暇を取る傾向にあるということに似ている。

残念なことに、Activehoursは寄付の平均単価を公開してはいない。しかし、人々の働き方はいま急速に変化しつつあり、個人として企業と業務委託契約を結ぶ人々がこれまで以上に増えている。Activehoursはそのような状況に即したサービスであるようにみえる。実際、2020年までにアメリカ国民の40%がフリーランスとして働くようになるという調査結果をIntuitが発表している。

それに加えてPalaniappanは、現在のような2週間毎の給与の支払い方式は、時代遅れの帳簿記入システムが生んだ過去の遺産なのだと話す。

気になるのは、Activehoursがユーザーにとって良いサービスなのかどうかという点だ。たとえば、Activehoursを利用しすぎたあまりに、いざ家賃を支払う時に十分な資金が無くなってしまっていたらどうだろうか?その点についてPalaniappanは、Activehoursには予算管理の機能も備わっているため、そのような落とし穴にはまる心配はないという。また、給与小切手の額面全額を現金化することはできない仕組みにもなっている。

さらにStalderとPalaniappanは、両者ともにある点についても言及している。人々の働き方が変化し、細分化された契約取引が増えるようになれば、人々は自分たちの財政状況をより上手くコントロールすることが可能になると彼らは主張しているのだ。そして、その中心的な役割を担うのがモバイルなのだという。

彼らの主張は正しいのかもしれない。確かに、Activehoursと同じような理由からこの分野に参入した競合も存在する。PayActivFlexWageなどがその例だ。これらの企業は両社ともに、給与の支払日を待たずにそれを現金化できるというサービスを展開している。

どちらにしろ、全体で何十億ドルにもなる当座貸越手数料の支払いに苦しむ人々が彼らのサービスを試してみる気になる可能性はある。

今回の調達ラウンドをリードしたMatrix Partnersに加え、新規投資家のMarch Capitalや既存投資家のRibbit Capital、Fellicis Venturesの他、いくつかのアーリステージ投資家も本ラウンドに参加している。

Activehoursは、これまでにードラウンドで410万ドルを調達している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

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TechCrunch Japan

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