新興EV企業のRivianが2023年末までに全米に1万基以上の充電器を設置すると発表

Amazon(アマゾン)やCox Automotive(コックス・オートモーティブ)、T. Rowe Price(ティー・ロウ・プライス)などが出資するEVスタートアップのRivian(リビアン)は、2023年末までに1万台以上の充電器を設置することを計画している。この充電ネットワークには2つの目的がある。1つは高速道路沿いに急速充電器を設置し、同社の電気自動車にすばやく電力を供給すること。そしてもう1つは、都市部から離れた公園や登山口などに隣接した場所にレベル2の充電器を設置し、同社のEVオーナーが冒険やレジャーを楽しんでいる間に、クルマのバッテリーを充電しておけるようにすることだ。

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Rivian Adventure Network(リビアン・アドベンチャー・ネットワーク)と呼ばれる充電ネットワークは、600カ所以上の場所に3500基以上のDC急速充電器が設置され、Rivianの電気自動車の所有者のみが利用できるようになると、同社は米国時間3月18日に発表した。各場所には複数の充電器が備わり、高速道路や幹線道路沿いを中心に、カフェやショップの側などにも設置されると、同社は公式ブログで述べている。

さらにRivianは、米国とカナダの全域にレベル2のAC充電器も設置しており、こちらは2023年中に1万基を超える予定だという。この「Rivian Waypoint(リビアン・ウェイポイント)」充電器は出力11.5kWで、Rivianのピックアップトラック「R1T」とSUV「R1S」の航続距離を1時間の充電で最大25マイル(約40km)伸ばすことができる。このWaypoint充電器は、Rivianの顧客が通りそうな場所に戦略的に設置される。ショッピングセンター、レストラン、ホテル、キャンプ場、公園などで見かけることになるだろう。このWaypoint充電器は一般にも開放され、J1772プラグを持つ全ブランドの電気自動車が利用できる。まずはコロラド州にある42の州立公園すべてに各2基ずつ、2021年7月より設置が始まると、同社は述べている。

Rivianの創業者でCEOを務めるRJ Scaringe(RJスカーリンジ)氏は、2020年末のTechCrunchのインタビューで、充電、バッテリー、自動運転などについて幅広く語った際に、この2層目の充電ネットワークを追加するという決定は、Rivianの顧客層に直接アピールするものであり、同社のブランドや製品に対する信頼を築くために必要だと述べていた。

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RivianのアプローチはTesla(テスラ)と似ているが、いくつか明確な違いがある。テスラは現在、2万基以上のSupercharger(スーパーチャージャー)と呼ばれる急速充電器からなる独自の充電ネットワークを構築しており、その多くは、高速道路や交通量の多い市街地に隣接して設置されている。そして低出力な普通充電器のデスティネーションチャージャーは、高級ホテルやレストランなど、同社のEVオーナーが訪れる可能性のあるスポットに設置されている。

RivianのWaypoint充電器は、テスラのデスティネーションチャージャーと、設置場所の種類は異なるものの、目的は同じだ。しかし、テスラの充電器とは異なり、RivianのWaypoint充電器は一般に公開されており、電気自動車用コネクタの北米規格であるJ1772プラグを使用している。

今回の発表で、Rivianは急速充電器の設置場所を示す地図の画像を公開した。この地図はインタラクティブではないため、正確な位置を知ることは難しいが、ユタ州のグランドキャニオン国立公園やザイオン国立公園の近くに急速充電器が設置されていることが分かる。

画像クレジット:Rivian(スクリーンショット)

Rivian車のオーナーは、車載ナビゲーションや付属のアプリを使って、WaypointやRivian専用急速充電器の位置を確認できる。ドライバーはこのアプリや車内のスクリーンで、充電状況を確認することもできる。

Rivianの車両には、CCS(Combined Charging System、通称「コンボ」)という急速充電用の直流コネクタが採用されている。CCSは近年、欧州や北米で普及しているオープンな国際規格だ。そのため、RivianのトラックやSUVは、アダプターを使用することなく、サードパーティ製のCCS対応充電ステーションを利用することが可能だ。

Rivianは、その充電ネットワーク全体が100%再生可能エネルギーで駆動されることを明示した。これは、ソーラーパネルや蓄電システムを使うという意味ではない。TechCrunchの取材で、Rivianはソーラーパネルや風力発電は設置しないことを明らかにした。代わりに、100%再生可能エネルギーという目標は、電力会社とのパートナーシップによって達成される。Rivianによれば、可能な限り風力や太陽光を利用し、グリーン電力証書によって他の電力源と相殺するという。

これほど大規模なネットワークを構築するには資本が必要だが、Rivianはその調達には苦労していない。2021年1月に同社は、T. Rowe Price Associates Inc(ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ・インク)が顧問を務めるファンドや口座を中心としたラウンドで26億5000万ドル(約2885億円)の資金を調達した。この投資ラウンドに詳しい人物の話によると、Fidelity Management and Research Company(フィデリティ・マネジメント・アンド・リサーチ・カンパニー)や、AmazonのClimate Pledge Fund(気候変動対策に関する誓約のための基金)、Cootue(クーティー)、D1 Capital Partners(ディーワン・キャピタル・パートナーズ)などの既存および新規の投資家も参加し、Rivianの評価額は276億ドル(約3兆円)に達したという。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Rivian充電ステーション電気自動車

画像クレジット:Rivian

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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