新型コロナを追い風にイベントネットワーキングアプリGripが13.7億円調達、今後のハイブリッド化も視野に

近い将来、オフラインのイベントが確実にオンラインに移行することが予想される中、ネットワーキング分野のスタートアップはパンデミックを目の当たりにして迅速に方向転換する必要があった。その1つがGripで、以前は物理的な会議(かつてのTechCrunch Disruptを含む)向けのネットワーキングアプリとして知られていた。Gripは2020年以来、「オムニチャネル」エクスペリエンスに移行し、バーチャル、ハイブリッド、ライブのさまざまな種類のイベントを組み合わせている。この戦略が功を奏したようで、この度シリーズAの資金調達ラウンドで1300万ドル(約13億7000万円)を調達した。その結果、調達総額は1450万ドル(約15億3000万円)に増えた。

今回のラウンドは、ロンドンを拠点とするグロースエクイティファンドのKennet Partnersが主導した。この資金調達はオンラインイベントのブームを反映している。このブームで、ロンドンを拠点とするスタートアップのHopinは2020年、シリーズAで4000万ドル(約42億円)を調達した。2016年創業のGripは、Reed Exhibitions(リードエグジビション)や Messe Frankfurt(メッセフランクフルト)など、いくつかの大規模なイベント主催者をクライアントとして抱える。

Gripの創業者でCEOのTim Groot(ティム・グルート)氏は声明で次のように述べた。「私たちの使命は、イベントの主催者がプロフェッショナルを結集し業界を発展できるよう力を貸すことです。今回の資金調達ラウンドによりエクスペリエンスを新しいレベルに引き上げることができます。業界をリードする広範なプラットフォームを活用し、バーチャル、ハイブリッド、対面のイベントに独自の価値を提供します」。

グルート氏は、Gripが今や製品に多額の投資をし、世界的な拡大を目指していると述べた。

Gripの他の競合他社には、過去に150万ドル(約1億6000万円)を調達したBrellaや、これまでに600万ドル(約6億3000億円)を調達したSwapcardなどがいる。

では、なぜGripが集団からリードしているように見えるのか。

グルート氏は筆者に語る。「当社は、他のプラットフォームとプラグアンドプレイ方式で連動して機能するという点で、少し異なるアプローチを採用しています。そのためGripは、多くの主催者によってスタンドアロンのバーチャルイベントプラットフォームとして使用されています。したがって、会議にはHopinを使用し、ネットワーキングにはGripを使用するということがあります。2020年に成長できたのはその方法のためかもしれません」。

Gripは2020年にバーチャルイベントへ方向転換した後、毎月100件を超えるイベントを主催し、150万人が使用した。その結果、同社によれば、2020年の売上高はほぼ4倍に増加した。2021年は1万を超えるイベントを行う予定で、参加者は500万人以上を見込む。

GripのAIを利用したアルゴリズムにより、参加者はイベント前に開かれる会議のスケジュールなど、自身の興味に基づきよりパーソナライズされたマッチメイキングのレコメンデーションを取得できる。出展者には、ソフトウェアが見込み客を捕捉したり、イベント後の分析を提供したりする。

参加者は会議に登録されると、グループで会話できる。また、Gripはその場でテーマに合わせて3分間の会話が行える「スピードネットワーキング」機能に取り組んでいる。

Gripは、HopinやBizzaboなどの「フルサービス」プラットフォームとは異なり、Vimeo、YouTube、Zoom、BlueJeansなどのさまざまなストリーミングプラットフォームと統合する。

KennetのパートナーでGripの取締役会メンバーを務めるHillel Zidel(ヒレル・ジレル)氏は次のように述べた。「ネットワーキングに重点を置いてバーチャルイベントを開催するGripの能力が、2020年の驚異的な成長をもたらしました。イベント主催者とそのクライアントは、対面イベントの制約にもかかわらず顧客とのつながりを維持することができました。ライブイベントが将来再開されれば、Gripは、ライブ、バーチャル、ハイブリッドのイベントをサポートするソフトウェアソリューションの提供を通じて、イベント主催者を引き続き支援できる非常に有利な立場にあります」。

Founders Factoryの共同創業者でGripの以前からの投資家であるBrent Hoberman(ブレント・ホバーマン)氏は次のように述べた。「Gripは、ファウンダーズフォーラムでイベントを開催した際に気づいたニーズから生まれました。スマートテクノロジーを利用して、ゲスト間に意味や価値のあるつながりを生み出す方法は何だろうか、と問うたわけです」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Grip資金調達バーチャルイベント

画像クレジット:Grip

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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