新型コロナで日常となったレストランのデジタル注文方式に中国の人々は反発

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック前からすでに、中国のレストランではデジタルによる注文と支払いが定着していた。スマートフォンをタップして注文する方式は、現金と紙の文書が消えつつある中国で大きく発展したものの1つだ。大きな街では、人件費削減のためのデジタルメニューが欠かせない状態にまでなっている。

そんな中、一般市民や行政は、過度なデジタル化への反発を見せている。中国共産党の機関紙である人民日報には、今週、「注文のスキャンだけが唯一の選択肢ではない」と題した記事が掲載された。

消費者の選択の自由と客が喜ぶ人によるサービスが奪われることに加え、スマートフォンの使用を強要される環境は、データプライバシーの懸念も呼び起こしている。スマホで注文する際には、レストランのデジタルサービスを利用可能にするためにWeChat、Alipay、Meituanといったインターネットプラットフォームの個人プロフィールへのアクセスが求められることがあるからだ。そんなお宝データの山を利用して、企業はユーザーに広告を送りつける。

「このアプローチは消費者のデータ保護の権利を侵害します」と人民日報は、中国の法学者の公的機関である中国法学会の幹部の言葉を引用している。

中国はまた、キャッシュレス決済の過度な普及にも目を光らせている。2018年、中国の中央銀行は現金決済の拒否は、特に高齢者など電子決済に不慣れな人たちに対して「違法」で「不公正」な行為だと非難した

高齢者は、パンデミックによって日常となったSIMカードの位置情報などから人の移動の記録を生成する、デジタル保険条例によるジレンマにも直面している。スマホで健康パスを提示できなければ、高齢者はバスの運転手、地下鉄の警備員、レストランの従業員、公共施設の守衛に追い払われてしまう恐れがあるのだ。

こうしたデジタルデバイドの谷を埋めようと、広東省南部では最近になって、指定されたスキャナーに物理的なIDカードをかざすだけで自分の健康状態を証明できるサービスを開始した

だが、キャッシュレス決済を後戻りするのは難しい。公的なデータによれば、2015年から2020年にかけて、中国のモバイルインターネットユーザーの間のデジタル決済の普及率は60%未満から85%以上に伸びている。しかも政府は、デジタル人民元の展開ペースを速めている。これはサードパーティの決済方式と違い、中央銀行が発行し管理するものであり、中国の物理的な法定通貨のデジタル版だ。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:デジタルデバイド中国キャッシュレス決済

画像クレジット:The future of restaurant ordering:Alipay

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(文:Rita Liao、翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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