救急搬送にUberを使うのは、とんでもない考えだ

Paramedics taking patient on stretcher from ambulance to hospital

ワシントンDC消防署は、優先度の低い911通報の搬送にUberを利用する計画を検討している。NBC Washingtonが報じた。これはとんでもない考えだ。

ワシントンの計画では、通報者の状況を電話越しに判断できる看護師チームを雇い、状態が安定していればUberを利用させる。これは救急隊員の目的が、911通報者の病状を判断することであることを踏まえれば、既におかしい。

「転んで足首を骨折した人は、潜在的な症状を抱えている可能性がある」と、ワシントン地区の救命士、Alexia Haralambousは言った。「糖尿病急症が完全に発現していない場合に、そういう状態が起きうる。完全な救命手順を踏む中で、初動要員は最終的に患者の血糖値を調べ、値が高いと判定する」

搬送状態の悪さを考慮して、Uberはサイレンや緊急灯、通信用の大規模無線システム等も備える必要がある、とHaralambousは付け加えた。

数週間前、私は顎を縫った糸を抜くために地元の診療所を訪れた。そこで、心臓疾患の兆候を示したために心電図をとっている男性を見た。男性は、日常的な痛みだと思って受診した。しかし診断結果は深刻だった。医師は直ちに救急車で搬送することを薦めたが、男性は自分で運転することを選んだ。この人は自らの命だけでなく、路上の人々全員の命を危険に曝したことになる。たとえ訓練を受けていても、相乗りドライバーが患者と車両方の安全を確実に守れる可能性は低い。この患者が後部座席に乗っていたとしても、急激な病状の変化がドライバーの不意をつき、事故に結びつくかもしれない。

このような提携は、これまでの相乗り提携とかけ離れたものではない。UberはTechCrunchに、フロリダ州とジョージア州の一部の都市で、既に医療提携を結んでいると話した。Uberは、アトランタの慢性障害を持つ高齢者が予約診療やフィットネスクラブその他のサービスに行く手助けをしている。フロリダ州ゲインズビルでUberは、地元の出資者と協力してこのサービスが移動と自由を維持するためにどのように使えるかを、高齢者に伝えるテクノロジー講座を提供している。

本誌がLyftに問い合わせたところ、移動性の確保に悩む人々の交通を支援するために、同じような目標を同社も持っていると話した。

Lyftの使命は、車を最も必要としている人が、確実に乗れえるようにすることだ。われわれは、全国の公共機関や民間企業と協力して、これまで移動手段に恵まれていなかった人々の選択肢を広げる方法の検討を進めている。われわれは高齢者が ― その多くは定期的に医者の予約があり、移動手段が限られている ― 安全で確実に低価格で動き回れる方法を提供することに誇りを感じている。

いずれの提携の場合でも、意志決定権限は乗客の側にある。乗客はいつどんな時でも乗ることを選べる。ワシントンDCの計画で問題なのは、通報者の健康と安全が、病状を視覚的に評価できない遠く離れた看護師に委ねられていることだ。その結果患者は、市の予算が911通報の量に追いつかないというだけの理由で、不必要に危険な状態に曝される。

とはいえ、深刻な問題のために従来の枠にとらわれない解決策を真剣な考えるワシントンDCには、敬意を表したい。 何もかもUber化する必要はない、というだけのことだ。別の機会に願いたい。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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